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LV5「なにも見ていない」

ダニエル・アラス著/宮下志朗訳/白水社/2600円

なにも見ていない―名画をめぐる六つの冒険
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副題は「名画をめぐる六つの冒険」。
帯は「いまもっとも注目される美術史家によるスリリングなエッセイ。文献学的な方法論を越えた新しい絵画解読法を提唱する」。

うはは。文献学とか解読法とか言われるとちょい難しい専門書的な感じだ。でも絵画素人のボクでも楽しく読めたから大丈夫。なにが楽しいって「見る」ということの本質がここに書かれているから。
絵を見るのに美術史的知識もなにもいらない。そういうのを持っている人は結局「なにも見ていない」ことが多いのだ。よーくこの絵を見てご覧? ほら、こんな風に画家は描いているんだ。美術史的にはこう解釈されているが、そんなのなにも見ていない。先入観を捨ててよーく見てご覧?……簡単に言えばこういう感じ。

ボクたちはどんなことについても目では見ず脳で見ることが多い。
道端のタンポポでも「あ、タンポポか」とわかった時点で見ることをやめてしまう。もう見知らぬ花としてよーく見るという行動は起こさない。絵もいっしょ。「あ、受胎告知か」とわかった時点で見ることをやめてしまう。見ているようでなにも見なくなる。でも、そんなことではなくてちゃんと見てみる。遠近やリアリティや絵の端の風景までよーく見てみる。大画家が描いた絵でもおかしいところはおかしいと思ってみる。そうするとこんなにいろいろ見えてくる。

実はこういう態度自体が人生を楽しむコツというか真髄だったりすると個人的には思っているので、この本は意義深かった。文体が妙に気取っていて、いらない工夫とかをいろいろしているのが読みづらいが、わからないところはさっと飛ばしてでも読む価値あり。実に示唆に富んでいる。

2003年02月01日(土) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:アート・舞台 , 評論

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