トップ > おもしろ本 > 著者別一覧 > >

LV4「涙はふくな、凍るまで」

大沢在昌著/講談社文庫/619円

涙はふくな、凍るまで
amazon
ある日、娘のおつきあいで天敵であるネズミーランドに行った。
ネズミーにわりと批判的でアトラクションなんか別に見たくもないボクは、「ボクはファストパス並び係になるからもうボクのことは忘れてくれ」と言って、とにかく行列に並びまくったのだが(現実逃避)、その際何か読むものが必要だろうと行く前に書店で買ったのがコレである。大沢在昌はこういう時、時間を忘れさせてくれるはず…ということで読み始めたが、期待は裏切られなかった。夢とマジックを売るネズミーの嘘くさい空間はいきなり絶望と不運漂う北海道の極寒漁港に早変わりし、ボクは見事に現実逃避できた。ありがとう、大沢在昌。

知らなかったが「走らなあかん、夜明けまで」という本の続編らしい。知らずとも充分楽しめる。
通称日本一不運なサラリーマンである主人公が北海道で見舞われる不運の数々。前作は大阪ヤクザとの戦いだったらしいが、今回はロシア・マフィア。読むだけでカラダが冷えてくる描写の数々だが、中身は熱い。わざとっぽくB級にしてあるのもよい。ちょっと黒川博行のシリーズを思い出したりした。こういうの好きかも。時間つぶしには持ってこい。

2003年11月01日(土) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:ミステリー

LV3「チャイコフスキーのバレエ音楽」

小倉重夫著/共同通信社/1300円

チャイコフスキーのバレエ音楽
amazon
モスクワ、サンクトペテルブルグのバレエ観劇に行く前に、予習として「白鳥の湖」全幕をCDで聴き直した。そしてビックリした。こんな名曲だったとは! 
そして改めてバレエ音楽を俯瞰してみると、そこに「悲愴」などで中学時代からお馴染みだったチャイコフスキーの姿が燦然と輝いているのが見えるではないか。へぇ〜チャイコってそうだったのね、と、個人的に気づかされた気分(詳しいヒトにとっては何言ってるのって感じだろうけど、バレエ音楽が眼中になかったボクからするとちょっと驚きだったのだ)。そんなことを思っているときにこの本を書店で見つけたら、そりゃ買うわな。

内容は「白鳥の湖」「眠れる森の美女」「くるみ割り人形」といったチャイコフスキー三大バレエをくわしく取り上げており、CDを聴き込んだボクにはわりとうれしい構成。作曲者側の論理が見えてくるのも(踊る側の論理から書いたバレエ本が多い中)とても参考になる。まぁ興味あるヒトにしか楽しくない本だろうけど、まじめできちんとしており、なかなか良い。

2003年10月01日(水) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:アート・舞台 , 音楽

LV5「ZOO」

乙一著/集英社/1500円

ZOO
amazon
帯に「何なんだこれは。北上次郎  第3回本格ミステリ大賞受賞後第一作。天衣無縫。驚天動地。ジャンル分け不能。驚異の天才乙一、最新短編集」とある。

北上次郎が「何なんだ」と驚くだけのことはある。なるほど、なんなんだろう? まず設定がとても奇抜。なのに読者の心に真っ直ぐ入り込んでくる叙情とテーマがある。奇抜な短編ミステリなのに、人生の深みや哲学を感じさせるのだ。ふーんである。ラストも悲惨なものが多く、安易なハッピーエンドはない。そういえば、こういうタイプはいままでにはないものだなぁ。

著者名 は「おついち」と読む。愛機だった電卓のZ1(ゼットワン)から名前を取っているらしい。乙一=Z1。なるほどね。このペンネームからわかるように、著者にとって物語構成はある種のゲーム・プログラミングなのだろうと思う。古いタイプの作家からは考えにくい態度だろう。いいことなのだ。

どの短編も面白かったが、「カザリとヨーコ」「SEVEN ROOMS」が特に印象的だった。あ、「SO-far」も良かったなぁ。トリッキーな魅力を追っていくとそのうち行き詰まると思うが、あまり多作にならず、ゆっくり書いていってほしい作家かも。って、いまごろやっと読んで何言ってるか、という感じかもしれないが。おすすめ。

2003年09月01日(月) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:ミステリー

LV4「黒と茶の幻想」

恩田陸著/講談社/2000円

黒と茶の幻想
amazon
600ページ超の大作である。
著者の本は何冊か読んで感想を書いているが、ある日「あなたはまだ恩田陸の代表作を読んでいない」というメールが見知らぬ方から届き、この本を薦められた。で、すぐ買ったのだが分厚かったので長く積ん読状態だった。でも読み始めたらあっという間だった。

おもしろかった。おもしろかったのだが、これが代表作?という感じは残る。会話は相変わらずちょっとずつ甘いし、ストーリーもここまで長編にする意味を感じないもの。ただ、人物の周辺描写やこの年代の微妙な感じ、昔の恋愛へのせつない心情描写などはさすがに著者ならではで、ストーリーと関係ないところで何度も立ち止まって味読した。
4人の主人公それぞれに謎と奥深さがある構成と、屋久島の大自然がそれに重なってくる感じはとても心地よい。ただ、題名が少し遠い。なんでこの題名?という感じ。恩田陸っていつも題名に少し疑問が残るなぁ。

2003年08月01日(金) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:ミステリー

LV5「岡本太郎の沖縄」

岡本太郎撮影/岡本敏子編/NHK出版/2400円

岡本太郎の沖縄
amazon
岡本太郎が1959年と1966年に撮った写真をまとめた名作写真集。
ずっと手に入らなかったのだけど、復刻されたのか、普通に手に入るようになった。沖縄ブームのおかげかも。

