ボビー・マクファーリン・スーパー・オーケストラ・コンサート

2008年1月24日(木) 9:29:16

おととい、「ボビー・マクファーリン・スーパー・オーケストラ・コンサート」に行ってきた。@すみだトリフォニーホール。
彼を知らない人はあまりいないと思うけど、コレが有名。大ヒット。最近はクラシックを振っていたりする。

昨日もちょっと書いたが、とにかく神ライブ。陶酔したなぁ。席も前から5列目で良かったこともある。あんなにいいライブなのに客席は6割の入りで終始申し訳ない気持ちだった。すみだトリフォニーホールって、ちょっと前のハンク・ジョーンズもそうだったけど、とてもいい人を呼ぶわりには客の入りが悪すぎる。宣伝が下手なのかな。音は抜群にいいホールなのに。

やった演目は

バーンスタイン:キャンディード序曲
モーツァルト:ヴァイオリン協奏曲第5番「トルコ風」
メンデルスゾーン:交響曲第4番「イタリア」

と、わかりやすい楽曲。
ボビー・マクファーリンだから何かもっと変わったことやるかな?と思ったが、「キャンディード序曲」はとても真面目な指揮ぶり。あれ、このままずっとこんな感じ?と思ったら、モーツァルトではカデンツァ部分のアドリブでボビーらしいというか、音楽の楽しさを感じさせてくれた。
ヴァイオリン・ソロのジョセフ・リンが良い。
チャイナ服を着た坊主頭の若者(中国系)で、まぁなんつうか笑顔を絶やさないで楽しそうに演奏をするのだ。多少雑な部分もあるのだが、壮大でロマンティックなソロをやる。そしてカデンツァ。いわゆるアドリブ。トルコ風というよりケルト風で長大なアドリブをやったなぁ。第1楽章は特に印象的。

モーツァルトとメンデルスゾーンの間に「ヴォイス・パフォーマンス」があった。
一度オケを引っ込ませて、ジョセフ・リンとふたりで出てきたボビーは、彼のヴァイオリンとヴォイスでインプロビゼーションをする。うわっ。すげっ。
その後リン君とさよならして、ボビーの独壇場。奇跡のヴォイス・パフォーマンス。声も技術も磨きがかかり天国にいるようだった。クラシック・コンサートなのでなんとなく大人しくしていた観客も、あまりの凄さに3曲目くらいから熱狂しだし、4曲目の彼の動きに合わせて観客も声を出して参加するパフォーマンスでは日本人とも思えないような参加ぶり。引っ込み思案はひとりもおらず、大声を出す人多数。もう参加せざるを得ない心の震えがあるんだもん。
で、ヴォイス・パフォーマンスのラストは彼のヴォイス・アルペジオをバックに観客が「アベ・マリア」を歌うというもの。これもねぇ、大声で歌うんですよ、みんな。素晴らしい!

この辺までくると、ボビーがなぜソウル〜ジャズ〜ポップスなどを変遷して今クラシックをやっているかわかってくる。つながっているのだ。音楽の楽しさには変わりないし、一見お堅く見えるクラシックにも底抜けに楽しい部分、そして他にはない美しい部分があるのだ。それを理解させといて休憩。

休憩時間のロビーでのCD販売は黒山の人だかり。みんな感動しちゃってボビーやジョセフ・リンのCDを買う買う。感動の電話を家に入れている人もいた。

で、20分休憩後、「イタリア」である。
明るく豊かな旋律のこれはボビーが伝えたいことが実にわかりやすく入っている。あれ? 新日本フィルの演奏もずいぶん柔らかく楽しげになっている。ボビーのソロ・パフォーマンスを見て音楽の真髄を感じ、しかもリラックスしきって演奏している模様。いい!
第4楽章を終えた時は楽団員もニッコニコ。なんだか「のだめ」のSオケみたい。

