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LV5「9.11 アメリカに報復する資格はない!」

ノーム・チョムスキー著/山崎淳訳/文藝春秋/1143円

9.11
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テロリズムという言葉をアメリカの正式文書は以下のように定義している。
「政治的、宗教的、あるいはイデオロギー的な目的を達成するため、暴力あるいは暴力の威嚇を、計算して使用すること。これは、脅迫、強制、恐怖を染みこませることによって行われる」…

この本の内容を簡単に言うと「この公式定義を当てはめればアメリカこそが世界最大最悪のテロ国家である、ということを歴史的事実を元に平明かつ精緻に論証し、今回の同時多発テロをめぐる一方的な見方に決定的な視点を提供するもの」となる。
天才言語学者として知られる著者が精緻に分析したその論証は、事実を元に平明かつ知性的に展開され、目からウロコが数百枚落ちる勢いである。著者は別に「反アメリカ」なわけではない。あくまでも平等な知性でアメリカを批判している。あのテロの直後にこうした冷静な論の展開が出来る知性がちゃんと存在し、欧州を中心としたメディアがそれをちゃんと取り上げていたということに安堵する。

読んでいて気分が悪くなるほど酷いテロをアメリカは世界各地で何度も繰り返してきている。9月11日の同時多発テロに関して「人類に対する犯罪」「自由に対する挑戦」などと言う資格すらアメリカは持っていないことは明白である。どう考えてもアメリカが世界各地で行ってきた行為はテロとしか呼びようがない。

戦慄する例がいくらも出てくるが、特に酷いのは98年にクリントンがスーダンのアル・シーファ工場に対して行った爆撃テロ。その攻撃が、貧困と病気に喘ぐスーダン国民の命綱であった安価な薬を作り続けた製薬工場に対して行われたという事実で、すでに9.11テロを上回る極悪非道犯罪である。薬を手に入れられずに一般人がどんどん死に続けていくということを計算した爆撃テロ……クリントンはビンラディンを軽く上回る冷酷な大量殺戮首謀者である。

また、1980年代のニカラグアに対するアメリカのテロ攻撃も許し難い。この攻撃でニカラグアは壊滅状態に陥ったのだが、彼らは今回アメリカがやったような報復に出ず、国際司法裁判所に訴えた。裁判所はアメリカを有罪とし賠償金を払うように命じたが、アメリカはこれを冷笑と共に退け(!)、攻撃をさらにエスカレートさせた。ニカラグアは国際法の遵守を求めて安全保障理事会に提訴し議会は「すべての国家は国際法を遵守すべし」という決議を行おうとしたが、アメリカ一国が拒否権を発動したのである……すなわち、「国際司法裁判所が国際的テロで有罪を宣告した唯一の国がアメリカであり、アメリカだけが国際法の遵守を求める決議案を拒否した」というまぎれもない事実。こんな例がぼろぼろこの本には出てきて、胸くそ悪くなるのである。

もちろん一方でアメリカはイイコトもたくさんしているだろう。過去にこういうことをした国だからテロを受けて当然だよ、などという気も全くない。また、日本はアメリカの庇護下にあり、アメリカを中心とした文化圏にどっぷり浸かっている。だから基本的に日本人がアメリカ側に立った認識を持ちがちなことにも文句はない。
ただ真の知性は平等・客観を立脚点にすべきである、とは心底思う。アメリカを中心とした世界に生きるからこそ、その世界が何たるかをきっちり知るべきであり、その世界を批判すべき目も曇らせてはいけないと思うのだ。そういう意味でこの本はアメリカ的世界に生きるすべての人にとっての必読の本と言ってもいい。同時多発テロ関連で多数出版された本の決定版としてオススメしたい。

2002年01月01日(火) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:時事・政治・国際

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