鮮烈。衝動。慄然。とにかくどの写真も芸術家岡本太郎の目がそのまま生きている名作だ。
写真とは技術ではないと思い知らされる。トリミングもなにもしてないのに、そこにある時間・不可思議さ・愛・年輪などを余すところなく切り取っている。すごいなぁ。有名なイザイホーの神事を写してスキャンダルになった写真群(彼の行動に対しては虚実いろいろ言われているが、結局神域には入らなかったというのが今の定説らしい)で語られることの多い写真集であるが、1960年前後の沖縄の人々の生活を知るにはこれ以上ない文献となっている。少なくともボクは何時間も飽きずに眺め続けられる。第一級史料にして、歴史的名作。

2003年06月01日(日) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:写真集・イラスト集 ,

LV2「私の仕事」

緒方貞子著/草思社/1600円

私の仕事
amazon
副題は「国連難民高等弁務官の十年と平和の構築」。
そう、あの「日本一格好いい女性」緒方貞子が自分の仕事を振り返って書いた本である。うはーこりゃ激務だー!とビックリする仕事日記や回顧録、各地での講演、若い人達への提言など、内容は盛り沢山。じっくり読んでいくとそれはそれは立派な仕事と主張が散りばめてあり、圧倒されるし偉いなぁと客観的に思う。どういう仕事をしているかを知るためだけでも読む価値はあるかもしれない。特に「はじめに」で書かれている著者の基本スタンスは熟読に値する。

が、偉いなぁと感心していることを前提に、敢えて苦言を呈したい。
まず、学者が書いた本みたいになってしまっていること。国際政治学者や記者向けならこれでいいが、一般向けであるならある程度の噛み砕きは必要。忙しいだろうが、後進や若者のために、いかに意義深くすばらしい仕事かをやさしくわかりやすく書くことに大きな意味があると思う。何人かのトップクラスの科学者が科学用語を使わずに自分の仕事をきっちり紹介し若者たちを啓蒙しているようなことを著者にも期待したいのだ。
今のままではある程度の知識がある人以外とはコミュニケーションしようとしていない文章と言わざるを得ない。読み進めるのに国際政治の広い知識が必要な本であるのが非常に残念だ。また、全体にお行儀が良すぎて、教科書を読んでいるような気分になった。各方面に気を遣いつつ失言を避けて発言しないといけない仕事だということはわかるが、そういう発言を集めて本にしても読む側はいまひとつ乗れない(過去の出来事であるから特に)。「世界へ出ていく若者たちへ」と題された若者への提言の文章もとても硬い。彼女にこそ、自分の言葉で熱く訴えて欲しい。

もちろん、ちゃんと書く時間がないからこうしてまとめたのだろうし、出さないより出した方が著者の仕事への理解・普及になるからいいのであるが、著者だからこそ、期待してしまう。いい本であることを前提としてだけど。

2003年01月01日(水) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:時事・政治・国際 , 自伝・評伝

LV5「最悪」

奥田英朗著/講談社文庫/876円

最悪
amazon
サスペンス小説になるのかな。おもしろい。こんなにおもしろいのに文庫になるまでなぜ知らなかったのだろう、奥田英朗をなんで全く知らなかったのだろう、と我ながら疑問。

個人経営の鉄工所の社長、普通の銀行OL、無職の自堕落な青年。この三人の人生がどんどん最悪状態まで転がっていき、しまいには交差していくのだが、その最悪状態に転がっていく様が実に良く書けている。登場人物たちと一緒に読者も「どうしてこうも悪い方へ転んでいくんだぁー!」と頭を抱え、胃が痛くなることだろう。かなりのリアリティで身につまされる。ボクらの人生も紙一重だなと思う。

特に鉄工所の社長の人生がよく描けている。中小企業・零細工場などの経営者をこの本を読んだあとでは尊敬のまなざしで見てしまう。よくやってるなぁ…。いやマジで。
前半・中盤に比べて、ラストあたりの急展開がいまひとつな感じではあるのだが、それを差し引いても素晴らしい。読後、人生なんとでもなるな、という勇気すらもらった。

2002年12月01日(日) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:ミステリー

LV5「にぎやかな湾に背負われた船」

小野正嗣著/朝日新聞社/1200円

にぎやかな湾に背負われた船
amazon
筒井康隆が帯に「少しほめ過ぎになるが、小生はガルシア・マルケス+中上健次という感銘を得た」と書いている。
とてもよくわかるが、ボクはそれは作者の目指すところではないのではないか、と思う。骨太さは似ているが、もっと軽快でサラリとしている。いくらでも重くどっしり書ける題材なのに、いくらでもややこしく人の性(さが)を入れ込める筋なのに、全体的に「毒みたいなもの」が意識して上手に排除されている。湿度が低い。妙に薄暗さがない。デビュー当時の村上春樹が中上健次的純文学を書いたとしたら、たとえばこんな感じになったかも、というイメージが少しした。イマの気分にとてもマッチする純文学だなぁ。読後、ついに平成の純文学が出た、とすら思った。

ユーモアの存在も大きい。どんなに暗い話になろうとそこはかとなくユーモラスな匂いが漂っている。著者がフランスの現代詩の世界と深く関わっていることもあるのであろうか。
あと、変なイメージかもしれないが、読んでいる最中ずっとブリューゲルの絵を思い浮かべていた。すべての登場人物がブリューゲルの絵のような印象でボクの頭の中に生きていた。あの、ブリューゲル的な細かい絵のような客観性と遠景がそこにあるからだろう。でもってその距離感はボク好みである。ま、早い話、気に入ったのですね。著者の作品はこれからも追ってみたい。

2002年09月01日(日) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:小説(日本)

LV5「光の帝国」

恩田陸著/集英社文庫/495円

光の帝国―常野物語
amazon
ある日メールが来て「なぜ恩田陸を読んでないの?」とあった。あぁ恩田陸、そういえば気になっていたけど読んでなかったなぁ、ということで数冊取り寄せて読んでみた。

まずは処女作「六番目の小夜子」と「ネバーランド」とこれ。
で、「ネバーランド」の方が完成度高いとは思うけど、一番強く印象に残ったのがこれである。副題に「常野(とこの)物語」とあるが、実際には副題を本題にした方がよかったと思う。「光の帝国」なんて、内容とまるでそぐわないし、第一スターウォーズちっくでなんだかおどろおどろしいではないか。

