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SNOW「讃岐うどん 口内刺激のエクスタシー」

(雪印機関誌「SNOW」1999年5月号より)

 まず、たぶん、読者の方々の疑問をとかなければならない。

 
 「本場のさぬきうどんは本当にそこまでうまいのか? 雪印の機関誌で特集を組むくらいうまいのか? たかがうどんでしょ? 近所のあの店とどこがどう違うと言うのだ!」
 
 ああ、その気持ち、手に取るようにわかる。ボクも2年前はそうだった。だいたいうどんに価値を感じていなかった。ボクは蕎麦党だったのだ。自宅で週末に蕎麦を打っていたくらいは蕎麦党だった。さぬきうどんなんて「名物にうまいものなし」の典型、まぁまずくはないだろうが、蕎麦の方がずっとうまいに決まっているじゃん!
 
 ……あれから2年(遠い目)。ボクは変わってしまった。香川の奥地で本当のさぬきうどんを知っちゃって以来、ボクはもう蕎麦には見向きもしない。さぬきうどんのあの快感に比べたら、蕎麦のうまさなんて数段劣ってしまうからなのである。そのくらいはうまい。それは信じて間違いはない。(ただし香川の奥地の製麺所のさぬきうどんは、である。香川県でも観光客相手の店はハテナな店もある)
 
 はじめてさぬきうどんを食べたときの驚きはいまも忘れない。香川の奥地の納屋みたいな製麺所で、玉をもらって自分で湯がいて自分でネギまで切って食べたあの時の驚き(これぞ香川独特のセルフ方式)。その歯ごたえがまずすごい。ゴチッと歯に当たってくる。歯が本気を出して噛み切りにいくと、おもむろに身を許し、最後の一皮でまた粘る。そしてムニ~ッと切れるのである。歯の攻撃からツルリと逃れた麺もきっちり働く。その、顔が映るくらいつるっつるな表面のせいであろう、歯と唇の間、舌の下、上顎、と、縦横無尽に動き回って刺激まくるのだ。そして喉越しもたまらない。麺が生き物のように喉の奥に向かって突っ走る。もちろん小麦の香りもふくよかで、ほのかな甘みがある。そう、さぬきうどんは、歯、喉、舌、鼻、そして口の中のあらゆる壁面・隙間、それらをすべて楽しませてくれる「口中総合快感食品」なのだ! なんなんだこのうまさは!
 
 本当のさぬきうどんはあなたが普段食べているうどんとは別物なのだ。違うジャンルの食べ物と言ってもいい。こうなるとダシは邪魔である。しょうゆをタラリ、それだけで十分うまい。麺自体がここまでうまいと、具もダシもまるで必要ないのである。そしてそして! そこまでうまく、高速費や飛行機代までかけて食べに行きたいそのうどんが、一杯たったの100円だったりするのである!(製麺所のセルフに限る)
 
 ボクはその驚きをホームページ(http://www.ckp.or.jp/satonao/)に書き、「うまひゃひゃさぬきうどん」(コスモの本)という本にもした。そしてそれらを読んでわざわざさぬきうどんのためだけに香川に出かけていった方々からたくさん感謝のメールが届いている。否定的な意見は皆無。100%感謝メールなのである。そう、ボクの偏愛ではない。本当にうまいのだ!
 
 ……字数がつきた。あと100枚くらいは書きたいのであるが、仕方がない。
 
 最後に。香川の人はうどんを喉で食べる。つまり呑み込む。でもあれは県外人には難しい技である上に、あんなに快感な「歯ごたえ」を楽しまないのはもったいない、とボクは思っている。通は喉で食べなきゃ、などと言わずに自由に楽しめばいいんじゃないかな。

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