熱狂のアンコールに応えて、ボビーが何か始めようとするが、オケはみな戸惑う。アンコールの曲など用意してない模様(特に今日は初日だし)。どうするのかな…。
彼はまず第2ヴァイオリンに対してトレモロをしろと指示。戸惑いつつ彼らが小刻みな演奏を始めると、急に後ろを振り向いて、他人事だと思っていた第1ヴァイオリンにも短いトレモロを指示(会場笑い)。で、ホーンセクションにも適当に指揮をつけ、会場を振り返って「チキチキチキチキ言え」と指示をして会場も歌わせ、全体がおもちゃ箱のようにぐじゃぐじゃになったところで大声でアリア調の声を出してサッと収束。ほんの1分ほどのパフォーマンスだが、またまた会場熱狂。

アンコール2曲目は、オケに向かって「ベートーベンNo.9は出来るか。最初のジャッジャンッ ジャッジャンッだけ」と英語で指示。オケは「えー、できると思うけど急に言わないでよ〜」と笑いつつ、急に指揮が始まったのでうわっと慌てて引き出す。でも1小節で指揮は収束。たった5秒。オケも含めて会場中爆笑。オケの人なんか楽しいのか感動したのか泣いている人もいた。

これでオケは引っ込み、会場も明るくなり、オシマイ、ということなのだが、観客は帰らない。拍手はなりやまず、足踏みまで出だした(日本では珍しい)。

で、ボビーが出てきてひとりでヴォイス・パフォーマンス。素晴らしい。んでもってまた会場熱狂。また出てきてパフォーマンス。素晴らしい。んでもってまた会場熱狂。3回目は通訳を従えて出てきて「んー、仕方ないから質疑応答タイムにするよー。何でも答えるから質問して」とボビー。観客はみな、席を離れてステージ前に立ち、ボビーを取り巻いていろんな質問をする。「指揮者としてオケにどんなアドバイスを?」「リラックスしろ、と。それが一番大事だ」 「ウォームアップはどのように?」「一日中歌ってるからウォームアップは必要ないんだ」 「一番好きな曲は?」「今日もやったけど『スマイル』が好きだね」……

音楽は楽しい。歌は楽しい。そして大勢で作るオケはもちろん楽しい。そして音楽が存在する生活も楽しい。始終歌えることが楽しい。どこにでも音が存在することが楽しい。ひいては「人生は楽しい」。
こんなこと、彼はこれっぽっちも言わなかったけど、びんびん伝わってきた。うん。実に楽しい。

終演後の観客たちの笑顔笑顔笑顔をここでお見せしたいくらい。
これだけ笑顔が溢れる終演後は経験がない。あ〜楽しかった。希有なるコンサートであった。

佐藤尚之(さとなお)

佐藤尚之

佐藤尚之(さとなお)

コミュニケーション・ディレクター

(株)ツナグ代表。(株)4th代表。
復興庁復興推進参与。一般社団法人「助けあいジャパン」代表理事。
大阪芸術大学客員教授。やってみなはれ佐治敬三賞審査員。
花火師。

1961年東京生まれ。1985年(株)電通入社。コピーライター、CMプランナー、ウェブ・ディレクターを経て、コミュニケーション・デザイナーとしてキャンペーン全体を構築する仕事に従事。2011年に独立し(株)ツナグ設立。

現在は広告コミュニケーションの仕事の他に、「さとなおオープンラボ」や「さとなおリレー塾」「4th(コミュニティ)」などを主宰。講演は年100本ペース。
「スラムダンク一億冊感謝キャンペーン」でのJIAAグランプリなど受賞多数。

本名での著書に「明日の広告」(アスキー新書)、「明日のコミュニケーション」(アスキー新書)、「明日のプランニング」(講談社現代新書)。最新刊は「ファンベース」(ちくま新書)。

“さとなお”の名前で「うまひゃひゃさぬきうどん」(コスモの本、光文社文庫)、「胃袋で感じた沖縄」(コスモの本)、「沖縄やぎ地獄」(角川文庫)、「さとなおの自腹で満足」(コスモの本)、「人生ピロピロ」(角川文庫)、「沖縄上手な旅ごはん」(文藝春秋)、「極楽おいしい二泊三日」(文藝春秋)、「ジバラン」(日経BP社)などの著書がある。

東京出身。東京大森在住。横浜(保土ケ谷)、苦楽園・夙川・芦屋などにも住む。
仕事・講演・執筆などのお問い合わせは、satonao310@gmail.com まで。

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