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LV5「食物語」

野地秩嘉著/光文社/1300円

食物語―フードストーリー
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副題は「フードストーリー」。
著者の本はずいぶん前に「キャンティ物語」を読んだことがある。とても印象的だった。その著者がいろんなレストランや旅館、バーなどで生きてきた人間くさい人々を書いているノンフィクション。料理人がほとんどであるが、ブリュッセルの豆腐職人や熱海のレストラン兼業医師、沖縄のバーのオーナーなど、変わり種も多い。とても静かで落ち着いたタッチのノンフィクションで、その人の人生がじんわり伝わってくる。

料理人を取材して書いた本はゴマンとあるが、その中でも出色の出来だと思う。必要以上に崇めていないのが気持ちいい。いい距離感なのだ。職人の半生として等身大に描けている。だから泣ける。特殊の才能がある職人ではなく、ひとりの人間の人生として書いてあるからだ。題名が普通すぎるのが難な気もするが、この普通さは狙いかも。そういう本だ。

2002年04月01日(月) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:ノンフィクション , 食・酒

LV5「9.11 アメリカに報復する資格はない!」

ノーム・チョムスキー著/山崎淳訳/文藝春秋/1143円

9.11
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テロリズムという言葉をアメリカの正式文書は以下のように定義している。
「政治的、宗教的、あるいはイデオロギー的な目的を達成するため、暴力あるいは暴力の威嚇を、計算して使用すること。これは、脅迫、強制、恐怖を染みこませることによって行われる」…

この本の内容を簡単に言うと「この公式定義を当てはめればアメリカこそが世界最大最悪のテロ国家である、ということを歴史的事実を元に平明かつ精緻に論証し、今回の同時多発テロをめぐる一方的な見方に決定的な視点を提供するもの」となる。
天才言語学者として知られる著者が精緻に分析したその論証は、事実を元に平明かつ知性的に展開され、目からウロコが数百枚落ちる勢いである。著者は別に「反アメリカ」なわけではない。あくまでも平等な知性でアメリカを批判している。あのテロの直後にこうした冷静な論の展開が出来る知性がちゃんと存在し、欧州を中心としたメディアがそれをちゃんと取り上げていたということに安堵する。

読んでいて気分が悪くなるほど酷いテロをアメリカは世界各地で何度も繰り返してきている。9月11日の同時多発テロに関して「人類に対する犯罪」「自由に対する挑戦」などと言う資格すらアメリカは持っていないことは明白である。どう考えてもアメリカが世界各地で行ってきた行為はテロとしか呼びようがない。

戦慄する例がいくらも出てくるが、特に酷いのは98年にクリントンがスーダンのアル・シーファ工場に対して行った爆撃テロ。その攻撃が、貧困と病気に喘ぐスーダン国民の命綱であった安価な薬を作り続けた製薬工場に対して行われたという事実で、すでに9.11テロを上回る極悪非道犯罪である。薬を手に入れられずに一般人がどんどん死に続けていくということを計算した爆撃テロ……クリントンはビンラディンを軽く上回る冷酷な大量殺戮首謀者である。

また、1980年代のニカラグアに対するアメリカのテロ攻撃も許し難い。この攻撃でニカラグアは壊滅状態に陥ったのだが、彼らは今回アメリカがやったような報復に出ず、国際司法裁判所に訴えた。裁判所はアメリカを有罪とし賠償金を払うように命じたが、アメリカはこれを冷笑と共に退け(!)、攻撃をさらにエスカレートさせた。ニカラグアは国際法の遵守を求めて安全保障理事会に提訴し議会は「すべての国家は国際法を遵守すべし」という決議を行おうとしたが、アメリカ一国が拒否権を発動したのである……すなわち、「国際司法裁判所が国際的テロで有罪を宣告した唯一の国がアメリカであり、アメリカだけが国際法の遵守を求める決議案を拒否した」というまぎれもない事実。こんな例がぼろぼろこの本には出てきて、胸くそ悪くなるのである。

もちろん一方でアメリカはイイコトもたくさんしているだろう。過去にこういうことをした国だからテロを受けて当然だよ、などという気も全くない。また、日本はアメリカの庇護下にあり、アメリカを中心とした文化圏にどっぷり浸かっている。だから基本的に日本人がアメリカ側に立った認識を持ちがちなことにも文句はない。
ただ真の知性は平等・客観を立脚点にすべきである、とは心底思う。アメリカを中心とした世界に生きるからこそ、その世界が何たるかをきっちり知るべきであり、その世界を批判すべき目も曇らせてはいけないと思うのだ。そういう意味でこの本はアメリカ的世界に生きるすべての人にとっての必読の本と言ってもいい。同時多発テロ関連で多数出版された本の決定版としてオススメしたい。

