小泉首相は相当「マシ」であった

2006年9月19日(火) 8:45:49

小泉純一郎首相が退陣する。
明日、総裁選があるから、実質今日までだ。彼の在任期間中を後々懐かしく思い出すのではないかという気がしている。

ボクはなんでも「マシかどうか」で考えるところがある。あの時よりマシ。伝えぬよりマシ。やらないよりマシ。つまり最悪の状況よりよくなっていれば良しとする部分がある。理想論が空しいのは歳とともにわかってきたし。

小泉首相は相当マシだった。
彼を批判する人もまた多いが、認めるべきところはちゃんと認めたい。

まず「金の噂がなかった」。
スキャンダルがほぼゼロ。女性関係も金権関係も癒着関係もなかった。これは実は画期的。しかも人間関係のしがらみについてもフリーな立場を貫き通した。義理と人情と派閥緊縛の自民党の中でそれを貫くのがどれだけ大変か。それらの弱みがなかった分、改革断行に走れたわけで(改革がちゃんと断行されたかは別の話。でも改革の道筋を作っただけマシ)。彼はそういう意味で政治家のイメージを変えた。

次に「政治がわかりやすかった」。
ワン・フレーズ・ポリティクスと批判する人も多いが、小泉以前には政治のわかりにくさを糾弾してたじゃん。どうしたいのよ。少なくともあの頃よりずっとマシだと考えたい。「わかりやすい政治」の道筋を作ってくれた。今後の首相はもうわかりにくい政治に戻りにくい。イイコトだ。いくら日本人がニュアンスの民族だからって、小泉以前のわかりにくさはあんまりだった。だからみんな政治に関心を失っていた。あの時代に帰りたいですか?

「スピーチが心に届いた」のも良い。
これは実に大切なこと。いままでの首相でそんな人がいたかどうか(田中角栄首相を除く)。スピーチこそ、首相職の要諦にして本質なのだ。だって代議士は国民の代理人。そのリーダーはどう代理作業をするか国民にしっかり伝えなければならない。短いコメントから郵政解散のスピーチに至るまで、彼のスピーチは明瞭で説得力もあった。ボクは(賛否は別にして)彼の言葉をしっかり受け止めた。ああいう「個人の体温」が感じられるスピーチを今後の首相も継承してほしい。

とにもかくにも「公約を守った」。
有言実行の難しさは誰でも知っているが、魑魅魍魎の政治の世界でこれを貫くのが実に難しいのは想像に難くない。彼の出現で「公約は守るもの」という基本が確立されたと思っていい(少なくとも今後数年は)。これって小泉以前に比べてかなりマシ。彼の出現がなければ「裏にいろいろ事情があってね」という世界が今でもまかり通っていただろう。守ればいいのか!という批判もあるだろうが、守らないより守った方がいいに決まっている。その公約で選挙に勝ったんだから。

「先送りしなかった」のも評価したい。
もちろん先送りした案件もあろう。でもマシだ。歴代の首相がびびって手を付けなかった案件を次々こなした。一番大きいのは拉致問題。電撃的に北朝鮮に飛び、首相自ら交渉のテーブルにつき、言質を取った。ひとつ間違えば政治生命を失うところ。そんな賭けをする必要もなかったのに解決のために自らが動いた。そして拉致問題を国際的人道問題としてG8サミットの議長声明に盛り込ませることを成功させた。彼がああやって動かなければいまでも先送りされていたかもしれない。他にも、ハンセン病控訴中止、超高齢議員への引退勧告、郵政民営化法案成立などなど。そして先送りとは関係ないが、景気回復の事実。マシである。

なんか他にも褒めたい部分がある気がするけど、まぁとりあえず。

もちろん小泉首相が残した問題も多い。批判は簡単だ。でも相当マシだったとボクは評価したい。世の中劇的によくなるわけではない。マシの積み重ねでよくなっていく。マシじゃなかった首相もゴマンといた。小泉首相は相当マシだった。歴史に残る内閣のひとつだと思う。そして次の首相もマシであることを願う。

佐藤尚之(さとなお)

佐藤尚之

佐藤尚之(さとなお)

コミュニケーション・ディレクター

(株)ツナグ代表。(株)4th代表。
復興庁復興推進参与。一般社団法人「助けあいジャパン」代表理事。
大阪芸術大学客員教授。やってみなはれ佐治敬三賞審査員。
花火師。

1961年東京生まれ。1985年(株)電通入社。コピーライター、CMプランナー、ウェブ・ディレクターを経て、コミュニケーション・デザイナーとしてキャンペーン全体を構築する仕事に従事。2011年に独立し(株)ツナグ設立。

現在は広告コミュニケーションの仕事の他に、「さとなおオープンラボ」や「さとなおリレー塾」「4th(コミュニティ)」などを主宰。講演は年100本ペース。
「スラムダンク一億冊感謝キャンペーン」でのJIAAグランプリなど受賞多数。

本名での著書に「明日の広告」(アスキー新書)、「明日のコミュニケーション」(アスキー新書)、「明日のプランニング」(講談社現代新書)。最新刊は「ファンベース」(ちくま新書)。

“さとなお”の名前で「うまひゃひゃさぬきうどん」(コスモの本、光文社文庫)、「胃袋で感じた沖縄」(コスモの本)、「沖縄やぎ地獄」(角川文庫)、「さとなおの自腹で満足」(コスモの本)、「人生ピロピロ」(角川文庫)、「沖縄上手な旅ごはん」(文藝春秋)、「極楽おいしい二泊三日」(文藝春秋)、「ジバラン」(日経BP社)などの著書がある。

東京出身。東京大森在住。横浜(保土ケ谷)、苦楽園・夙川・芦屋などにも住む。
仕事・講演・執筆などのお問い合わせは、satonao310@gmail.com まで。

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