新しい風穴になるといいな

2011年10月19日(水) 9:33:35

新しいプロジェクトを始めました。

ボクたちがこの時代を生きていくとき、どうしても避けて通れない「原発事故問題」についてのプロジェクトです。

ボクは基本的に原発反対の立場を取ります。
ただ、原発稼働を前提に国の経済が動いている以上、「過渡期」はあるだろうとも思っています。また、単純に賛成・反対では割り切れない諸々の事情があることも多少は理解しているつもりです。

ひとつ確かなことは「もう避けて通るわけにはいかないのだ」ということ。

この時代を生きていく以上、放射線、モニタリング、除染、というような言葉と、これから何十年とつきあっていかなければならないのだろう。もう「○○が悪い!」「けしからん!」と批判していれば済む問題でもなく、それぞれが真っ正面から向き合って、当事者意識を持って生きていかなければならないのだろう、みたいなこと。

それはとてもイヤなことです。超面倒。
でも起こってしまったことを嘆いていても何も変わらないので、とにかく向き合う。個人的にはそう決めました。

そう考えて、じゃあまずは原子力についてちゃんと理解しよう、と、改めて調べ始めたのですが、まぁなんというか、本当に「わかりにくい」ですね。
何度も読んで理解したつもりになっても、すぐわからなくなる。そしてどうやら「正解がない」。いろんな説が飛び交っていてよくわからない。だから風評にもすぐ惑わされてしまう。

もちろんボクの理系脳がお粗末なせいもあるけど、でも、もし多くの人がこんな状態であるならば、そりゃ風評被害も起きるよなぁ、止まらないよなぁ、と実感しました。

実際「京都五山送り火に陸前高田の薪を使う使わない問題」とかでも、「ええと、どうだっけ?」と、またわからなくなったりしました。理解しているつもりでも、なんだかよくわからないグレーな部分がある・・・

いろんな学者がいろんな説を主張しているくらいだから、きっと正解はないのでしょう。
でも、自分の中に基準や基礎をもたないと、またすぐ風評に惑わされる。大声で騒ぐ人やメディアの声に惑わされて冷静に判断できなくなる・・・

そんな「ぼんやりと居心地悪い感じ」をもっていた8月に、細野原発事故担当大臣と話す機会がありました。

原発事故以来の政治不信などもあり、まぁいろいろと不信顔で訊ねたわけだけど、彼は真面目にひとつひとつ答えてくれました。
そして、「事故当初の対応が遅れて後手後手にまわってしまって申し訳なかったが、いまでは政府が掴んでいる情報はすべて即時に公開しているし、ひとつも隠していることはない。少なくとも私が知る限りのことはすべてオープンにしている」と言い切りました。

それをそのまま信じるほどお前はバカなのかって?
いえ、信じたわけではありません。でも、ずいぶん改善はされてきているようには思いました。文科省からは詳細なモニタリング・データがCSVで公表されるようになったし、環境省も除染情報について詳しく公表しています。原発事故当時は東電も含めて裏でコソコソ何かあったかもしれませんが、今後重要になるモニタリングや除染についてはかなり透明に物事を進めようとしているようです(少なくともモニタリングと除染についてはボクにはそう見えました)。

でも、その姿勢すら国民には伝わってません。公表しているデータについても(各省のわかりにくいところにわかりにくく置いてあるだけなので)、ほとんど知られていません。相変わらず国民は「どうせ隠している」と疑っているし、政府・省庁側も「何を言っても信用されない」と悲しい顔しているだけ。

この溝はきっと埋まらないだろうけど、この時代を生きる当事者として少しでも何かできることはないだろうか。

これがこのプロジェクト発足の第一歩目です。

まず、政府がどう言っているのか、公表されているモニタリング・データや除染情報をどう読み取ればいいのか、それを知りたいと思いました。いろいろ説がある中でどうしてそういう判断を政府が下したのか、ちゃんと知りたいと思いました。

政府が考えていることを知らないと正しい批判もできません。「どうせ隠してるんだろう」と疑うだけでは、いつまでたっても前を向いて進めません。もちろんマスコミもいろいろ報じています。でも、直接、国民が大臣や省庁や専門家に聞いていく「新しい風穴」は作れないだろうか。

細野大臣は快諾してくれました。
「私が知っていることはすべて答えます」と。

だったらまずは聞いてみよう。
不安に思うことをすべて聞いていこう。ボクたちが聞くだけでなく、福島の主婦から都会のサラリーマンまで、直接細野大臣に会ってもらって、どんどん質問してもらおう。大臣だけでなく、省庁や専門家たちにもいろいろ聞いていこう。

