広告業界が変化しにくい根本的な理由

2013年10月28日(月) 12:49:45

広告マン&ウーマンを相手に「これからの広告コミュニケーション」についての講演をしたとき、こんな質問が40歳くらいの男性から出た。

「おっしゃることを実行するとなると、とても効率が悪い上に手離れも悪くなると思うのですが、それについてはどうお考えですか?」

よくある質問なので、それについてのやり方(精神論も含むw)をご説明さしあげたが、それを聞いてその男性は「わかりました。その通りだと思いますけど、でも、いったい誰がやるんですかね。僕達がやるんですかね」と苦笑した。

その「苦笑」がずっと頭に残っていて、ときおりぼんやり考える。

広告をはじめとしたコミュニケーション領域は、マスメディアからマンメディアへの変化につれて、「生活者との地道なコミュニケーションを毎日じわじわ積み重ねる」という方向にどんどん移行していて、それはとても誠実で丁寧で真摯な手作業が増えていく非効率の世界だったりする。

ただ、大きな問題がある。

性格的に向いてないのだw

コミュニケーション領域のプレイヤーたち(主に広告業界)に、もともと派手好き&おちゃらけ好き、かつ刹那的な性格の人が多いのである。

いや、マジで。
だって、3〜40年前の昔から、伝統的に「お祭り男(女)」ばっかり採用してきたんだもんw、そういうタイプの人が主流すぎるのだ。

というか、マス広告って目立つこと主体のお祭りなので、採用方針はそれで合っていたわけ。
だから広告業界の宴会とかって、派手だよー(特にバブルのころ)。まわりが宴会部長だらけのお祭り男女だらけなんだもん。仕切りはいいしノリは最高。しかも体力重視の徒弟制度。無理でも無茶でも盛り上がる。

ボクは広告業界としてはだいぶ地味な方だが、そんなボクでも他の会社に行くとわりと派手に思われる(ファッションじゃなくて、性格や行動が)。官庁やらに行くとまるでストレンジャーである。いま非常勤理事やっている国際交流基金でも、まぁなんつうか、別世界の人、みたいな扱いだw

そのくらい派手な性格な人が多いうえに、マスメディアだけを長く扱っていた伝統からして「効率と手離れ」を重視してたりする。ワーッと作ってワーッと流してハイオシマイ。マス広告ってそういう瞬間的かつ刹那的な世界だったのだ。だから、「誠実で丁寧で真摯な手作業が増えていく非効率の世界」を知らないし、「非効率」は「悪」だったのである。

ノリはいいし楽しく目立つことは得意だけど、いざ「地味で地道で手離れ悪くて」みたいなことになるとからきし弱い人たち。そういう人たちが集まった場所が広告業界だったりするわけ。

広告業界って頭のいい人も多いから、変化に対する意識変革できてる人はわりと多いとは思う。
でも、彼ら自体が「性格や体質的にそういうのに向いていない」という根本的な問題が結局でかい気がするなぁ。。。

アタマではわかっていても、カラダが拒否する。そんな感じ。

そんな広告業界にも、「シェアード・ビジョン」を書いた廣田周作くんのような、性格的に違う「新しいプレイヤー」がじわじわ増えてはいる。若い広告マン&ウーマンもみんな真面目で地道な人が多い。さすがに採用方針も変わってきたんだろうと思う。

でも、そうなってきているといっても、いままでの「派手好き&おちゃらけ好き、かつ刹那的な性格の人」がその新しいプレイヤーたちに手離れ悪く見える仕事を押しつけるだけだと結局一緒だ。新しいプレイヤーが過労で倒れるのは目に見えている。

うーむ。
超楽しい人が多くて大好きな業界なのだけど、その「超楽しい人が多い」ということ自体が自分たちの足を引っ張るという悪循環。

これは結構根深いと思うなぁ。

佐藤尚之(さとなお)

佐藤尚之

佐藤尚之(さとなお)

コミュニケーション・ディレクター

(株)ツナグ代表。(株)4th代表。
復興庁復興推進参与。一般社団法人「助けあいジャパン」代表理事。
大阪芸術大学客員教授。やってみなはれ佐治敬三賞審査員。
花火師。

1961年東京生まれ。1985年(株)電通入社。コピーライター、CMプランナー、ウェブ・ディレクターを経て、コミュニケーション・デザイナーとしてキャンペーン全体を構築する仕事に従事。2011年に独立し(株)ツナグ設立。

現在は広告コミュニケーションの仕事の他に、「さとなおオープンラボ」や「さとなおリレー塾」「4th(コミュニティ)」などを主宰。講演は年100本ペース。
「スラムダンク一億冊感謝キャンペーン」でのJIAAグランプリなど受賞多数。

本名での著書に「明日の広告」(アスキー新書)、「明日のコミュニケーション」(アスキー新書)、「明日のプランニング」(講談社現代新書)。最新刊は「ファンベース」(ちくま新書)。

“さとなお”の名前で「うまひゃひゃさぬきうどん」(コスモの本、光文社文庫)、「胃袋で感じた沖縄」(コスモの本)、「沖縄やぎ地獄」(角川文庫)、「さとなおの自腹で満足」(コスモの本)、「人生ピロピロ」(角川文庫)、「沖縄上手な旅ごはん」(文藝春秋)、「極楽おいしい二泊三日」(文藝春秋)、「ジバラン」(日経BP社)などの著書がある。

東京出身。東京大森在住。横浜(保土ケ谷)、苦楽園・夙川・芦屋などにも住む。
仕事・講演・執筆などのお問い合わせは、satonao310@gmail.com まで。

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