内容的には不思議な能力を持つ一族の繁栄と存亡の話であり、とても美しく、そして緊張感に満ちた連作短編集である。
滅び行く一族の哀愁と見えぬ敵との闘いに対する悲壮感が物語に深みを与えている。一族の歴史や敵の必然性、逃げていくべきなどもちゃんと書き込んでいけば(今はまったく書かれていず、読者はわからないままラストまで引っ張られる)、ある意味「十二国記」的一大叙事詩にもなりえる題材。そのうちきちんと書き直して欲しいと願ってやまない。

2002年09月01日(日) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:ミステリー

LV4「ネバーランド」

恩田陸著/集英社/1500円

ネバーランド
amazon
上記のように恩田陸読み数冊のうちの一冊。
学園ものであるが、妙にリアリティがあってよく出来ている。完成度は「光の帝国」より上だろう。ただ、なんとなく全体に既視感があり、読んでいてもうひとつ乗り切れなかったのも事実。父母の愛やトラウマに振り回される少年たちの桎梏と破綻。それを乗り越える勇気と友情。密室的な冬の学生寮という舞台といい、少年たちの描き方といい、いい物語なのだけど既視感が感動の邪魔をする。天童荒太の「永遠の仔」にもちょっと似ている(初出はどっちが先か調べてないが)。トラウマって題材はあのころのはやりではあったけど。

ネバーランドとは言うまでもなくピーターパンの住む世界。大人になりたくないピーターパンの世界を題名に持ってくるのもちょいと安直。あえて期待するが、あとがきで著者も書いているように、これをもとに違う長編を生み出して欲しい。そのための習作と考えると納得がいく。習作にしては完成度高いが。

2002年09月01日(日) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:ミステリー

LV3「六番目の小夜子」

恩田陸著/新潮文庫/514円

六番目の小夜子
amazon
著者の処女作で、あとがきによると「最初に勤めていた会社を辞めて、三週間くらいで書いたこの小説が第三回ファンタジーノベル大賞の候補になり、酷評されてあっさり落選し、文庫として世に出たもののすぐ絶版になった」らしい。
で、大幅に加筆修正して再版したものがこれである。NHKでドラマ化され人気を博したのも記憶に新しい(あれは脚本の宮村優子が大幅に書き直したらしいが)。

酷評された理由も読めばわかる気がするが、要所要所が妙に印象的な本で、全体の筋は忘れても細部がやけに記憶に残る。そういう意味ではとても力がある小説だと思う。キャラがしっかり立っていて、作者はそれを良い勢いを持って書いているから、全体にドライブ感が生まれている。
でもまぁ、ジュブナイルノベル的かな。ボクは嫌いではなく、それなりに楽しんだけど、ミステリー好きが読むとちょいとつらいかもしれない。そんな感じ。

2002年09月01日(日) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:ファンタジー , 児童・ティーンズ

LV4「フランス田舎めぐり」

大島順子著/JTB/1500円

フランス田舎めぐり 単行本
amazon
フランスの田舎を旅行するための適切なガイド、なのだけど、同時によく出来たエッセイ集にもなっていて、読み終わると実用的知識プラス「フランスの田舎で数日過ごしたような満足感」に浸れる。
こういうサービス精神満点の本にもともとボクは滅法弱い。書いている人のメンタリティまで想像できて「うー惚れそう」くらいまで行ってしまう。うはは。ちゅーことで、LOVE!なのである。

いや、でもボクのそういう趣味は置いておいてもいい本である。フランス好きや旅行好き、田舎旅のエッセイなどが好きな人はもれなく満足するであろう。文章もいいし構成もなかなか良い。ボクはプロバンスのリュベロン地方を回って帰ってきた後これを読んだのだが、先に読んでおけば良かったとずいぶん悔やんだ。普通のガイドでは教えてくれない、コアでエンスーな旅がこれを読めば体験できるであろう。

2002年08月01日(木) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル: , エッセイ

LV5「屍蘭 新宿鮫3」

大沢在昌著/光文社文庫/667円

屍蘭―新宿鮫〈3〉
amazon
「しかばねらん」と読む。
なんとなく読み始めた新宿鮫シリーズもこれで3冊目。1冊目はうーん程度な印象だったが、2冊目の「毒猿」でのめり込んでしまった。で、3冊目。前回、前々回とはまるで違うシチュエーションと犯人像を提出してきていてサスガである。また、今回は主人公自体に殺人の疑いがかけられるというサスペンスつき。演出に苦労のあとが見える。

犯人自体のアクと魅力は「毒猿」の方が数倍上だし、アクションが少ない分今回は静かな印象もあるが、やっぱり面白い。新宿のど真ん中ではなく、ちょっと外れに場を設定してきたのも、リアリティを増す効果があった。完全無欠的主人公である鮫島も妙に実在感を増している。これで犯人にもう少しカタルシスみたいなものを感じさせてくれれば傑作であったかも。そこだけ弱い。あ、あと、犯人の殺人が簡単に成功してしまうのもちょっと違和感。

2002年02月01日(金) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:ミステリー

LV5「毒猿 新宿鮫2」

大沢在昌著/光文社文庫/667円

毒猿―新宿鮫〈2〉
amazon
前作「新宿鮫」をちょっと残念と評したら、「いや、新宿鮫は第二作の毒猿の方が面白いんだよ」と先輩が教えてくれ、それならと読んだ本。なるほどこれは傑作である。前作ではぎこちなかった登場人物達がいきなり生き生きと動き始める。ストーリーも秀逸。息もつかせない。

