FROGMAN

2008年6月 2日(月) 6:39:40

先週、FROGMANの講演を聴いた(オフィシャルサイト「蛙男商会」。←サイトからは音が出るけど、面白いので見よう)。
映画「秘密結社鷹の爪 THE MOVIE 2 〜私を愛した黒烏龍茶〜」は観たいと思っていたし、「古墳ギャルのコフィー」とかピジョンのネットCMとか見たことあったので面白いのは知っていたが、話を聴いて、正直、舌を巻いた。ここまでクレバーかつ意識的にやっていたとは。ちょっと尊敬のまなざしで見てしまった。

制作者、というかアーチストとしての自分の特徴(売り)を「面白さ」と捉えず、「フラッシュだから早く作れる」と冷静に分析していることがまず素晴らしい。そしてフラッシュとデジタルの良さを最大限に利用して作品を量産していく。ナンセンスであるようでいて冷静な計算が施された作品群。いままでの映像文法を無視して緩くチープに作っていくが、それが逆にとても時代に合っている。

制作時間が少ないだけでなく、直すのも数分(スポンサーがいるとここの部分が意外と大きい)。監督・脚本・キャラデザイン・フラッシュ制作・編集・録音・声の出演まですべて自分でやることで権利関係のゴタゴタもなくスピード重視で世の中に出すことができる。ライツがひとりに集中しているので、二次使用やメディア展開、広告展開などの決断もスピーディ。彼の直感でどんどん仕掛けられる。

んでもって、YouTubeなどでどんどん露出していくことを重視するので「コピーOK」と打ち出しているのも素晴らしい。
講演では「もともとデジタルはコピーできるのが便利だし最大の特徴。なのにコピーされては困るという方向に考えるのはナンセンス。どんどんコピーされることを前提に作ればよい」というような発言もあった。海外のミュージシャンなんかはすでにそういう方針を打ち出している人もいるが、映像アーチストでそれを言い出しているのはちょっと珍しいし目鱗。

広告マンとしては、映画スクリーンの右端で上下する「バジェットゲージシステム」が画期的に面白かった。
予算が少ないのも笑いにしようと、バジェット(予算)のゲージが映画中どんどん減っていくのだ。CGとか使うとどーんと減る。観客はハラハラするわけ(笑)。
でもって面白いのは、プロダクト・プレイスメントで映画の中にクライアントの製品が出てきたりするのだが、出てきた瞬間にどーんとゲージが増えたりすること。そこで会場から大笑いが起こるらしい。本来邪魔なものである広告自体が笑いを持って好意的に迎えられるという発想の転換。なるほどー。

映画史上初といわれる「サブタイトルネーミングライツ」もいいなぁ。黒烏龍茶。こういう「広告まみれ」も「チープさ」も今の若者は「逆手にとってくれてさえすれば面白がってくれる」ことをきちんと見抜いているのが良い。元々、映画やTVの裏側などとっくに見抜いている若者たち。取り繕わない方が面白くなるならとことん取り繕わない。それは正しい。

YouTubeを見ていると「映像クオリティより内容」という流れはもう止めようがない。
劣悪な画質のビデオでも、面白いものは面白い。それで満足なのだ。隅々まで画質とクオリティにこだわったCMとかを作ってきたし、その良さももちろん知っているが、もうそういう時代でもない。FROGMANのこの動きはそれを加速させるものかもしれない。なにしろフラッシュだけで映画まで作っちゃうのだ。ひとり全役で。

ちなみにこのFROGMAN、今年2月に行われたニューヨーク国際インデペンデント映画祭で、アニメーション部門の最優秀作品賞と、国際アニメーション最優秀監督賞の2部門を受賞している。まぁ日本より海外で認められるタイプの人ではある。

佐藤尚之(さとなお)

佐藤尚之

佐藤尚之(さとなお)

コミュニケーション・ディレクター

(株)ツナグ代表。(株)4th代表。
復興庁復興推進参与。一般社団法人「助けあいジャパン」代表理事。
大阪芸術大学客員教授。やってみなはれ佐治敬三賞審査員。
花火師。

1961年東京生まれ。1985年(株)電通入社。コピーライター、CMプランナー、ウェブ・ディレクターを経て、コミュニケーション・デザイナーとしてキャンペーン全体を構築する仕事に従事。2011年に独立し(株)ツナグ設立。

現在は広告コミュニケーションの仕事の他に、「さとなおオープンラボ」や「さとなおリレー塾」「4th(コミュニティ)」などを主宰。講演は年100本ペース。
「スラムダンク一億冊感謝キャンペーン」でのJIAAグランプリなど受賞多数。

本名での著書に「明日の広告」(アスキー新書)、「明日のコミュニケーション」(アスキー新書)、「明日のプランニング」(講談社現代新書)。最新刊は「ファンベース」(ちくま新書)。

“さとなお”の名前で「うまひゃひゃさぬきうどん」(コスモの本、光文社文庫)、「胃袋で感じた沖縄」(コスモの本)、「沖縄やぎ地獄」(角川文庫)、「さとなおの自腹で満足」(コスモの本)、「人生ピロピロ」(角川文庫)、「沖縄上手な旅ごはん」(文藝春秋)、「極楽おいしい二泊三日」(文藝春秋)、「ジバラン」(日経BP社)などの著書がある。

東京出身。東京大森在住。横浜(保土ケ谷)、苦楽園・夙川・芦屋などにも住む。
仕事・講演・執筆などのお問い合わせは、satonao310@gmail.com まで。

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