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LV4「横断歩道」

黒井千次著/潮出版社/1600円

横断歩道
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静かな小説である。
ある主婦がプールで知り合った同年代の女性と友達になるが、彼女はある日突然姿を消す。彼女がいる日常に慣れた主婦は彼女を捜し始める…というような物語なのだが、読後、さてココにどう書こうかと困ってしまうほどなにも起こらず、結果も展望も解決も現れない。だけど不思議に印象的。
読者によっては退屈を感じる人もいると思う。20代に読んだら退屈だろう。でも40.50歳以降に読むとわりと空気が読め、共感を得られる気がする。ボクは現代の危うい人生構築を外側から内側に向かって注意深くじっくり描いていることに好感を持った。意識して構築したわけでもない人生に埋没している安心感と不安。ある時、ほんの小さなキッカケでそこから一歩出る。すると違う景色が見え始めるのだが、それもまた非常に不安…。構築した人生に絡め取られ、行くも戻るもしにくくなった中年以降の不安感を静かに描いている。題名の「横断歩道」はそんな向こう岸への(安全な)一歩を象徴しているようだ。

著者は何も起こらないことにさすがに不安を持ったのか、ちょっとした出来事を重ねてミステリーっぽくしたりもするのだが、それはちょっと中途半端であった。ミステリー的にするより、より純文学的に持っていった方が個人的には望ましかったな。思わせぶりな小説と切り捨てることも出来るだろうが、正直ボクはわりと好きである。

2002年06月01日(土) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:小説(日本)

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