完璧なる殺し屋「毒猿」vs 新宿鮫。この構図に中国出身の女性や台湾から来た強烈なキャラクターの刑事が絡むストーリーはキャラの立ち具合からアクションの濃さ具合、映画的なカメラワークまでとてもよく出来ている。台湾の刑事との心理的絡みが意外と少ないのと、あまりにアクション映画的すぎるラストと、そして毒猿の唯一の死角が○○であることあたりがちょっと弱い気がするが、全体のテンポを考えるとたいしたアラではない。
98年初版の本であるが、まるで古くない。なかなか感動的。続編も読んでみよう。

2001年12月01日(土) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:ミステリー

LV3「同じ年に生まれて」

小澤征爾/大江健三郎著/中央公論新社/1400円

同じ年に生まれて―音楽、文学が僕らをつくった
amazon
1935年に生まれたふたりの巨人、小澤征爾と大江健三郎の対談集である。副題は「音楽、文学が僕らをつくった」。

小澤と武満徹や、小澤と広中平祐の対談のおもしろさに比べると、ちょいと落ちる印象。大江健三郎という人はいまひとつアドリブが利かず、話し出すと論文調になってしまい(校正の段階でいっぱい赤を入れたからそうなったのかもしれないが)、巨人ふたりのセッションというよりは、かわりばんこに独奏しているという印象。それではつまらない。なんかふたりの話が盛り上がっている感じがあまり伝わってこなかったのが残念。

もちろん上手にセッションになっているところもあって、そこは面白かった。
闊達な小澤が特に良く、大江も素直な部分を見せていたりして良い。小澤が音楽の本質を語るあたりが特に印象的。大江もなにかを発見したような感嘆を見せる。でも、全体に触発されるといったところが少ない本であった。大江のペースでたんたんとした謙虚な対話が進むだけ。含羞があって気持ちは良いが、刺激と触発を望んでいる読者には物足りないだろう。

2001年11月01日(木) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:対談 , 音楽 , 評論

LV5「華胥の幽夢 ~十二国記」

小野不由美著/講談社文庫/648円

華胥の幽夢(ゆめ)―十二国記
amazon
「かしょのゆめ」と読む。現代日本が誇る名作、とそろそろ断言してもいいであろう十二国記シリーズの最新作にして、十二国記初(だったと思う)の短編集である。

十二国記ファンにとって、周辺エピソード満載の短編集はうれしすぎ、ワクワクして読んだ。ただ、シリーズが長大なのでもう忘れてしまっているところも多く、幾多の個性的登場人物たちのつながりがわからなくなっていたりして、楽しみも半減。全巻再読したいよ~。嗚呼どこかのんびりできる温泉でも行って十二国記全巻を再読したい、というのがボクのささやかな夢なのだ。

長編と短編では使う筋肉が違う、と言ったのは村上春樹だったか。十二国記の長編執筆の合間にこうした短編を書き上げるのは著者にとってなかなかたいへんな頭脳労働だったと思う。が、基本的に著者は長編作家なのだな、とこの本を読んで思う。短編なのだが、長編的構成のものが多く、展開の仕方も長編っぽい。特に表題の「華胥」などは長編的ストーリーで、助走やエピローグがない分、逆に冗長感やお説教くささが出てしまった。こういう展開の仕方は長編の方が向いている。

それにしても著者は泰麒が好きなのだなぁ。長編、外伝などを含めて、泰麒のエピソードがパズルをはめるように次々出来上がっていく。次の長編も泰麒編の続編のはずだから、この短編はその予告編にもなった感じだ。

2001年08月01日(水) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:ファンタジー , 児童・ティーンズ

LV4「消えた少年たち」

オースン・スコット・カード著/小尾芙佐訳/早川書房/2600円

消えた少年たち
amazon
たしか1998年度の「本の雑誌」年間ベストテンの1位だった気がする。いや目黒氏などは90年代ベスト1に推していた気もする。でも、なぜかずっと買ったままで置いておいた作品。

ええと、ウケルのはとってもわかる。良く出来たミステリーだ。
終盤までこれでもかこれでもかと日常のなんでもないことを詳細に描き続け、日常のかけがえのなさ、子供がいることの奇跡的な素晴らしさみたいなものを完璧にあぶり出しておき、そのうえで急転直下ドカンと衝撃のラストに持っていくやり方は見事である。子供に対する気遣いの(病的な)細かさ、モルモン教のリアルで詳細な描写(教義の説明)、両親の過剰さ、など、ちょっと鼻につくところはいっぱいあるのだが、なんとなくすべてを許したくなるような気持ちにさせる。

が、言われているような爆涙的大傑作とは、残念ながら思わなかった。
涙はしたし、びっくりしたし、印象も深いが、「いいよーこれ!」と人に薦める気にあまりならない。なんでだろう…。なんというか「子供や世界に対する想いについての乖離」がそう思わせるのかな。主人公たちのその想いの過剰さが、どこかでボクを白けさせてしまうのだ。ボクにも娘はいる。かけがえのないものである。が、こういった過剰さはどこかで意識して避けている。その辺の考え方の明白な違いみたいなものが、どこかで感動に対する違和感になり、なんだかこの本を「警戒」させる。

この本はある世界観の(ある宗教的世界観の、と言ってもいい)の徹底的賛美であり、それを感動的ミステリーという口当たりの良いオブラートに包んでみせた周到な「プロパガンダ」なのではないか、という「警戒」が心の中に起こる。そこらへんがボクにとってつらい部分かも。考えすぎかもしれないけど。個人的にはそんな感じ。

2001年06月01日(金) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:小説(海外) , ミステリー

LV5「黄昏の岸 曉の天」

小野不由美著/講談社文庫/714円

黄昏の岸 暁の天―十二国記
amazon
十二国記シリーズ5年ぶりの新刊である。
リアルタイムでこの名シリーズが継続していく幸せよ! 読み始めればそこはもう小野不由美ワールド。美しい漢字と想像力の羽ばたき、オーバーすぎない会話、キャラ設定の絶妙、すべてがバランス良く連関し合って、見事な世界を築いているのである。

