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「消えた少年たち」

amazonたしか1998年度の「本の雑誌」年間ベストテンの1位だった気がする。いや目黒氏などは90年代ベスト1に推していた気もする。でも、なぜかずっと買ったままで置いておいた作品。
ええと、ウケルのはとってもわかる。良く出来たミステリーだ。
終盤までこれでもかこれでもかと日常のなんでもないことを詳細に描き続け、日常のかけがえのなさ、子供がいることの奇跡的な素晴らしさみたいなものを完璧にあぶり出しておき、そのうえで急転直下ドカンと衝撃のラストに持っていくやり方は見事である。子供に対する気遣いの(病的な)細かさ、モルモン教のリアルで詳細な描写(教義の説明)、両親の過剰さ、など、ちょっと鼻につくところはいっぱいあるのだが、なんとなくすべてを許したくなるような気持ちにさせる。
が、言われているような爆涙的大傑作とは、残念ながら思わなかった。
涙はしたし、びっくりしたし、印象も深いが、「いいよーこれ!」と人に薦める気にあまりならない。なんでだろう…。なんというか「子供や世界に対する想いについての乖離」がそう思わせるのかな。主人公たちのその想いの過剰さが、どこかでボクを白けさせてしまうのだ。ボクにも娘はいる。かけがえのないものである。が、こういった過剰さはどこかで意識して避けている。その辺の考え方の明白な違いみたいなものが、どこかで感動に対する違和感になり、なんだかこの本を「警戒」させる。
この本はある世界観の(ある宗教的世界観の、と言ってもいい)の徹底的賛美であり、それを感動的ミステリーという口当たりの良いオブラートに包んでみせた周到な「プロパガンダ」なのではないか、という「警戒」が心の中に起こる。そこらへんがボクにとってつらい部分かも。考えすぎかもしれないけど。個人的にはそんな感じ。
2001年06月01日(金) 12:00:00・リンク用URL
@satonao310