その風穴が「MOJO 原発担当大臣連携『民間』プロジェクト」です。
MOJOというのは、モニタリングの「モ」と除染の「除」をくっつけて呼びやすくした名称です。正式名称は「モニタリングや除染のことを、大臣や省庁や専門家たちにいろいろ聞いてくるページ」です。

ボクたちも聞きますが、いろんな方にも聞いてもらいます。
第一弾はジャーナリストの佐々木俊尚さん。情報公開の観点から細野大臣にいろいろ質問してくれました。MOJOページの「スペシャルインタビュー」というコーナーからご覧になれます(ページの左側にメニューがあります)。細野大臣が果たして信用できる人なのかどうか、直接ノーカットでご覧くださり、判断してください。

ちなみに、モーとジョーというキャラを作っています。
彼らの役割は「わからないことをとにかく聞きまくること」。超基礎的なこと、たとえば放射能と放射線の違い、シーベルトとベクレルの違い、セシウムって結局なに?、風に乗って飛んでこないの?とか、放水で本当に除染できるの?とかの質問を、われわれを代表して専門家に聞き、誰でも(ガチガチに文系のボクでも)理解できるように短い動画コンテンツにしていこうと考えています。

あえてテーマを「モニタリング」と「除染」に限っているのは、過去のあれこれを掘り起こすより、これからのことの方が大切だからです。モニタリングと除染は、これから数十年にわたる最重要課題。それについて「ただしく知って、ただしく怖がる」ことが大切だと考えたからです。

きれいごとだろう、どうせ政府の片棒担ぎだろう、政府広報かよ、政府が正しい情報を出すわけがない、など、いろいろなことを思われるかもしれません。

でも、もともと「やらないよりマシ」論者であるボクとしては、こういう小さな風穴でも開けないよりは開けた方がマシだと考え、共感してくれた大切な仲間たちと一緒に一歩踏み出すことにしました(「助けあいジャパン」とはまた別のプロジェクトです)。

非常にセンシティブなテーマなのでずいぶん逡巡しましたが、冒頭で書いたように、避けて通れない問題です。子供がいる身としても、ただしく知って、ただしく怖がりたい。そんな思いで一歩ずつ進みます。

メンバー全員、本業を他に持ってのボランティアです。
ですので、少しずつしか風穴を大きくできませんし、更新も頻繁にはできません。でも、ゆっくり粘り強くやっていきたいと思っています。

ご理解をよろしくお願いします。

p.s.
手伝ってくださる方、若干名募集中です。とくに事務局的な部分で手が足りておりません。
※たくさんのお申し出、ありがとうございました。ご連絡するまでもう少しお待ちください。

佐藤尚之(さとなお)

佐藤尚之

佐藤尚之(さとなお)

コミュニケーション・ディレクター

(株)ツナグ代表。(株)4th代表。
復興庁復興推進参与。一般社団法人「助けあいジャパン」代表理事。
大阪芸術大学客員教授。やってみなはれ佐治敬三賞審査員。
花火師。

1961年東京生まれ。1985年(株)電通入社。コピーライター、CMプランナー、ウェブ・ディレクターを経て、コミュニケーション・デザイナーとしてキャンペーン全体を構築する仕事に従事。2011年に独立し(株)ツナグ設立。

現在は広告コミュニケーションの仕事の他に、「さとなおオープンラボ」や「さとなおリレー塾」「4th(コミュニティ)」などを主宰。講演は年100本ペース。
「スラムダンク一億冊感謝キャンペーン」でのJIAAグランプリなど受賞多数。

本名での著書に「明日の広告」(アスキー新書)、「明日のコミュニケーション」(アスキー新書)、「明日のプランニング」(講談社現代新書)。最新刊は「ファンベース」(ちくま新書)。

“さとなお”の名前で「うまひゃひゃさぬきうどん」(コスモの本、光文社文庫)、「胃袋で感じた沖縄」(コスモの本)、「沖縄やぎ地獄」(角川文庫)、「さとなおの自腹で満足」(コスモの本)、「人生ピロピロ」(角川文庫)、「沖縄上手な旅ごはん」(文藝春秋)、「極楽おいしい二泊三日」(文藝春秋)、「ジバラン」(日経BP社)などの著書がある。

東京出身。東京大森在住。横浜(保土ケ谷)、苦楽園・夙川・芦屋などにも住む。
仕事・講演・執筆などのお問い合わせは、satonao310@gmail.com まで。

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