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LV3「大黒屋光太夫」

吉村昭著/毎日新聞社/上下各1500円

大黒屋光太夫 (上)
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10月頭にモスクワ〜サンクトペテルブルグに個人旅行に行く予定になったので、急遽読んだ長編。上下巻であるがとても読みやすいのであっという間だった。著者は「書き終えるまで死にたくないと何度も思った」と書いているから、ひょっとしたら遺作になるかもしれない。そういう意味では吉村歴史文学(と呼ぶのだそうだ)の集大成とも言えるだろう。

とはいえ、妙な力が入っているわけではなく平明かつ流れるような文章。
鳥羽から江戸に向かう途中で嵐にあって漂流し、ロシアの島に流れ着き、カムチャッカ半島から西端のペテルブルグまで大陸横断し、エカテリーナ女帝に謁見し、ロシア政府の方針を変更させて帰国許可を勝ち取り、また大陸横断し、北海道から江戸、そして故郷に帰り着くまでの10数年の道のり。
ただでさえも感動的な物語なのだが、著者は淡々と描いていき、ラストあたりは少し盛り上げが足りないかと思うくらい。でもいまのボクにはこの程度の盛り上げがちょうどいい。ちょっと浅田次郎が書く大黒屋光太夫でも読んでみたい気もしたが(笑)。あ、淡々とといっても、ちゃんと盛り上げてはいるんですよ。極寒の描写なども圧巻。ただ、事実が感動的すぎるので、それに比べると淡々、といったところ。抑制が効いたストーリーメイクはさすがなもの。興味ある方にはおすすめ。

追記:光太夫がエカテリーナ女帝と謁見したエカテリーナ宮殿に、この本を読んだ1週間後に行った。
この部屋で待機して、この部屋で謁見したのかな、などと想像しながら光太夫と同じ空間を体験した。宮殿を出て、あまりに美しい秋の庭園を散歩しながら、きっと光太夫はこれと全く同じ美しさを体験したに違いないと確信を持った。200年の時を越えて同じ土地に立つカタルシス。歴史小説の感動の大部分は「いまとつながっている」この感じなのだろうと思ったり。

2003年10月01日(水) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:歴史小説

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