2002年01月01日(火) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:時事・政治・国際

LV4「忘れてはイケナイ物語り」

野坂昭如編/光文社/1200円

忘れてはイケナイ物語り
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野坂昭如や黒田征太郎を中心にプロジェクト化された「戦争童話集」。その一環として公募された「戦争話」の中から野坂昭如が選んだ30編。戦争体験者たちによる短文を集めたものである。

こういった戦争ドキュメントはいろんな角度のものを定期的に読むようにしているが、やっぱり生の声はこたえる。
ドラマや小説のデフォルメされた叫びとは本質的に違う淡々とした叫びがそこにある。淡々としているからこそ、こたえる。これからもこういう生の声を定期的に読んでいこうと思う。
が、年々体験者は少なくなっていくのが現実である。「語り継げ」と大声では言わないが(語り継げと言った時点でなにか変質する気がする)、読み継ごうとは思う。で、子供たちにも読み継がせようと思う。

2001年06月01日(金) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:ノンフィクション , 時事・政治・国際

LV5「美味しい方程式の原点」

野崎洋光著/文化出版局/1600円

「分とく山」野崎洋光が求める美味しい方程式の原点
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「美味しい方程式」シリーズ三冊目。
シリーズ最終なのかな。人気シリーズなのでまだ続く可能性もあるけど、続くとしても薄く引き延ばしたものになる気がするので個人的にはこれを最終にした方がいい気がする。

ボクはこれをベッドで寝転がりながら読んだ。まさに「読ませる料理本」として成功している。読んでいるだけで料理の本質が見えてくる。そういう意味でこの本はいまから料理を覚える方が手を動かす前に読むべき本かもしれない。
また、「考えさせる料理本」としても成功している。このレシピはこうすべき、というレシピ紹介本とはまるで違う。特に三章などは方程式の応用問題で読んでいて楽しい。ただ惜しむらくは応用問題にもっと贅沢にページを割いてほしかった。「かつお」を使って何作ろう、と考える余裕を読者にもっと与えて欲しい。すぐに答えを与えずいろいろ考えさせて欲しい。いろいろ考える過程に著者もついてきて欲しい。そこが惜しい。

難点はデザインが中途半端になってしまったこと。レシピ紹介と読ませる部分が両立していない気がする。シリーズ的にデザインは一貫して斬新だが、今回は読ませる部分が多かったせいか、横組み縦組みの入り交じり具合や写真の入れ方、大きなフォントの使い方が多少心地悪くなってしまっていた。惜しい。

2000年12月01日(金) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:食・酒 , 実用・ホビー

LV5「南へ」

野田知佑著/文春文庫/600円

南へ
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1992年から1995年まで「本の雑誌」に連載した文章の文庫版。
「新・放浪記2」と副題にある。最初の「放浪記」は単行本で読んだ記憶があるが、「新」は読んでなかったと思うので、「新・放浪記1」は読み損なっている気がする。まぁいいや。特に筋がある本ではないし。

野田知佑はやっぱり半年に一回は読まないといけない作家のひとりであるなぁ、というのが読後感。
こういう暮らしの記録を継続的に読まないと、東京というシステムがいかに異常なものか、都会というものがいかに狂乱なものか、生きていく目的とはなんなのか、自分のためだけに気持ちいいことをなにかしているか、などという根本的なものを忘れてしまう情けなさなのだ。
あ、日本の河川問題についても。河川問題についてはボクはなにもしていないに等しい。読んで理解しているだけならバカでもできる。激しく共感しているのだからなにかすればいいのだ。現地に出かけて活動するのはとても無理だから、なにかボクの立場で協力できることを探していきたい。
・・・などと、ちょっと精神が思わぬ方向に開かれる。そんな効き目が彼の本にはあるのである。

2000年08月01日(火) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル: , エッセイ , 教育・環境・福祉

LV3「さらに、美味しい方程式」

野崎洋光著/文化出版局/1600円

さらに、美味しい方程式―「分とく山」野崎洋光が明かす
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名作「美味しい方程式」の続編。
前作であそこまで完璧に方程式化している分、続編はどうしても細かく各論的になってしまい、なかなかつらい。ものすごく整理してくれた前作に比べて、シンプルさが壊れてしまっているのである。文字数も思ったより多くて、前作のシンプルさを愛していた者としては違和感がある。

内容的には「美味しい二次方程式」といった感じで、より難易度が高くなっている。それはいいと思うのだが、難易度が高い部分を強烈に整理してくれた前作との差がその分明確になりすぎてしまったかもしれない。

それと、どこに何が書かれているのかがわからないから(目次のつけようがなかったのかもしれないが)、あらこれは1ページ目からしっかり読む暇がないと読めないな、と思ってしまってちょっと気が重くなるところが難である。各論的に展開するなら、方程式ごとに見出しをつけて、目次かなにかでわかりやすくしてくれないと、山がどのくらいの高いのかがわからない。そこもちょっと残念だ。いっそのこと「チャート式」参考書的にするとか。

