丸元淑生さん、亡くなる

2008年3月12日(水) 8:00:55

なぜかニュースに気づかず、メールで教えていただくまで知らなかったのだが、料理研究家の丸元淑生さんが3月6日に亡くなった。74歳。

面識はまったくないのだが、20代の一人暮らしのキッチンに、ボクはずっと彼と立っていた。

分厚く、写真もまったくない彼の料理本「丸元淑生のクックブック」が彼との出会い。理屈っぽさが勝っていた若いボクの心に突き刺さった。なんて理詰めでクレバーな料理本だろう! とっくに絶版だが、いまでもボクのバイブルである。
んでもって、さすがにこれでは難しすぎると著者自身思ったのか、その後もっと簡単に書いた「システム自炊法」とか、写真がふんだんに入ったムック本「シンプル料理」「新・家庭料理」なども出版する。それらもこまめに読んでいき、ボクは彼の基本料理を中心に自炊をマメにするようになった。ほぼ信者。冷蔵庫の中は彼が提唱する栄養たっぷりの基本料理ストックがずらりと並んでいた。
道具も揃えた。築地に出向いて最高級の鰹節削り器を買い、基本のだし汁をとった。彼が勧めるさまざまな小物も揃えた。鍋も彼のお得意であるビタクラフトを買い揃えて無水で野菜を茹でたりしていたな。その鍋はいまでも活躍している。

得意にしていて今でも作る彼のレシピは「小魚のピクルス」。

  • アジ(小型を8〜10尾)の内臓・エラ・頭・うす身を切り取り、大さじ1の塩を入れて沸騰させて火を止めたお湯にそれらを入れて2分〜4分茹でる(小さいアジなら2分)
  • アジを取り出して水を切り、手で骨を身から外す。ここが細かい作業だが、身はバラバラにほぐれてもよい。
  • 骨を除いた身をボウルにとり、レモン汁(1個分)をかけて塩で調味。
  • ニンニク(2片)を刻み、パセリ(4〜5茎)も加えて刻み、そこにクミン(大さじ1)を加えて擂りつぶす。
  • ボウルのアジにこれらを加え、オリーブオイルも加えてよく混ぜ合わせる。これで出来上がり。ラップして冷蔵しておく。

これがね、うまいのだ。何度作ったことか。
他にも「ビリアニ」や「ポーチド・フィッシュ」「タラのグラシオサ風」「豆のサラダ」とか、わりと作ったなぁ。どれもシンプルかつ短時間で出来、栄養たっぷりでしかもうまい。男のひとり暮らしに実に向いている料理群。

彼の肉体は滅んでしまったけど、彼のレシピはこうしてこれからもずっとボクの中に生き続ける。
というか、ツマに先立たれた後(笑)、ボクは彼の料理本に戻っていくだろう。高齢一人暮らしにこれまたビッタシな料理群なのだ。超理屈っぽく辻褄があっていて、簡単かつ栄養たっぷり。ひとりで作ってひとりで食べてもなぜか空しく感じないのだ。満腹感とは違う「満足感」で満たされる感じ。

豊かな食卓、これからも受け継ぎます。
丸元淑生さん、どうもありがとうございました。

佐藤尚之(さとなお)

佐藤尚之

佐藤尚之(さとなお)

コミュニケーション・ディレクター

(株)ツナグ代表。(株)4th代表。
復興庁復興推進参与。一般社団法人「助けあいジャパン」代表理事。
大阪芸術大学客員教授。やってみなはれ佐治敬三賞審査員。
花火師。

1961年東京生まれ。1985年(株)電通入社。コピーライター、CMプランナー、ウェブ・ディレクターを経て、コミュニケーション・デザイナーとしてキャンペーン全体を構築する仕事に従事。2011年に独立し(株)ツナグ設立。

現在は広告コミュニケーションの仕事の他に、「さとなおオープンラボ」や「さとなおリレー塾」「4th(コミュニティ)」などを主宰。講演は年100本ペース。
「スラムダンク一億冊感謝キャンペーン」でのJIAAグランプリなど受賞多数。

本名での著書に「明日の広告」(アスキー新書)、「明日のコミュニケーション」(アスキー新書)、「明日のプランニング」(講談社現代新書)。最新刊は「ファンベース」(ちくま新書)。

“さとなお”の名前で「うまひゃひゃさぬきうどん」(コスモの本、光文社文庫)、「胃袋で感じた沖縄」(コスモの本)、「沖縄やぎ地獄」(角川文庫)、「さとなおの自腹で満足」(コスモの本)、「人生ピロピロ」(角川文庫)、「沖縄上手な旅ごはん」(文藝春秋)、「極楽おいしい二泊三日」(文藝春秋)、「ジバラン」(日経BP社)などの著書がある。

東京出身。東京大森在住。横浜(保土ケ谷)、苦楽園・夙川・芦屋などにも住む。
仕事・講演・執筆などのお問い合わせは、satonao310@gmail.com まで。

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