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広告とは「アウェイの技術」

2013年6月 7日(金) 15:07:39

7月より始める「さとなおオープンラボ」に応募していただいた方々の200通近い書類を弊社美女スタッフたちと必死に読み込んでいます。

その中で気になった質問があったので簡単にお答えしようと思います。

その方の質問を一般化するとこんな風。
「佐藤は電通という広告会社を辞め、いまは広告という領域を感じさせない活動をしているようにみえる。震災支援にしてもSNS上の動き方にしても人と人を結ぶ動きをしているように見える。なのになぜ『広告の基礎』からラボを始めるのか。なぜ『広告』なのか。そこがよくわからない。『広告』という概念が古く感じる」

なぜ「広告」か。
なぜ「広告の基礎」から始めて「コミュニケーション・デザイン」や「ソリューション」をラボで考察していくのか。

それは基本的に「広告はアウェイの技術」だからです。
つまり、広告とは「その情報に興味がない人にこちらを振り向いてもらい、それを知ってもらう技術」だからです。

情報が多すぎてうざいくらいなこの世の中で、新しい情報に触れてもらう、それは邪魔だし迷惑。つまり超アウェイですよね。そう、情報産業にとって今は超アウェイな時代なんです。そんな時代、アウェイでの技術である「広告」は、コミュニケーションの基礎になるものだとボクは考えています。

この質問をくださったのは大手メディアの方です。

新聞やテレビや雑誌などの大メディアは(例外はいろいろあるものの)基本的に「それを読みにきた人に読ませるもの、見に来た人に見せるもの」です。

つまりたいていは「ホーム」なわけです(観客に敵も紛れ込んでますが、基本的にホームです)。

ホームでコンテンツを読ませる/見せるのはそんなにハードルが高くありません。
特に部数が多い新聞/雑誌、視聴率のいい番組は超ホームです。見ようとして来ているのですから好意的に感じてくれるし、共感も与えやすい。

でも、アウェイだったらどうするか。
この辺が、(アウェイ体験が足りていない)"大手"メディアの方に決定的に欠けてる視点だとボクは思います。

ある噺家の方が言ってました。
独演会は楽である、と。

それは「その噺家の落語をわざわざ聴きにきた人を相手にするから」です。
もちろん冷めた人や批評的な人も来ています。でも圧倒的に好意的な人が多い。電車に乗ってお金を払ってわざわざその人の落語を「笑いにきた」んですから、最初からハードルが低いのです。

「でも、寄席は違います」とその噺家さん。

大勢の噺家が次から次へと出てくる寄席は基本的にアウェイなんですね。
その噺家を聴きにきたわけではない。直前の演者によっては場の空気が冷えきっている場合もある。その噺家のアンチも来ている。そういう中で観客をドッと笑わせないといけない。その技術は(同じ落語だとしても)全然違うものだ、と言うわけです。

それと似てるなと思います。

この情報洪水時代、もう生活者は情報に倦んでいます。
その中で、どうやって新しい情報を届けるか。
企業の商品情報に限らず、個人の発信についてもそうです。どうしても伝えたい情報があったら、情報洪水をかいくぐって(そして友人たちの会話をかいくぐって)それをどうやって届けるのか。

それが問われます。
そのための基礎となる技術が「広告」だと思うのです。

「広告」というと大声でうるさくわめいて強制的に聴かせる、というイメージをもっている方も多いかもしれません。実際そういう広告はいまでもたくさんありますね。

でもそれは10年以上前の広告のやり方です。
そんな情報、見たくも聴きたくもないという人に(大声でうるさくわめくのではなく)どうやって「穏やかかつ自然に」情報を届けるか。届けた上でどう愛されるか。それが(特にソーシャルメディア時代には)求められています。

大手メディアの方でソーシャルメディアが不得意という方がわりとたくさんいらっしゃいます(もちろん例外も多いですが)。

ソーシャルメディアは友人たちがつながっている場所ですよね。
たとえばそこに企業やメディアが入っていく。
それって邪魔者なわけです。つまり圧倒的にアウェイなんですね。

そういう場所でうまく振る舞えない大手メディアの方々がわりといらっしゃるのは、、、もうおわかりだと思います。

ホームでしか試合をしたことがない方が多いからです。

ボクはそう思います。

コミュニケーションを考える時、この視点はわりと大事です。
だからラボでは、アウェイの技術、つまり「広告」の基礎から始めようと思います。

そして、超アウェイで情報を届ける方法の進化形としての「コミュニケーションデザイン」や「ソリューション」を追っていきます。

そのうえで「そもそもアウェイをホームに変えちゃう方法もあるんじゃね?」「そもそもホームだけで勝負した方がよくね?」「いやいやピッチすら出ずに観客席でいっしょに盛り上がる方法もあるんじゃね?」「というか観客ひとりひとりに個別に届ける方がよくね?」とかまで考察できたらと思っています。

ボクも正解をもっているわけではありません。
正解がわかった、と思った時点で思考停止に陥るので、それがイヤで正解を探さないようにしている部分があるくらい時代の変化は激しいです。

だから「ラボ(研究室)」です。
ボクの知っていることは話しますが、それはもう古く、間違っていることかもしれません。

今日、↑ で書いたことも、ボクの思い込みかもしれません。
でも発信しないと無だし、自分が成長することもありません。なので、発信するし、ラボもやります。

そんなこって。

佐藤尚之(さとなお)

佐藤尚之

佐藤尚之(さとなお)

コミュニケーション・ディレクター

(株)ツナグ代表。(株)4th代表。
復興庁復興推進参与。一般社団法人「助けあいジャパン」代表理事。
大阪芸術大学客員教授。やってみなはれ佐治敬三賞審査員。
花火師。

1961年東京生まれ。1985年(株)電通入社。コピーライター、CMプランナー、ウェブ・ディレクターを経て、コミュニケーション・デザイナーとしてキャンペーン全体を構築する仕事に従事。2011年に独立し(株)ツナグ設立。

現在は広告コミュニケーションの仕事の他に、「さとなおオープンラボ」や「さとなおリレー塾」「4th(コミュニティ)」などを主宰。講演は年100本ペース。
「スラムダンク一億冊感謝キャンペーン」でのJIAAグランプリなど受賞多数。

本名での著書に「明日の広告」(アスキー新書)、「明日のコミュニケーション」(アスキー新書)、「明日のプランニング」(講談社現代新書)。最新刊は「ファンベース」(ちくま新書)。

“さとなお”の名前で「うまひゃひゃさぬきうどん」(コスモの本、光文社文庫)、「胃袋で感じた沖縄」(コスモの本)、「沖縄やぎ地獄」(角川文庫)、「さとなおの自腹で満足」(コスモの本)、「人生ピロピロ」(角川文庫)、「沖縄上手な旅ごはん」(文藝春秋)、「極楽おいしい二泊三日」(文藝春秋)、「ジバラン」(日経BP社)などの著書がある。

東京出身。東京大森在住。横浜(保土ケ谷)、苦楽園・夙川・芦屋などにも住む。
仕事・講演・執筆などのお問い合わせは、satonao310@gmail.com まで。

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