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LV4「朗読者」

ベルンハルト・シュリンク著/松永美穂訳/新潮クレストブックス/1800円

朗読者
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各媒体、各批評家、ベタ誉め。20以上の言語に訳されアメリカでは200万部突破のヒット作らしい。
満を持して読んだ。なんか題名も良いし、装丁も良い。「悪童日記」っぽい衝撃がありそうな予感…。だが。

神は細部に宿る。そういう意味では傑作である。この行間のみずみずしさは尋常ではない。こういう風に書きたい、と読んでいて嫉妬すら覚えた(嫉妬を覚える資格もないが)。久しぶりにブンガクの強いオーラをまとった文章を読んだ感じ。
だけど、小説の構築、という意味では少々物足りないのも確か。切ない恋の結末と強制収容所の過去、そして歳をとったふたり・・・。淡々と語られるそのストーリーは十分衝撃的だしこれ以上事件を増やす必要もない。主人公にも共感する。なのになんでこう物足りないのだろう。

それはたぶん、文章のリリシズムとストーリーの問題の深さが馴染んでないからではないか。もっとハードボイルドにした方がストーリーは立つ気がする。でも、著者はこれでもかと詩的な部分を放り込んでしまった。このリリシズムなら、例えば後半部がなくて裁判のちょっと後で終わった方がもっと締まったのかもしれない。後半部に前半部みたいな心の動きが頻繁に描かれていないのも逆効果。回想で始まっている物語なのに、そして前半はかなり多弁かつリリカルに回想するのに、後半では主人公は妙に読者によそよそしい。そこら辺も馴染んでない印象を際だたせる。

それにしても、リアルでこういろいろ事件が起きると、強制収容所ですらあまり残酷に感じなくなってくるね。そういう点からして「事件慣れした現代の日本人(つうかボク)には物足りない」だけなのかもしれない。

2000年09月01日(金) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:小説(海外)

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