人に仕事を合わせる

2006年2月 9日(木) 8:53:58

フィンランドの高齢者雇用促進政策の根底に流れる思想は「人に仕事を合わせる」だそうだ。
つまり、高齢勤労者の能力に仕事内容を合わせれば労働効率が上がるという考え方。結果的に高齢者の就労率が高まっているという。

まぁ平たく言えば、作業内容と人的能力のマッチングをより深く考える、ということだろう。マッチしてなければ業務変更や配置転換で対応する。その作業をこなす能力がない人がいても、その人間の能力を活かせない組織の方が悪い、と考える。この「人間重視」の視点が高齢者の雇用対策、ひいては身体障害者の雇用にも有効だということだ。

ただし、それを広く実行していくと全体の作業レベルは下がっていく。そのせいかフィンランドでは「従業員の作業能力向上を企業に義務づける」という世界でも例のない法改正が行われたらしい。それにより全体のレベルも保持され、高齢者対策にもなり、雇用も促進されるという流れ。

日本でももちろんマッチングは考慮される。アナタの経歴ならこういう職種、とかね。
でも根底にはフィンランドと逆の考え方「仕事に人を合わせる」が流れているのは確か。高度成長期には勤労者は「組織の一歯車」でしたからね。個性的であることは許されず、会社の無個性な一部品としてロボットのように効率的に仕事をこなすのが「善」とされた時代がほんの数十年前だから(もしかしたら今でも)。

いまの60代70代80代はその歯車世代。「人に仕事を合わせる」なんて聞いたら「甘えんな!」「仕事とはそういうものではない!」とか怒りそう。彼らは(政治家をはじめとして)まだまだ社会のトップに君臨している人も多い。

彼らの勤勉が戦後の日本の急成長を支えてきたわけで、いまのある意味豊かな生活はその世代のおかげである。深く感謝したい。でも将来の少子化高齢化社会では、もっともっと人間重視に方向転換していくのが主流の考え方になるんだろうな。

この方向転換に日本はわりと時間がかかりそうではあるが。

佐藤尚之(さとなお)

佐藤尚之

佐藤尚之(さとなお)

コミュニケーション・ディレクター

(株)ツナグ代表。(株)4th代表。
復興庁復興推進参与。一般社団法人「助けあいジャパン」代表理事。
大阪芸術大学客員教授。やってみなはれ佐治敬三賞審査員。
花火師。

1961年東京生まれ。1985年(株)電通入社。コピーライター、CMプランナー、ウェブ・ディレクターを経て、コミュニケーション・デザイナーとしてキャンペーン全体を構築する仕事に従事。2011年に独立し(株)ツナグ設立。

現在は広告コミュニケーションの仕事の他に、「さとなおオープンラボ」や「さとなおリレー塾」「4th(コミュニティ)」などを主宰。講演は年100本ペース。
「スラムダンク一億冊感謝キャンペーン」でのJIAAグランプリなど受賞多数。

本名での著書に「明日の広告」(アスキー新書)、「明日のコミュニケーション」(アスキー新書)、「明日のプランニング」(講談社現代新書)。最新刊は「ファンベース」(ちくま新書)。

“さとなお”の名前で「うまひゃひゃさぬきうどん」(コスモの本、光文社文庫)、「胃袋で感じた沖縄」(コスモの本)、「沖縄やぎ地獄」(角川文庫)、「さとなおの自腹で満足」(コスモの本)、「人生ピロピロ」(角川文庫)、「沖縄上手な旅ごはん」(文藝春秋)、「極楽おいしい二泊三日」(文藝春秋)、「ジバラン」(日経BP社)などの著書がある。

東京出身。東京大森在住。横浜(保土ケ谷)、苦楽園・夙川・芦屋などにも住む。
仕事・講演・執筆などのお問い合わせは、satonao310@gmail.com まで。

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