とはいいつつ、この巻ではちょっと散漫な部分も見える。人民の苦しみや謀反者の心の動きや汕子らの変容など、書き込んだら物語により深みが出そうな部分がいろいろ抜けているのだ。でもまぁもしかしたらこれは次巻への伏線かもしれないな。どう考えてもこの巻の続編は出るだろうから。

いままでの既刊をすべて読みなおしてから読みたくなる気持ちを抑え読み始めたから(だって時間ないんだもの)、最初は泰麒や陽子のキャラを細かく思い出せなくて苦労した。なんとかはなったが、もう一度アタマからシリーズを再読したい気持ちは変わらない。

あぁ、いまからこのシリーズを初めて読み出す人が本当にうらやましい。
人生にまだ十二国記を初読する喜びが残されているなんて!(初めての人はこの巻からではなく、最初の「月の影 影の海」から続けて読んでね)

そういえば、この巻ではシリーズで始めて、「天」という神についての言及をしている。これがどんな展開を示すのか、今後も興味は尽きない。

2001年05月01日(火) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:ファンタジー , 児童・ティーンズ

LV3「新宿鮫」

大沢在昌著/光文社カッパ・ノベルス/800円

新宿鮫
amazon
いまごろ何読んでんの?って思う方も多いかもしれないが、これがボクの大沢在昌初体験である。
つうか、カッパ・ノベルスを読んだのって高校以来かも。なんとなく手を伸ばしかねていたが、新宿鮫シリーズの評判の高さに思わず買った一冊。

素直な感想としては、あまりボクには合わなかった。評判が高すぎてちょっとあら探し的に読んでしまったかもしれない。いや、まじ面白いんだけど、週刊文春だったかの「20世紀ベストミステリー」の「国内編ベスト10」に入る出来、とまでは思わないなぁ。つまり、その評判並みの面白さを期待しちゃうと少しがっかりするかも、ということ。
キャラ造形が非常にいい。ストーリーもこじんまりしてはいるがよく練られている。晶と桃井のキャラがもう少し掘り下げてあるとより魅力的になったと思うがそれは贅沢というものか(もしくはそれは続編で解決されているのか)。1990年初版。

2001年02月01日(木) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:ミステリー

LV3「クモの糸のミステリー」

大崎茂芳著/中公新書/680円

クモの糸のミステリー―ハイテク機能に学ぶ
amazon
クモ。不思議な生物だ。興味はわりと前からあった。なので書店で見つけて即購入。
副題は「ハイテク機能に学ぶ」であって、クモの糸の科学的分析などのサイエンス系新書ではあるのだが、実際には小難しいことは何もなく、クモをめぐる体験エッセイみたいな趣になっている。わかりやすく、おもしろく、好奇心をいろいろ満たしてくれる。佳品だ。

ただ、読んでいくに従ってクモへの好奇心がどんどん高まっていくのだが、そうなればなるほど「クモの写真が見たくなる」のである。白黒でもちろんいいから、クモ自体の写真をもっといろいろ載せてくれていないのが不満である。つうか、クモを好きにさせておいてそれはないだろう、みたいな憤慨すらある。上手に興味を湧かせているのだから、読者の身になって、興味の収まりどころまでケアしてくれていたらもっと良かった。贅沢かな?

2000年09月01日(金) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:科学

LV3「沖縄、基地なき島への道標」

大田昌秀著/集英社新書/660円

沖縄、基地なき島への道標
amazon
サミットもあっけなく終わり沖縄は祭りの後の空しさに包まれている頃であろうか。結局、沖縄でサミットを開いた、という意味を活かせなかったのは、首相の責任でもなんでもなく、日本国民すべての意識の足りなさなのである(もちろんボクを含めて)。

99年の選挙で沖縄県知事から降りてしまった著者であるが、主義主張の一貫度合いは実に気持ちいい。
主張が一貫している政治家は好きである。意見を変えてはいけないという意味ではなく、なんというか背骨のしっかり具合、みたいなこと。そういう意味では著者の背骨の太さは好きである。前著作とあまり変わらない主張に、もっとやれ、もっとしつこく続けろ、と応援したくなってくる。

基地問題は複雑だ。県民も基地に(経済的に)頼っている部分はある。だから一概に著者の主張がすべて正しいとは言わない。
でも、基地を存続させるのであれば、日本はしょせん「独立国家ごっこ」なのであることを我々は認識しなければならない。日本は独立していないのだ。どこぞの属国なのである。経済はそのどこぞの国のために発展しないと困るのである。株主様のために働く社員なのだよ、我々は。
じゃぁ、独立するとしたらなにが必要なのか。それをいい加減真剣に考えたらどうだろう? もしくは属国で居続けるか? だったら早く英語を公用語にしないと。通信費も関税も大幅に下げなくちゃ。基地も全国に置かないと。

いや、皮肉ではなく、やっぱり中途半端なのだ、日本という国は。背骨が太くなりようがない。

2000年08月01日(火) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:時事・政治・国際

LV4「岡本太郎の世界」

岡本敏子・齋藤愼爾責任編集/小学館/2800円

岡本太郎の世界
amazon
自分を「異化」したい、と、切実に思う今日この頃。岡本太郎の芸術にたどりつくのは必然であったのだろうと思う。

「芸術は気持ち悪くあるべきだ」という彼の主張が、この歳になってやっとわかってきた。理解できてきた。ずっと「ただ美しくあればいい」と思ってきたが、違和感なくしてなんの芸術であろう。見ている人の心を異化し、そこに二次的ななにかを生み出すこと。技術に頼った芸術や安易な感動を呼ぶアートとは一線を画す岡本太郎の凄み。彼のすごさを味わうなら、この本は過不足なく出来ていると思う。

この写真集&研究書&伝記を熟読した後、車窓から太陽の塔を眺める機会があった。年月が経ち、妙に景色と同化してしまった太陽の塔。これは太郎の意思と反するのだろうな、と妙な感慨を覚えたのである。

2000年05月01日(月) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:写真集・イラスト集 , アート・舞台 , 自伝・評伝

