アジア太平洋デジタル雑誌国際会議

2008年11月16日(日) 20:52:37

おとといの金曜日、国際雑誌連合と日本雑誌協会が主催する「第1回アジア太平洋デジタル雑誌国際会議」のパネル・ディスカッションにモデレーター(司会というか、いわゆる田原総一朗役ですね)として参加してきた。

3日かけていろんな講演やディスカッションがある大きなカンファレンスである。日本の出版社はほぼすべて参加したんじゃないかな。場所はホテル・ニューオータニの鶴の間。でかい会場だ。かなりチカラが入っている模様。

大会テーマは「紙とデジタルの融合」。
デジタルへの対応が大きく遅れた雑誌業界がようやく真剣に焦りだしたということか。ちょっと遅い。でもどんな競争でもそうだが、遅れたなら遅れたなりの闘い方がある。出遅れた、ということをちゃんと意識すれば効率的に近道を通れると思う。

ただ、例によってボクは門外漢である。そういう大雑把な話は出来てもくわしい話など全然ムリ。メディアとしての雑誌の現状についてしっかり把握しているわけではない。
たぶん、新聞大会に呼ばれたのと同じ理由、つまり、拙著「明日の広告」で既存マスメディアを肯定的に捉えたことが呼ばれた理由なんだろう。まぁその手のことを大雑把に話すならイイですよ、と、わりと軽い気持ちで受けたのだが、フタを開けたらパネル・ディスカッションの司会役だった(泣)。司会なんて生まれて初めてだし、司会が無知だと話にならないからある程度勉強しないといけないし、しかもパネリストがアメリカ人らしいから和やかなディスカッションにはなりにくいし(同時通訳はつくけど)、直前になってから構成にかなり悩んだ。そのうえパネリストのお三方は、ケータイ広告と、アドネットワークと、動画テクノロジー、という三社で、共通点がほとんどない。これをいったいどうまとめろと……(泣)

与えられたテーマは「デジタル広告の未来を探る」。
分科会ではあったが、使用会場は一番大きな鶴の間で、聴衆は数百人。モデレーターはボク。パネリストは以下のお三方。デジタル最前線の方々だ。

 藤田明久氏(D2C社長)日本
 Ralf Hirt氏(glam media VP)アメリカ
 Adam Berrey氏(brightcove SVP)アメリカ

ボクはネットをさんざんやったあげく、いまは一周回って「紙メディアとしての雑誌 応援論者」的になっている(新聞も同じく)。
コミュニケーション・デザインの観点から言ったら、すべてのメディアが共存する方が面白い未来になるわけで、雑誌業界が変に自信を失って迷走し、「紙」という魅力的なメディアの価値を自ら貶めることは、雑誌業界にとっても、生活者にとっても、望ましくないと考えるスタンス。まずは紙としてのメディア価値を最大化しようよと思う。いまの「変化した消費者」に対応してメディア価値を最大化してもいないのに、闇雲にデジタルへの道を進んでも、そこには怖いデジタルの虎たちが待ち受けているだけ。食べられちゃうよ?

とはいえ「そういう意見を講演しろ」という依頼ならまだしも、今回は司会である。デジタルの最前線で闘うお三方の意見を聞いて、論をまとめていく役回りだ。んーどうしよう……。あ、そうだ! いっそのことデジタルの旗手たちに、紙メディアとしての雑誌に対しての提言をしてもらっちゃうのはどうだ?

と、いうことで、そうしました(笑)
与えられた75分のうち、前半は三社のプレゼンテーションとそれに対するボクの質問。後半はデジタル側から見た紙メディアとしての雑誌の可能性・かなう部分かなわない部分・雑誌の未来像などを聞いていくことにした。
え? いったいどこが「デジタル広告の未来を探る」なのかって? いやいや、アナログ側の人間があーだこーだ未来を予想するより、デジタル側からの分析を聞いた方が早いですからね。それこそが「探る」でしょう。

アメリカ人のおふたりは多少「デジタル至上主義」な部分があったので少し論点が一方的になったが、D2Cの藤田社長(たまたま高校の後輩だった)はポイントをわかってくれてとてもいい提言をしてくれた。最終的には三社ともに「雑誌の未来は明るいのではないか? やりかたによっては」みたいな感じに結ばれた。まぁまぁのまとまりだったかも。

なんつうか、その昔、まだ「大衆」という言葉がまだあったころ、大衆である生活者は逆に「個性」を目指し、「個」に生きることがもてはやされたんだけど、少衆、分衆を経て「個」の時代になった今、人々は逆に「共有してつながる」ことに快感を覚え、孤立を嫌う傾向にある。
このように、生活者は時代の流れに大きく影響されながら生きている以上、たとえばデジタルが空気みたいに普通のものになった時代においてはアナログの良さ、紙の良さが見直され、もてはやされることも充分ありえるとボクは思うわけで。

雑誌は問題山積でこのままではダメだと思うけど、変化はチャンス、雑誌にしか出来ない「強み」を整理し、選択し、集中し、より魅力的に生まれ変わって欲しいな、とか。一生活者としての素直な思うです。

あー、でも、なんだか異様に疲れた。
公の場での司会って、こんなに疲れるんだなぁ。司会者やインタビュアーの苦労がわかったのが今回の収穫かも。話すこと少なそうだからもっとずっと楽かと思っていたよ。いろんな経験をすればするほど、周りの人への敬意が増すよ。イヤほんと。

佐藤尚之(さとなお)

佐藤尚之

佐藤尚之(さとなお)

コミュニケーション・ディレクター

(株)ツナグ代表。(株)4th代表。
復興庁復興推進参与。一般社団法人「助けあいジャパン」代表理事。
大阪芸術大学客員教授。やってみなはれ佐治敬三賞審査員。
花火師。

1961年東京生まれ。1985年(株)電通入社。コピーライター、CMプランナー、ウェブ・ディレクターを経て、コミュニケーション・デザイナーとしてキャンペーン全体を構築する仕事に従事。2011年に独立し(株)ツナグ設立。

現在は広告コミュニケーションの仕事の他に、「さとなおオープンラボ」や「さとなおリレー塾」「4th(コミュニティ)」などを主宰。講演は年100本ペース。
「スラムダンク一億冊感謝キャンペーン」でのJIAAグランプリなど受賞多数。

本名での著書に「明日の広告」(アスキー新書)、「明日のコミュニケーション」(アスキー新書)、「明日のプランニング」(講談社現代新書)。最新刊は「ファンベース」(ちくま新書)。

“さとなお”の名前で「うまひゃひゃさぬきうどん」(コスモの本、光文社文庫)、「胃袋で感じた沖縄」(コスモの本)、「沖縄やぎ地獄」(角川文庫)、「さとなおの自腹で満足」(コスモの本)、「人生ピロピロ」(角川文庫)、「沖縄上手な旅ごはん」(文藝春秋)、「極楽おいしい二泊三日」(文藝春秋)、「ジバラン」(日経BP社)などの著書がある。

東京出身。東京大森在住。横浜(保土ケ谷)、苦楽園・夙川・芦屋などにも住む。
仕事・講演・執筆などのお問い合わせは、satonao310@gmail.com まで。

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