逆に言うと、腰を据えてじっくり読み出すと、かなり面白い。台所に立って実験してみたくなる。そこらへんはさすが。
次は画期的な「応用問題集」「練習問題集」を期待する。なにしろこちとら受験世代にて、方程式を覚えたら問題集がやってみたくてしょうがないのだ。

1999年05月01日(土) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:食・酒 , 実用・ホビー

LV4「野崎洋光の和食でおもてなし」

野崎洋光著/光文社/1500円

野崎洋光の和食でおもてなし―こうすれば上手にできる16のコツ
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名作「美味しい方程式」を出した「分とく山」の野崎氏による丁寧で温かい料理本。

この著者のいいところは前作と変わらない。わかりやすく丁寧にすべてのコツを開陳するところだ。
多くの料理本は、料理数を競うことに汲々としているせいか、「なぜそうするのか」の視点が決定的に欠如している。彼の本は料理数を最低限に絞ってでもその部分の解説にページ数を割き、出てくる料理も応用が利くものを選んでいる。だから読んでいて目からウロコが一杯。彼が丁寧に書くコツをゆっくり読んでいるだけで、「料理とはいったいなんなのか」みたいな大きな地平までもが見えてくる。

1998年11月01日(日) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:食・酒 , 実用・ホビー

LV5「ユーコン漂流」

野田知佑著/文藝春秋/1429円

ユーコン漂流
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アラスカのユーコン川をカヌーで下った著者のエッセイ。

on my own、つまり自分の幸福も不幸もすべて自分のせい、という著者の姿勢がすべての行間に滲み出ており、読者は彼とともに長い孤独の川を行くことになる。
安心できるのは、著者自身、孤独についてストイックではないこと。淋しくなったら淋しいと言い、長く何週間もアラスカの村にとどまる。孤独に縛られる修行のようなカヌー行でないところがいいではないか。自然である。そこらへんが著者の真骨頂であろう。

彼の本を読むと「人間の実力とはなにか」というような想いにいつも駆られる。サバイバルという意味の実力ではない。性別、国籍、実績、肩書きなどをすべて取り払ったときに残る裸の人間としての実力…。そして自分を見返して見たとき呆然唖然…。これを思い知るために、またボクは野田知佑を読み返すのだ。

1998年07月01日(水) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル: , エッセイ

LV1「ピアノ レッスンズ」

ノア・アダムス著/大島直子訳/中央公論社/2200円

ピアノレッスンズ
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51歳になって突如ピアノを弾くことを志した著者(アメリカで一番人気があるラジオパーソナリティらしい)の悪戦苦闘ピアノ物語。
そのエピソードの数々はそれなりに読ませるし、ピアノをある程度の歳から始めた(もしくは始めようとしている)読者にとっては共感も多いと思う。が、訳が悪いのか原文が悪いのかわからないが、全体に稚拙で散漫な印象。もっともっと盛り上げられるしもっともっと共感を呼べる題材なのに。残念だ。
同じ様なレベルのピアノ弾きとして個人的にはいくつも参考になるところがあったのだけど。

1998年06月01日(月) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:音楽

LV5「美味しい方程式」

野崎洋光著/文化出版局/1500円

「分とく山」野崎洋光が説く 美味しい方程式
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料理本である。ボクは料理本はたくさん読むがめったに取り上げない。新鮮な視点が決定的に欠如しているものが多いからだ。でもこの本は違う。レイアウトも画期的に素晴らしいが、それよりも中身に感心した。

この本が他の料理本と一線を画すのはその「方程式」というコンセプト。西麻布の名店「分とく山」の主人である著者は、料理という手品の種を至極シンプルに読者に披露してしまう。舌の経験を必要とする調味料の比率を「8:1:1」という風にあっさりと提供してしまうのだ。まず基本にこれさえ覚えれば応用はこうこう簡単です、ってな具合。その単純な構図がまず新鮮。権威的でなくまことに賞賛に値する。

そしてそれ以上に素晴らしいのは、核家族化により日本から消えてしまった「おばぁちゃんの味」(つまり口伝による料理文化)の連環をこの方程式によって取り戻そうとしているのではないか、ということ。
いや著者がはっきりそうと書いているわけではないが「こうやって調味料の塩梅をしっかり覚えてほしい。日本の文化として残して欲しい」という切実な願いをボクは感じる。受験世代・マニュアル世代が理解しやすいように翻訳された、これは「おばぁちゃんの味」の現代風「口伝」なのだ。

1997年07月01日(火) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:食・酒 , 実用・ホビー

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