LV4「聖の青春」

大崎善生著/講談社/1700円

聖(さとし)の青春
amazon
1998年、わずか29歳で他界した天才棋士村山聖(さとし)の伝記である。

「本の雑誌」で茶木氏が「今年一番の大感涙物!」とベタ誉めしていることもあって読んだが、感涙を目的にするという意味ではイマイチであった。泣けない。ただ、ネフローゼという難病に冒されながら憑かれるように将棋にのめりこんでいった彼の青春の日々はボクの心に確実に何かを残したのだと思う。読み終わってからも妙に彼が脳裏から離れない。彼が生きた大阪は福島界隈をそぞろ歩いてみたくなる。彼が毎日食べた定食を食べてみたくなる。そんな感じ。

著者は彼と親交のあった将棋雑誌編集長。こなれた文体で外から内から村山聖をしっかり活写している。労作。

2000年05月01日(月) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:自伝・評伝

LV1「ウナギの科学」

小澤貴和・林征一著/恒星社厚生閣/2500円

ウナギの科学―解明された謎と驚異のバイタリティ
amazon
副題に「解明された謎と驚異のバイタリティー」とある。

まぁウナギ学の最先端がここで読めるわけだ。
こんなにポピュラーな魚なのにほとんどその実体が解明されていないことで有名だったウナギだが、なるほどなるほど、こういう魚だったのね。でも・・・かなり興味がある人でないと読めない。ほとんど学術論文。かく言うボクも興味のある項を拾い読みしただけ、かも。寝る前の睡眠薬にはなったのだけど。

それにしても、魚の中で最も硬い、というウナギの生身、一度囓ってみたいなぁ。ゴムと同じ硬さだというから噛みきれないのだろうけど。

1999年09月01日(水) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:科学 , 食・酒

LV3「東京恋人」

おちまさと他/フジテレビ出版/1980円

東京恋人
amazon
TX系深夜番組[東京恋人]の写真集。
テレビはほとんど見ないのでこの番組も知らないが単純に写真集として立ち読みして、衝動買いしてしまった。一昔前に「東京スタイル」というリアルな写真集が流行ったが、その恋人版、みたいな感じかな。

トレンディドラマみたいな格好良さはまるでないけど、その分リアリティがあるいまどきのカップル数組。
少ないページ数に凝縮されたその刹那的生活は、なんというか少しの羨ましさも手伝ってかわりとじっと見せてしまう力がある。ジジイみたいな言い方になるが、はっきり言って世代の違いを感じてしまうし彼らの行く末を心配もしてしまう。が、逆に一方でこういう刹那感みたいなものこそ貴重ではないか、これはとても正しい人生なのではないか、と感じるボクもいる。

なんだか日本も大丈夫だという気になって来ちゃったよ。全然そういう写真集じゃないんだけど。ボクにとってはとても不思議な存在感がある写真集なのだ。

1999年09月01日(水) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:写真集・イラスト集

LV4「東亰異聞」

小野不由美著/新潮文庫/590円

東亰異聞
amazon
あぁ、まだ「屍鬼」読んでいないなぁ、と思いつつ、文庫化されたこれを先に読んだ。
相変わらずの小野不由美ホラーだが、江戸の情緒が満天に残る異次元の東亰(とうけいと読む)の書き込みが素晴らしく、読者は「まだ夜が夜であった頃の大都市」へしっかりワープ出来る。さすがな描写力だ。ミステリーであり幽霊物でもあるのだが、そんなことより異次元東京の夜を著者と一緒に徘徊できる魅力の方が上だろう。

残念なのは「東亰」を舞台にした分だけ読者は最初からあまりミステリーと思っていないのだ。怪談的な物とミステリー的な物の中間な気分で読み進むから、ラストとかが逆に中途半端に思えてしまう。どうせなら舞台設定を本当の明治東京にすれば良かったのに、と思うのだが。

1999年08月01日(日) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:ミステリー , ホラー

LV3「図鑑少年」

大竹昭子著/小学館/1700円

図鑑少年
amazon
不思議な短編小説群だ。

基本的にはスライス・オブ・ライフなのだが、透明感がある文体の中に確固たるリアリティが感じられ、ふと遠くを眺めてしまうような、呆然としてしまうような世界に連れて行ってくれる。
非日常なんだけど懐かしいいろんな生活の断片…夢中で読んでいるうちに、ぐっと想いに浸ったり、中途半端に放り出されたり、著者の思うがままになっている自分を発見するだろう。

特に読者を連れ回したあげく最後にぽんと放り出す様がちょっとレイモンド・カーヴァーみたいで心地よい。印象的には「透明なカーヴァー」という感じ。まぁ極私的な印象なのだけれど。

1999年06月01日(火) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:小説(日本)

LV3「五体不満足」

乙武洋匡著/講談社/1600円

五体不満足
amazon
大ベストセラー。
本屋に行くと平積みドサドサ。テレビにも出演してどこでも常に乙武スマイルで、それはそれでとっても喜ばしいことだと素直に思う。

両手両足がない著者が書いた半生記なんだけど、愚痴らない、嘆かない、ハンデを特徴と考える、みたいなプラス思考かつマイペースで生きていく様がストレートに書かれている。大学生なのに非常に文章もうまい。達意の文章だ。なのに読んでいて感じるこの違和感はなんなんだろう。なんだかピンとはりきったピアノ線みたいな危うさを感じる。がんばりすぎてない?

