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「にぎやかな湾に背負われた船」

amazon筒井康隆が帯に「少しほめ過ぎになるが、小生はガルシア・マルケス+中上健次という感銘を得た」と書いている。
とてもよくわかるが、ボクはそれは作者の目指すところではないのではないか、と思う。骨太さは似ているが、もっと軽快でサラリとしている。いくらでも重くどっしり書ける題材なのに、いくらでもややこしく人の性(さが)を入れ込める筋なのに、全体的に「毒みたいなもの」が意識して上手に排除されている。湿度が低い。妙に薄暗さがない。デビュー当時の村上春樹が中上健次的純文学を書いたとしたら、たとえばこんな感じになったかも、というイメージが少しした。イマの気分にとてもマッチする純文学だなぁ。読後、ついに平成の純文学が出た、とすら思った。
ユーモアの存在も大きい。どんなに暗い話になろうとそこはかとなくユーモラスな匂いが漂っている。著者がフランスの現代詩の世界と深く関わっていることもあるのであろうか。
あと、変なイメージかもしれないが、読んでいる最中ずっとブリューゲルの絵を思い浮かべていた。すべての登場人物がブリューゲルの絵のような印象でボクの頭の中に生きていた。あの、ブリューゲル的な細かい絵のような客観性と遠景がそこにあるからだろう。でもってその距離感はボク好みである。ま、早い話、気に入ったのですね。著者の作品はこれからも追ってみたい。
2002年09月01日(日) 12:00:00・リンク用URL
ジャンル:小説(日本)
@satonao310