湊かなえ著「告白」
2008年10月31日(金) 8:40:16

湊かなえのデビュー作「告白」を読んだ。
第29回小説推理新人賞を受賞した短編「聖職者」を第一章にすえ、そこから第六章まで6つの連作で「聖職者」で提起した世界を展開させている。
その展開は様々な憎悪という感情で結びつけられており、憎悪という切り口で現代社会の綻びを描きあげている。各章のいろんな憎悪に直面するたびに読者は立ち止まらされ、途方に暮れるだろう。身につまされる部分もあるし違和感を感じる部分もある。読み終わって「現代日本は憎悪で構成されているのかも」と思わされるあたり、この作家の力量を感じる。
はっきり言って第一章「聖職者」は傑作だ。息を呑む。
女性教師の独白のみで構成されているのだが、ものすごい集中力と密度で語られる事件の衝撃たるや。その衝撃は第二章、第三章と告白者をかえて語られる。その語られ方が「核心にあえて触れない」絶妙な距離感ゆえ、非常にもどかしく、ページをめくる手が止まらない状況となる。
ただ、第四章から第六章までは無理矢理感が漂うな。
第三章まで展開した時点では絶妙であった距離感も、事件をおこした当人の告白が始まった時点で崩れ去り、ここから普通の謎解き&新展開になってしまう。周辺人物の語りのみで謎を呼びながら最後まで引っ張って欲しかったと残念に思う。ラストの第六章では第一章の女性教師の行動にも答えが与えられてしまい、小説全体が「薄く」なってしまった。もう、なんというか、ジタバタするくらい残念。この辺、編集者がもう少し誘導してあげれば大傑作になっただろうに。ジタバタジタバタ。
なんだろう、大傑作映画「エイリアン」が、無理矢理シリーズ化されて、二作目以降も面白いんだけど、なんか第一作目で終わって欲しかったなぁ…みたいな、そんな感慨に近い読後感。いや、とても面白い本なんです。新人離れした力量。構成力。ストーリーテラーとしてもなかなか。でも惜しい。とっても惜しい。そんな感想。