身障者ということで暖かく批評するのは簡単だが、本当にこの本から著者の半生が見えてくるだろうか? 
なんというか体臭・体温みたいなものが伝わってこない。内にこもりがちな身障者達へのメッセージでもあるのだろうが、ただ笑顔なだけでは「特殊な性格な例」として片づけられてしまわないとも限らない。そりゃめちゃくちゃ立派よ。立派な本人、立派な家族、立派な周囲、の例なんだけど、そこに読者側として入り込む余地がない。共感しにくい。想像はできるけど。この「想像はできる」という部分をもうちょっと書き込んでより実感をもたせてくれたら、と贅沢を思う。

1999年04月01日(木) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:自伝・評伝

LV2「作家のインデックス」

大倉舜二写真/集英社/4935円

作家のインデックス
amazon
作家の書斎を中心に細々した小物にもレンズを向けてその作家の人物像を浮かび上がらせるのが目的の写真集。

有名作家56人の日常生活の場・仕事の場が写し出されている。
写真家というものはフラットに撮っているつもりでもどこかに意図を写し出してしまうものだ。これからの写真から匂うように浮かび上がってくるのは「作家の孤独」。畏れにも似た構図とは裏腹にその孤独をフィルムに定着させたいという意図を感じてしまう。意図がなかったとしたら「先入観」がフィルムに定着したのか…。
そしてリアリティのなさ。生活のリアリティがほとんど浮き出てこない。これも珍しいことだ。少し前に「TOKYO STYLE」という都会の部屋を撮った秀逸な写真集があったが、これと比べてみるとそのリアリティの差に愕然とするはず。それは被写体というよりも写真家の視線の違いであろう。

ただ、ボクはこの企画においてこのリアリティのなさは成功の一因だと思っている。作家のリアリティはその作品にのみ表れるものだからだ。ワイドショー的リアリティはいらない。

1998年12月01日(火) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:写真集・イラスト集

LV4「魔性の子」

小野不由美著/新潮文庫/552円

魔性の子
amazon
「十二国記」の外伝が新潮文庫から出ていたとは知らなかった。メールで教えてくれなかったら読まなかっただろうなぁ。

内容は…「十二国記」だから面白くないわけがない。文句なし。というか「十二国記」ファンには感涙もの。
ただ、これ「十二国記」を読んでない人が単独で読んでわかるのだろうか。充分面白いとは思ってくれるだろうけど内容的にイマイチ納得がいかないままに終わるのではないだろうか。新潮文庫のための書き下ろしらしいが、なんだかそこがとても気になった。
よい子のみんなは「十二国記」を全部読んでから読みましょうね。ゾクゾクが違います。

1998年08月01日(土) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:ファンタジー

LV2「日本の居酒屋をゆく~疾風篇」

太田和彦著/新潮社/1500円

日本の居酒屋をゆく 疾風篇
amazon
「ニッポン居酒屋放浪記」の続編みたいな感じである。
もう居酒屋紀行として定着した感があるが、相変わらず臨場感豊かで一緒に旅をしているような感じだ。

ただ、単に居酒屋に飲みに行くだけの旅であるだけに、こう巻が多くなってくるとそれぞれの土地の違い、店の違いが読んでいる側からは眺めにくくなってくる。居酒屋という一幕ものの積み重ねなので、飽きが来ないと言えば嘘になるのだ。このままこの手で行くかどうかを再考するべき時期なのか。いや、まだもうちょっと読みたいかな。微妙に迷う。そんな感じ。

1998年07月01日(水) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:食・酒 ,

LV3「過ぎる十七の春」

小野不由美著/講談社X文庫/580円

過ぎる十七の春
amazon
ファンタジー・ホラーとでも呼ぶのだろうか。人里離れた山奥での幽霊もの。十二国記シリーズではまりまくった小野不由美はこういうホラー系もいろいろ書いている。というか、そっちがドメインなのかも。

なにしろホラー嫌いなものでこうしてよっぽど気が進まないと読まない。ということで、今回は気が向いたので手にとった。面白かった。怖さはほどほどでボクにはちょうど良かった。
ただ、人物造形が少々甘ったるい部分がある。でもこれは「講談社X文庫ホワイトハート」という少女向け文庫のためもあろう、仕方がないんだろうな。また気が向いたら他のも読む気になるくらいは楽しめた。

1998年07月01日(水) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:ホラー , 児童・ティーンズ

LV3「沖縄 平和の礎」

大田昌秀著/岩波新書/640円

沖縄 平和の礎
amazon
沖縄戦関係の本をいろいろ読んだまとめとして、現知事であり沖縄戦では学徒動員されて戦った著者による県を代表する訴えを読んだ。
沖縄戦とはなんだったのか、基地問題とはどういうことか、21世紀の沖縄はどうなっていくのか…。
分断された知識がこれを読むことですっきり整理されボクの心の中におさまった感じである。やはり現職であるだけにちょっと演説臭いところはあるのだが、よくまとまっていると思う。マスコミの東京発想については阪神大震災で身に染みているが、ボク自身あまりに沖縄については他人事でありすぎたことを反省している。

1998年05月01日(金) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:時事・政治・国際

LV5「月の影 影の海」「風の海 迷宮の岸」「東の海神 西の滄海」「風の万里 黎明の空」「図南の翼」

小野不由美著/講談社X文庫/順に、上下各500円、上下各420円、580円、上下各620円、680円

月の影 影の海〈上〉 十二国記 講談社X文庫―ホワイトハート
amazon
「十二国記シリーズ」を一気に読んだ。

小野不由美の評判はずいぶん前から聞いていたんだけど、読んでその魅力がよくわかった。
まぁ一言で言えば東洋風ファンタジーなんだけど、さとうさとるの「コロボックル・シリーズ」に匹敵する出来。「ナルニア国物語」と「ゲド戦記」と「ネバーエンディングストーリー」と「時をかける少女」を足して4で割って東洋風にしたような作りで、設定も筋もキャラクター造形もどれをとっても秀逸。

そのうえ、若年層向け文庫シリーズだけに若者に対するメッセージも平易に気持ちよく織り込まれていて、それがまた通り一遍ではない。著者は平易な語り口で深い教訓をしっかり与えている。ある意味で作家の鑑なのである。うん、ベタボメ。難を言えば題名がみな似たり寄ったりで読む気が起こらないこと。これは本当に残念だ。これから読む人は一巻目の「月の影 影の海」からどうぞ。

物語と関係のないことを言えば、今まで本を読んできてこんなに「漢字」を美しいと思ったことはなかった。
本当に「漢字って美しい。すばらしい」と読んでいて思わせる。それを実感するだけでもこのシリーズは読む価値がある。

