TEAM NACS FILMS 「N43°」

2008年11月30日(日) 18:35:59

先週の火曜日に北海道の劇団「TEAM NACS」の全国フィルムツアー「N43°」に家族で行ってきた。
場所はお台場Zepp Tokyo。当然のように満席(立ち見もいた)。1階の最後列だったので舞台は遠かったけど、家族ともどもとても楽しんだ(家族はナックス大ファン)。

チーム・ナックスと言ってもまだぎりぎり知らない人もいるかな。大泉洋が所属する劇団と言えば少しはわかるだろうか。一緒にNYに行ったモリこと森崎博之くんがリーダーを務める5人組。安田顕、音尾琢真、戸次重幸も最近よくテレビに出ているのでわかる方はわかると思う。北海道では超人気劇団だ。全国的にブレイク寸前。というか演劇としては「いまもっともチケットがとれない劇団」と言われている。知らないアナタの方が悪い(笑)

このナックス、毎年演劇ツアーをするのだが、2008年は多忙のためそれが出来ないこととなり、かわりにメンバー5人それぞれが30分弱の映画を作ってそれを観てもらうツアーをすることになったわけである。映画を撮って編集し、5人がアフタートークのために全国ついて歩く方が大変なような気もするが、舞台は5人集まって稽古しないといけない分スケジュールが合わないんだろうな。映画はバラバラに撮れるし。

ということで、5本のショートフィルムを観た。順に、

「頑張れ!鹿子ブルブルズ!」 脚本・監督 大泉洋
「神居のじいちゃん」 脚本・監督 音尾琢真
「部屋クリーン」 脚本・監督 戸次重幸
「ヤスダッタ3D」 脚本・監督 安田顕
「AFTER」 脚本・監督 森崎博之

の5本。
そして上映終了後、5人が舞台に上がってアフタートークを30分強。これでたっぷり3時間。

映画の感想としては、まぁ呆れるくらいバラバラなテイスト。
ただ、よく観ていくと、それぞれが「5人の中での自分の立ち位置」を意識しているのがわかる。大泉洋は冒頭ということもあり「メンバーそれぞれの紹介」をメインにわかりやすい物語と笑いで構成。気遣い溢れた一品だった。音尾琢真はしっとり真面目に撮ってナックスのウェットな部分を品よく見せた。抑制の効いた映像で泣かせる泣かせる。戸次重幸はアニメとマニアックな演出でナックスの領域を大きく広げて見せた。実はなかなかの傑作。安田顕は異様なまでに個性的な作品に徹することで彼の役割を演じきった。自分の立ち位置をしっかりわかってそれをやりきるのって実はそれなりに高度な技。そしてラストの森崎くんはナックスのファンに対する熱いメッセージを軸に、リーダーらしくちゃんと美しい締めに持って行った。ナックス独特の「熱さ」を支えているのは彼だということがよくわかる。

5人それぞれが「自分の役割はこの辺だな」と無意識に了解している感じが良いなぁ。その仲良し具合がうらやましい。

映像として印象的だったのは音尾監督の「神居のじいちゃん」。
まず光の使い方が抜群。画がとても良かった。カメラマンの腕にも寄るが初監督作品とは思えない。脚本もとても良いし、夏八木勲を使ったのも(役者としての勉強的にも)とても良かったのではないかな。ああやってハードルを上げると思わぬギフトが手に入るもの。それと「ひなた」役の大野百花という子役がうますぎてゾッとした。この子は……すごすぎる。

戸次監督の「部屋クリーン」も強烈な作品。ボクは「ヤスダッタ3D」より強烈だと思ったな。とてもクリエィティブだし深い。「ちらかし」役の音尾琢真の怪演も素晴らしい。多少編集でつまみたい部分があるけど(ちょっと冗長)、ショートフィルムならではの良さがある。5本の中でショートフィルムフェスティバルに出すとしたらコレかも。

逆に「頑張れ!鹿子ブルブルズ!」と「AFTER」は長編、もしくは舞台向きの作品。
ナックスのいつもの舞台脚本が森崎博之で、来年の新作舞台の脚本が大泉洋なのを考えると、ふたりとも長編向きのストーリーテラーなのだと思う。ただ、こういうのを短編にまとめるのは相当難しい。映像的文法が必要だ。モリはさすがにその盛り上げをよくわかっていて安心して観ていられた。ただ少し楽屋落ち(ファン落ち)が多かったかな。大泉作品は「モリ、それ、どこに咲いてんの!」という戸次のアップと、崖を落ちていく縮尺が少し変な戸次が圧巻。大泉監督はこういう笑いに徹したらもっと面白い。

ヤスケン監督の「ヤスダッタ3D」は、ある意味一番「アマチュアの味」が出ている作品。疑似プロっぽく撮るのは意外と簡単なのに、敢えて素人っぽい方面に行った勇気を、ボクは業界人として理解する。これって高度な技だし、プロにはやれない難しい領域だったりする。

終了後のアフタートークは5人が舞台に出てのトーク。芸達者の集まりなので話はとても面白かった。

すべて終わったあと、モリを楽屋に訪ねたが、モリが大泉洋を紹介してくれ、娘は驚喜していた。娘相手にも異様にしゃべってくれる彼。サービス精神旺盛だなぁ。偶然ではあるが、ラーメンズの小林賢太郎が楽屋に遊びに来ていたのが個人的には驚喜(笑)。

ちゅうことで、来年春のTEAM NACS全国ツアー「下荒井兄弟のスプリング、ハズ、カム。」が楽しみである。
いつものモリに替わり、今回は大泉洋の作・演出。彼の「頑張れ!鹿子ブルブルズ!」を見て、その周到な気遣いとサービス精神が悪い方に出なければいいなとは思うが、いい方に出たら相当面白いはず。楽しみ楽しみ。

佐藤尚之(さとなお)

佐藤尚之

佐藤尚之(さとなお)

コミュニケーション・ディレクター

(株)ツナグ代表。(株)4th代表。
復興庁復興推進参与。一般社団法人「助けあいジャパン」代表理事。
大阪芸術大学客員教授。やってみなはれ佐治敬三賞審査員。
花火師。

1961年東京生まれ。1985年(株)電通入社。コピーライター、CMプランナー、ウェブ・ディレクターを経て、コミュニケーション・デザイナーとしてキャンペーン全体を構築する仕事に従事。2011年に独立し(株)ツナグ設立。

現在は広告コミュニケーションの仕事の他に、「さとなおオープンラボ」や「さとなおリレー塾」「4th(コミュニティ)」などを主宰。講演は年100本ペース。
「スラムダンク一億冊感謝キャンペーン」でのJIAAグランプリなど受賞多数。

本名での著書に「明日の広告」(アスキー新書)、「明日のコミュニケーション」(アスキー新書)、「明日のプランニング」(講談社現代新書)。最新刊は「ファンベース」(ちくま新書)。

“さとなお”の名前で「うまひゃひゃさぬきうどん」(コスモの本、光文社文庫)、「胃袋で感じた沖縄」(コスモの本)、「沖縄やぎ地獄」(角川文庫)、「さとなおの自腹で満足」(コスモの本)、「人生ピロピロ」(角川文庫)、「沖縄上手な旅ごはん」(文藝春秋)、「極楽おいしい二泊三日」(文藝春秋)、「ジバラン」(日経BP社)などの著書がある。

東京出身。東京大森在住。横浜(保土ケ谷)、苦楽園・夙川・芦屋などにも住む。
仕事・講演・執筆などのお問い合わせは、satonao310@gmail.com まで。

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