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「ひとり日和」

amazon芥川賞受賞作。著者24歳の作品である。
芥川賞選考会では、珍しく石原慎太郎と村上龍の意見が合い、同時に激賞したらしい。そりゃ読まざるをえないでしょう。
なんだろう、「イマの気分」についていろんな発見を与えてくれる小説だった。時事小説という意味ではなく、ふんわり捉えがたい「今の若者の意識の流れ」みたいなものを見事に紙の上に定着させてくれた感じ。全体に漂うのはイマが持っている微妙な「薄さ」なんだけど、文章自体は「濃い」のである。薄いものを薄く書いたり、繊細なものを繊細に書いたりするのは意外と難しくない技だと思うのだけど、薄いものを濃く表現したり、繊細なものを乱暴に表現したりするのって、かなりハイブロウな技だと思う。その辺が素晴らしいと思った。あ、この場合の「濃い」は、濃厚な表現という意味ではなくて「感覚に逃げていない」みたいな感じなんだけど。
主人公の「できるだけ皮膚を厚くしていっぱしの人生を生きてみたい」という「うっすらとした望み」が、様々な要素に背中を押されて、ゆっくりとカタチになっていく過程がとってもリアルだ。そして妙に読者を安心させてくれる。この安心感が得難い。また、表現や場面演出の上手さも素晴らしい。情景や季節の描写をここまで好ましく読んだ小説も近来にない。好きかも。
2007年02月23日(金) 23:59:30・リンク用URL
ジャンル:小説(日本)
@satonao310