ハンク・ジョーンズ・ソロ・コンサート
2008年1月12日(土) 5:40:01
いや〜、ありがたやありがたや。
今年90歳になるジャズ界の至宝が、海を越えてえっちら東京まで来てくれるんだもん。生活圏内から1時間以内にわざわざ来てくれるんだもん。シアワセなことだよなぁ…。現存するプレイヤーの中で、チャーリー・パーカーとやったことがある最後の人。たぶん。ジャズ界だけでなく人類にとって、まさに至宝。(※パーカーと競演した現役ジャズマンでは、ロイ・ヘインズがまだ元気です、とのメールをいただきました。ありがとうございます)
というわけで、ハンク・ジョーンズのソロ・コンサートに行ってきた(@すみだトリフォニーホール)。
客席は6割程度の入りで、はっきり言ってガラガラ。でもみんな本当に「ハンクと同じ空間にいられてシアワセ」と心から感じている人ばかりが見に来ていて、ボクは逆にうれしかったな。曲を聴くというより、ハンクと一緒にいる喜びに浸っている感じ。拍手や歓声がめちゃめちゃ温かい。
ボクはCMのロケなどでハンクと延べ60日くらいは一緒にいたことがあり(もう10年以上前のことだ)、贅沢にも彼のピアノはその間中ずっと聴いていた(彼は毎日きちんと練習するので、撮影の合間とかにそれはもう飽きるくらい聴くことになる)。だから彼のタッチは比較的理解している方だと思うのだが、玉を転がすような技巧は少し衰えたものの、高音のピアニシモが以前にも増して異様にきれいになっていた。ちょっと死ぬ前のルービンシュタインを思い出すような美しさ。あまりに美しすぎてアンコールの「In A Sentimental Mood」では泣いてしまったほど。
全部で25曲くらい、ほとんど誰でも知っているようなスタンダードを実に淡々とやっただけなのだが、それもハンクらしい。中でも「Summertime」「Someone To Watch Over Me」などのバラッドが終始ピアニシモで、なんだか異様にきれいだったなぁ。生きていてくれるだけでこんなにありがたいのに、ここまでの陶酔をくれて本当にありがとう。古いとかラウンジ・ピアノ的とか言う人もいるかもだけど、ハンクはハンク。最高のピアニストだ。
終演後、会わずにさっと帰るつもりだったが、わりと感動したので、ひと言だけ挨拶しようと楽屋口で出待ち。40分ほど待ったら中へ入れてくれたので、座っているハンクに話しかけた。
最初はボクを思い出してくれなかった。んー、最近では3年前にNYのライブ後に挨拶したんだけどな。もうすぐ90歳だしな。もう記憶から飛んじゃったかな。と残念に思いつつ、「ほら、一緒にCMやったでしょ。『やるもんだ!』のヤツ。ね、あのサトーだよ」と必死に説明したら「オ〜! サトサン! 髪の毛ないからわからなかったよ。髪の毛どこ行ったんだ? アハハ」だって(笑)。原因は髪だったか!(いまは3ミリ短髪だしハゲも進んだ)
固く握手して別れる。
もう会えないかもなぁ…。足もしっかりしていたし指も動いてはいたが、90歳だし、いつ何があってもおかしくない。今生の別れかも、という思いを込めて。
なんか彼との思い出でエッセイの一章分埋められるくらいなんだけど、そのうち不定期日記にでも書こう。
あ、そうそう、ハンク、今年グラミー賞にノミネートされたんだって。「ベスト・ジャズ・インストゥルメンタル・ソロ」部門。サックスのジョー・ロヴァーノとのライヴCD「Kids」に収録されている「ララバイ」でのソロ・プレイが対象らしい。獲ったら最高齢かもなぁ。ぜひ獲ってほしい!
