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渡辺真知子「海につれていって」

Umi he tsureteitte
Watanabe Machiko
1978年発売/SONY RECORDS

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わりとよく渡辺真知子を見かけるんですよね。
新幹線の中とか西麻布のバーとか。

相変わらず顔が大きくて、しかも声も大きいので目立つこと夥しい。
あの独特の「お腹からの発声」でペチャクチャしゃべるもんだから声がよく通るんです。周りの迷惑そうな目。でもボクは渡辺真知子に対しては限りなく寛容です。はは、楽しそうだね、なんかイイコトあったの?って声かけたくなってしまうくらい。

そう、彼女には、気軽に声かけたくなっちゃいます。
他のタレントにはそんなこと思わないのに何故かなぁ、といろいろ考えたんですが、どうもこのデビューアルバムをかなり愛していた、というのが大きいようです。「糟糠(そうこう)のファン」を気取っているのでしょう。しかも「アイドル視」をしていなかったから照れずに声がかけられるのでしょう。

まぁデビュー曲の「迷い道」からして大ヒットしたので「糟糠」ってわけでもないけど、当時高校生だったボクの乏しい小遣いを割いて買った、アイドルでもないのにそのくらい応援していたんだ、みたいな恩着せがましいファン心理が働くんですね、きっと。完全に身内意識。「久しぶりじゃん、どうしてたの?元気?」って肩たたきたくなっちゃうんです。


「迷い道」が出たのが昭和52年(1977年)11月ですからボクは16歳。
チャーとか原田真二とかツイストとか、なんか新しい風が歌謡界に吹き始めた頃、八神純子やサザンと並んでもっともそれを感じさせたうちのひとりでした。曲想にオリジナリティがあったし発声も独特。顔もアイドルとは一線を画していてどこか「才能で勝負」みたいな潔さを感じさせたし(まぁでも美人と言えば美人でしたけど)。

なんか大陸的なところも魅力的でした。
メロディラインにも歌い方にも、芒洋としたスケールの大きさが感じられます。他のアーティストがいかにも日本純正ロックやら湘南スケコマシサウンドをちまちま目指していたところに「突然現れた異人さん」って感じ。

あのつかみ所のない当時の印象を伝えるのは難しいな。
あの「馴染まなさ」「突然さ」はなんだろうなぁと考えているんですが……そう、「アラジン」とか「ライオンキング」とか楽しい正統派で来たディズニーが急に「ポカホンタス」を出した感じに似ています。「は? ポカホンタス? なんだ? なんだかなぁ…」っていう違和感。あれにちょっと似ている。

逆にわからなくなっちゃったか…。先に進もう。


彼女が作詞作曲した、この「迷い道」がまず大名曲ですよね。
歌詞がすごい。サビのラストの決めが「迷い道くねくね」ですからね。この「くねくね」がとんでもなくスゴイ。すごく真面目なこと歌っているのに最後が「くねくね」と擬態語止め。しかもそれが何の違和感もなく収まっている、ここらへんが彼女の真骨頂です。

2曲目の「かもめが翔んだ日」だって
「ハーバーライトが朝日に変る。その時一羽のかもめが翔んだ」
「かもめが翔んだ かもめが翔んだ あなたはひとりで生きられるのね」
ねぇ。かもめが翔んだ、ってだけの歌詞ですよ。それでこんなに歌詞世界を引っ張れる人なかなかいません。でもそのくらいの違和感なんて、その「大陸的芒洋」で聴いている人に「まぁいいか」って思わせちゃうんです。すごい歌い手だったな、渡辺真知子って。

そして彼女は大傑作「ブルー」を生むわけですが、彼女はここまで。
大陸的芒洋&違和感がだんだん消失していくのと同時に普通のアーティストになっていってしまいました。「唇よ、熱く君を語れ」とかヒットはいろいろあるにせよ、もう帰化しちゃった異人さんに魅力はなかったのです。普通になろうとしちゃったんですよね、渡辺真知子。惜しい。


さてこのデビューアルバム。
最初の「海のテーマ」から2曲目の「海につれていって」までの展開の見事さ。そして「海につれていって」自体のメロディラインの良さ。そこから「かもめが翔んだ日」につないでアルバム世界を構築する演出のうまさ。
とにかく冒頭からきれいに引き込んで〆の名曲「あなたの歌」まで飽きさせず渡辺真知子ワールドを描いていきます。

傑作ですよ。ホント。

駄曲がない。
一部伊藤アキラの作詞もあるけどほとんどが彼女自身の作詞作曲で、メリハリはあるし大陸的だし横須賀の匂いはするし(これも彼女を好きな理由のひとつ。柳ジョージの項参照)とてもデビューアルバムとは思えない出来です(ちなみに2枚目の「フォグランプ」もまぁまぁですが、一枚目ほどの出来ではありません)。


異人ワタナベマチコ。
違和感の人ワタナベマチコ。

彼女はやっぱり普通じゃないなぁ。あぁまた聴きたくなってきた。



【1997年7月記】

1997年07月01日(火) 21:58:48・リンク用URL

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