それと個人的には、あとがきで「ゾラック」が出てきたのがなんだかうれしかった。それについてはこちら

1998年03月01日(日) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:ファンタジー , 児童・ティーンズ

LV1「行きそで行かないところへ行こう」

大槻ケンヂ著/新潮文庫/438円

行きそで行かないとこへ行こう
amazon
3年前に出た単行本の文庫化である。題名通り行きそうで行かない場所に行ってみる旅行記である。

でも思ったよりその場所に意外性がなくてがっかり。この企画の面白さはそこにかかっているというのに! でも「行きそうで行かない場所」ではないエピソード(つまり本筋から離れたエピソード)がわりとおもしろいので許す(例えば元マネージャーに会いに行くところとか)。文体も椎名誠と東海林さだおを足して2で割ったような語り口で、視点はとても宮沢章夫ぽい。そしたら解説を宮沢章夫本人が書いていたのでびっくり。やっぱり編集者もそう思ったのね。

面白いことは面白いがよくありがちなエッセイかも。まぁオリジナリティが出る前の面白くなりかけのオーケン、という感じかな。

1997年11月01日(土) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル: , エッセイ

LV5「ステーシー」

大槻ケンヂ著/角川書店/1200円

ステーシー
amazon
オーケンのSF小説。というかホラーかな。

ボクはこの本、好き。
ひとつ間違えば単なる悪趣味ホラーに終わっちゃうような題材をしっかり愛が包んでいる。ちゃんと芯がある小説である。

15歳から17歳の少女達が突然死し人間を襲う屍体ステーシーとなって再生する…というストーリー。
時代におもねっているという印象がなくもないのだが、よくありがちな「設定負けSF」とはかなりレベルが違うのである。音楽という「飛躍を大切にする表現手段」の場にいる著者ならではの飛躍が随所に生きていて感心する。これからの「作家・大槻ケンヂ」にかなり期待するボクである。

1997年10月01日(水) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:SF , ホラー

LV2「わが夫、大山倍達」

大山智弥子著/ベースボール・マガジン社/1300円

わが夫、大山倍達
amazon
別に極真空手のファンでもなんでもないのであるが、何となく「空手バカ一代」大山倍達の奥さんは彼をどう見ていたのかが知りたくて買ってしまった。なにせ伝説の大山倍達であるからその私生活の実際も知りたかったし。

著者のインタビューをまとめたものだが、本の性格上、ある程度大山倍達ファンが読むであろうことを前提として書いてある。
だからボクみたいな素人にはちょっとわかりにくい箇所があった。でも、大山智弥子というキャラクターがそんなことを全く気にさせないくらい魅力的なのである。そういう意味では全く突っ込みが足りないインタビューで歯がゆいばかり。題材はいいのに構成が悪い典型かもしれない。

1997年10月01日(水) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:自伝・評伝 , スポーツ

LV2「消えたマンガ家」

大泉実成著/太田出版/800円

消えたマンガ家
amazon
漫画界のタブーらしいのである。あのマンガ家は何故消えたのか。どうして消えなければならなかったのか。大手出版社のあまりにも非人間的なそのシステム。タブーらしいのである。タブーなら太田出版。なるほど面白かった。

「キャプテン」のちばあきお、「幽☆遊☆白書」の富樫義博、「マカロニほうれん荘」の鴨川つばめ、あの山田花子に伝説の徳南晴一郎……なぜ才能も人気もあった彼らは忽然と消えたのか。それをきっちり検証している。
題材よし。視点新鮮。取材ご苦労。ただここまで来たらもう少しスキャンダラスさを前面に押し出しても良かったのではないか。なんとなく読後感が物足りない。

1997年06月01日(日) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:ノンフィクション , 漫画

LV3「ニッポン居酒屋放浪記」

太田和彦著/新潮社/1545円

ニッポン居酒屋放浪記
amazon
著者による「居酒屋大全」「精選・東京の居酒屋」に続く三部作完結編。完結編と言っても別に完結しているわけではないが。

ウェットで格調ある文体を持つ居酒屋探訪記の巨匠は健在である。
今回は地方での飛び込み取材を敢行しているがその「鼻」は相変わらず絶好調。一緒にぴたっと来る居酒屋を探している気分になり、なかなかスリリングだ。いい居酒屋を探しいい時間を過ごす旅。これが人生と重なって見えてくるところがこの著者と「グルメ評論家」の違い。文体と姿勢と人生観の違いである。

1997年04月01日(火) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:食・酒 ,

LV0「うまいもの・まずいもの」

東海林さだお・尾辻克彦・奥本大三郎著/リテール・ブックス

うまいもの・まずいもの
amazon
題名に惹かれて買った。
3人の「うまいもの・まずいもの」というお題の対談をそのまま本にしてある。

目新しい情報提供というよりは、雑談に近い感じ。でもこういった雑談本の存在価値は実はもう終わっているのかもしれない。雑談対談であればテレビの方が面白いのである。こういったものを安易に出版するから活字ばなれがおきるのではとすらボクは思っている。面白くない対談でもテレビなら間が持つが、本だとちょっと腹が立つかも。テーマを新しくするとか工夫をしなくてはたまらない。もしくは、椎名誠他が「本の雑誌」で繰り広げる対談を見習うべきである。読み物としてしっかり面白くして発表している。そういう意味でこの本は努力が足りない気がする。毒舌慧眼評論家安原顕の編とも思えない中途半端さである。ちょっと残念。

※リテール・ブックスの本が絶版ぽいので、中央公論新社の本にリンクしました。

1996年11月01日(金) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:食・酒 , 対談

ページの先頭に戻る

メニュー

Follow satonao310 on Twitter @satonao310

satonao [at] satonao.com
スパム対策を強化しているので、メールが戻ってきちゃう場合があります。その場合は、satonao310 [at] gmail.com へ。

ページの先頭に戻る

Google Sitemaps用XML自動生成ツール