大崎善生「優しい子よ」

2006年7月15日(土) 13:28:50

今年の2月5日付けの日経新聞に大崎善生氏の「守られている」というエッセイが載っていた。NYに在住する人からメールで教えていただくまで気がつかなかったのだが、探し出して読んでみるとそれはとても感動的なエッセイだった。筆者の奥さんである女流棋士とそのファンである不治の病に冒された少年との手紙の交流を書いたもの。ボクは会社のデスクで人目を忍んで泣いた。いまでもその日の新聞はデスクの上に乗っている。捨てられないのである。

そのエッセイが、先月末に発売になった大崎善生氏の短編集「優しい子よ」の表題作として私小説になっている。というかこの私小説を元にあの日経エッセイが書かれたという経緯かな。ボクとしては日経のエッセイの方が抑えた筆致で好きだが、それでも家のリビングで家族に気がつかれないように泣き濡れてしまった。ボクはいろんな愛や優しさを出し惜しみしている。心の中の密閉容器にしまい込みすぎている。照れとか損得とか自分本位とかで出しそびれてる。でもそんなのっていったい何のための人生だろう。

そんなことを思いながら、昨晩は「テンダリー」で飲んだ。ボクの疲れた顔を見て宮崎さんはさっとウンダー・モーニを作ってくれた。ウンダーベルクのスプモーニ。心の焦燥を柔らかく包んでくれるような涼やかなカクテル。それは出し惜しみのない優しさで満たされていた。なるほどバーテンダーというのはそういう仕事なのだな。料理人も同じ。尊い仕事だ。きちっと受け止め一杯で店を出る。さてと。ちゃんと生きようっと。

佐藤尚之(さとなお)

佐藤尚之

佐藤尚之(さとなお)

コミュニケーション・ディレクター

(株)ツナグ代表。(株)4th代表。
復興庁復興推進参与。一般社団法人「助けあいジャパン」代表理事。
大阪芸術大学客員教授。やってみなはれ佐治敬三賞審査員。
花火師。

1961年東京生まれ。1985年(株)電通入社。コピーライター、CMプランナー、ウェブ・ディレクターを経て、コミュニケーション・デザイナーとしてキャンペーン全体を構築する仕事に従事。2011年に独立し(株)ツナグ設立。

現在は広告コミュニケーションの仕事の他に、「さとなおオープンラボ」や「さとなおリレー塾」「4th(コミュニティ)」などを主宰。講演は年100本ペース。
「スラムダンク一億冊感謝キャンペーン」でのJIAAグランプリなど受賞多数。

本名での著書に「明日の広告」(アスキー新書)、「明日のコミュニケーション」(アスキー新書)、「明日のプランニング」(講談社現代新書)。最新刊は「ファンベース」(ちくま新書)。

“さとなお”の名前で「うまひゃひゃさぬきうどん」(コスモの本、光文社文庫)、「胃袋で感じた沖縄」(コスモの本)、「沖縄やぎ地獄」(角川文庫)、「さとなおの自腹で満足」(コスモの本)、「人生ピロピロ」(角川文庫)、「沖縄上手な旅ごはん」(文藝春秋)、「極楽おいしい二泊三日」(文藝春秋)、「ジバラン」(日経BP社)などの著書がある。

東京出身。東京大森在住。横浜(保土ケ谷)、苦楽園・夙川・芦屋などにも住む。
仕事・講演・執筆などのお問い合わせは、satonao310@gmail.com まで。

アーカイブ

同カテゴリーの他記事