うまくなりたいという目の輝き

2007年8月23日(木) 9:24:23

昨晩もお酒抜きで外食。野菜がおいしいという売りのオーガニック・レストランだったこともあり、食べたのも野菜のみ。すっかり「酒抜き夜メシ」が気に入ってしまった。飲みたいワインや飲みたい日本酒があるわけじゃない場合は無理に飲まない方が気持ちいいな。昨日も書いたけど、夜メシから帰宅してから書き物とか仕事とかが出来るのが良い。まぁ毎回は無理にしても、これからこのパターンも増やしていこう。

帰ったら佐賀北高校が甲子園で優勝していた。
この夏、高校野球は全然見てなかったが、佐賀北についていろいろ読んでなかなかすごいチームだったことを知り、ちょっとは見ればよかったと残念に思った。野球特待生が問題になっている中、特待生などひとりもいない普通の公立校。体育科もない。専用グラウンドやナイター設備、室内練習場もなく、グラウンドはサッカー部との共用。練習は放課後3時間のみ。んでもって、出場18選手全員が地元中学の軟式野球部出身だと言う。

百崎監督によると「練習時間の3分の1は体力作り。3分の1は基礎的な技術練習。実践練習の時間を削ってもこのふたつはやる。平日は打撃練習なんてしない」らしい。選手も「本格的な打撃や守備の練習が始まったのは夏の大会前。走り込みばかりしていた」「平日はキャッチボールやゴロ捕りばかり」と言っている。

ここから「やっぱり走り込みが大事」「基礎をみっちりやるのが重要」みたいな根性論好きなオジサンみたいなまとめに持っていくのは簡単だが、それだけで頂点に立てるわけがない。このチームの場合、もうひとつ要素があったようだ。「野球日誌」という、監督・部長・選手の交換日記の存在。選手は「不調のとき、前の日誌を開いて先生のアドバイスを読み返す」「練習中にきつくしかられたら、なぜそのとき先生が怒ったかを説明してくれて、納得がいく」と語っている。(msn 記者の目より)

指導者の意図が明確に選手に伝わり、選手も納得ずくで目的意識を持って一歩一歩進めば、短い練習時間でも着実に伸びるし、単調な基礎練習もがんばり通せる、ということかな。

なんか「納得」というのがキーワードなような気がした。

いろんな話を読んでいると、百崎監督に「有無を言わさず納得させるカリスマ性」があるわけではなく「納得に導く優れた話術」があるわけでもないようだ。自分の経験による「自分の言葉」での説明。それが選手個人個人の胃の腑に落ち「心からの納得」につながったのかもしれない。

いろいろ読んでいて、百崎監督のこんな言葉も見つけた。
「下手でもうまくなりたいと目を輝かせる生徒たちに、県のベスト8くらいは経験させたい」。

あぁ、そうか。
選手はみんな「うまくなりたい」のか。「成長したがっている」んだ。成長するとうれしいんだな。
一見当たり前のようなことだが、指導者は意外とそれを信じない。だから「鍛える」みたいな言葉を使う。これは「選手は怠ける」「選手は自覚が足りない」ということを前提とした性悪説的言葉である。

百崎監督はたぶんそれを性善説的に信じた。信じたからこそ選手の役に立とうとした。その性善説的な指導が「納得」を生んだ。なるほど、そういうことかもしれない。


なんかぼんやり子育てについて考えていた。
子供の「うまくなりたい」「成長したい」という心をちゃんと信じて性善説的に子育てしているかどうか。「あれをやりなさい」「これはいけません」「それが結局キミのためなのだ」とか、性悪説的に思考停止を強いていないか。理屈や一般論で説明するのではなく、ちゃんと「自分の言葉」で子供に説明できてるか。子供がちゃんと「納得」して物事に取り組んでいるかどうか。

「うまくなりたい」「できるようになりたい」「成長したい」という目の輝きを大人が曇らせてどうする。大人のやり方を納得させずに押しつけて気持ちを萎えさせてどうする。ん〜。やばいやばい。

佐藤尚之(さとなお)

佐藤尚之

佐藤尚之(さとなお)

コミュニケーション・ディレクター

(株)ツナグ代表。(株)4th代表。
復興庁復興推進参与。一般社団法人「助けあいジャパン」代表理事。
大阪芸術大学客員教授。やってみなはれ佐治敬三賞審査員。
花火師。

1961年東京生まれ。1985年(株)電通入社。コピーライター、CMプランナー、ウェブ・ディレクターを経て、コミュニケーション・デザイナーとしてキャンペーン全体を構築する仕事に従事。2011年に独立し(株)ツナグ設立。

現在は広告コミュニケーションの仕事の他に、「さとなおオープンラボ」や「さとなおリレー塾」「4th(コミュニティ)」などを主宰。講演は年100本ペース。
「スラムダンク一億冊感謝キャンペーン」でのJIAAグランプリなど受賞多数。

本名での著書に「明日の広告」(アスキー新書)、「明日のコミュニケーション」(アスキー新書)、「明日のプランニング」(講談社現代新書)。最新刊は「ファンベース」(ちくま新書)。

“さとなお”の名前で「うまひゃひゃさぬきうどん」(コスモの本、光文社文庫)、「胃袋で感じた沖縄」(コスモの本)、「沖縄やぎ地獄」(角川文庫)、「さとなおの自腹で満足」(コスモの本)、「人生ピロピロ」(角川文庫)、「沖縄上手な旅ごはん」(文藝春秋)、「極楽おいしい二泊三日」(文藝春秋)、「ジバラン」(日経BP社)などの著書がある。

東京出身。東京大森在住。横浜(保土ケ谷)、苦楽園・夙川・芦屋などにも住む。
仕事・講演・執筆などのお問い合わせは、satonao310@gmail.com まで。

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