映画「崖の上のポニョ」

2008年8月 3日(日) 19:00:13

ムスメとふたり、ジブリの新作「崖の上のポニョ」を観てきた。
子供向き映画だねーとか、つっこみどころ満載ーとか、いろんな感想が聞こえてくるけど、ボクはわりと絶賛だな。傑作だと思う。

この映画は大人の目で観てはいけないと思う。ただただ宮崎駿監督の想像力をありのまま受け入れればいい映画だ。これに比べると「トトロ」ですらかなり説明的に思えてくる。そのくらい感性のみで観たい映画。ストーリーすら少し邪魔になる。

というのも、実はいろんな伏線や意味づけがなされているストーリーではあるのである。
宗助は夏目漱石の「門」の主人公の名前からとってるという(彼は奪った女性と崖の下でひっそりと暮らす)。ポニョの本名ブリュンヒルデはワーグナーの「ニーベルングの指輪」から来ている(つまり宗助はジークフリートでもある。波の上の疾走の時の音楽はほとんどワルキューレの騎行だった)。ポニョが入るの嫌がったトンネルは「千と千尋の神隠し」に出てきた異界への入り口だ。

この3つを結びつけて考えるだけで、なかなか恐ろしいストーリーなのだが、他にも、夢かなって走りだすおばあちゃんたちはどう考えても死の世界の隠喩だし、小舟に乗った赤ん坊連れの若夫婦はまるで古き良き昭和の亡霊のようだし(ちょっとさつきとメイの父母のようだった)、船の墓場は出てくるし、助かった人々が乗っている船も精霊流しのようだったし(つまり死人の群れ)、ゴミだらけの海は巨大魚や古代魚によって浄化されてしまうし(王蟲?)、題名でわざわざ「崖の上」を強調しているのは「崖の上の一軒家だけ生き残ってあとは沈んで死滅したこと」を言い表している気がするし…。

と、ストーリーだけを深読みしていくと、決してハッピーエンドな映画ではないと思われたりするのだけど、その辺すべてうっちゃって、「ポニョ、ソースケ、好き!」と叫ぶポニョの可愛さに笑っていればいい映画なのだと思う。実際、結末はちょっとシアワセの涙が出た。頭で小難しく考えたことより、その涙の方をボクは信じたい。
というか、映画館にいた子供たちは(もちろんムスメも)上記のようなくだらない見方をせず、単純に楽しんで「おもしろーい!」と言っていた。ムスメは「ジブリで一番好きかも」と言っていた。それでいいのだ!(合掌:赤塚不二夫さん)

ちなみに、毎回なかなか唸らされる声優を起用する宮崎駿監督だが、今回のヒットは矢野顕子。なんとポニョの無数の妹たちの声が彼女である。すばらしすぎ。

佐藤尚之(さとなお)

佐藤尚之

佐藤尚之(さとなお)

コミュニケーション・ディレクター

(株)ツナグ代表。(株)4th代表。
復興庁復興推進参与。一般社団法人「助けあいジャパン」代表理事。
大阪芸術大学客員教授。やってみなはれ佐治敬三賞審査員。
花火師。

1961年東京生まれ。1985年(株)電通入社。コピーライター、CMプランナー、ウェブ・ディレクターを経て、コミュニケーション・デザイナーとしてキャンペーン全体を構築する仕事に従事。2011年に独立し(株)ツナグ設立。

現在は広告コミュニケーションの仕事の他に、「さとなおオープンラボ」や「さとなおリレー塾」「4th(コミュニティ)」などを主宰。講演は年100本ペース。
「スラムダンク一億冊感謝キャンペーン」でのJIAAグランプリなど受賞多数。

本名での著書に「明日の広告」(アスキー新書)、「明日のコミュニケーション」(アスキー新書)、「明日のプランニング」(講談社現代新書)。最新刊は「ファンベース」(ちくま新書)。

“さとなお”の名前で「うまひゃひゃさぬきうどん」(コスモの本、光文社文庫)、「胃袋で感じた沖縄」(コスモの本)、「沖縄やぎ地獄」(角川文庫)、「さとなおの自腹で満足」(コスモの本)、「人生ピロピロ」(角川文庫)、「沖縄上手な旅ごはん」(文藝春秋)、「極楽おいしい二泊三日」(文藝春秋)、「ジバラン」(日経BP社)などの著書がある。

東京出身。東京大森在住。横浜(保土ケ谷)、苦楽園・夙川・芦屋などにも住む。
仕事・講演・執筆などのお問い合わせは、satonao310@gmail.com まで。

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