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「ナラタージュ」

amazon島本理生(りお)が22歳の時に書いた恋愛小説。
題名のナラタージュとは「映画などで、主人公が回想の形で、過去の出来事を物語ること」らしい。表紙袖に書いてあった。でも小説内にはこの言葉は出てこず、表紙袖に気づかないと最後までわからない。このような難解な題名にすることの必然性も含めて、少しハテナ。
全体にとても端正に書かれた小説で、表現は過不足ない。いや、むしろうまい。
でも、熱い想いを描いているわりに主人公は冷めていて捉え所がなく客観的だ。これが表現力不足なのか、この著者の文体なのか、これがいまの20歳のリアルなのかがボクにはいまひとつ掴めず、最後まで違和感として残ってしまった。
でも「ボク(45歳男)に共感されず違和感を感じられたこと」は実はイイコトなのかもしれない。というのも、小説的手法として、著者は主人公のリアルな回想独白(ナラタージュ)を取っているからだ。
たとえば偏執狂な主人公の一人称で書くとき、本当なら文章は支離滅裂になるはずだ。でも一般的な小説はそれをせず、真っ当な一人称文章でその主人公の崩壊を描いていく。もしリアルに一人称にするなら読者の共感なんか放っておいてでも、偏執狂的文章にするべきなのだ。
この本はナラタージュという題名なだけに、その辺のリアルを目指している気はした。主人公の気持ちや行動を必要以上に説明せず、素っ気ないくらい淡々と一人称的な物語が進んでいく。世代も性別も違うボクとしてはもう少しその辺の気持ちの動きを書いてほしいよ、とか思うけど。
ラストの半ページがよい。この半ページに収束させるために、端正にいろんな場面を描いてきたんだろうな。
2007年03月17日(土) 17:33:52・リンク用URL
ジャンル:小説(日本)
@satonao310