被災地の現状は刻々と変化している

2011年4月 6日(水) 13:05:53

民と官を連携させて、なるべく正確な情報を提供しようとしている「助けあいジャパン」であるが、いま大きくリニューアルしようと(またまた)突貫作業を進めている。

まだ起ちあげて2週間程度。
でも、状況の変化によってフレキシブルに対応していくのが「永遠のベータ版」のこのサイトだ。

もともと「必要な情報が必要な場所に届いていない」という阪神大震災の被災経験からこの民間プロジェクトを始め、たくさんの素晴らしい方々のご協力を得て進んでいるが(この辺の経緯は日本経済新聞の記事朝日新聞の記事にもなった。両方ともとてもわかりやすくまとめてくれている)、なによりも今ネックになっているのが「現地からの情報が予想以上に入らない」ということである。

これは、一緒にやっているメンバーの藤代さんも書いているが、「(被災地が)一般のボランティアを受け入れたり、活動したりできる状況が、いまだに整ってない」ということが大きい。情報発信ができる状況の前で止まっているのである。

阪神大震災も被害は大きかったが、なんといっても大阪から徒歩や自転車で入れる距離であった。
だから、ボランティアも容易に入れたし、都市部の被害だったので情報発信体制が整わない反省もイメージしやすかった。その反省を元に、311直後にサイトを超突貫工事で作ったこともあり(その突貫イメージは石川淳哉さんのブログにくわしい)、基本的に「被災地から情報が入ることが前提の作り」になっている。

ところが、今回の東日本大震災は規模が違った。
超広域かつ物資が届きにくい奥地まで広がっている。情報拠点となるべき自治体自体が大被害を受け、役場が流されて消滅してしまった町も多い。被災フェーズもまちまちで、まだご遺体回収フェーズの町もある一方で、仮設住宅を建て始めている町もある。被災者が疎開した先も各地に広がる。地元自治体や社協、災害ボランティアセンターなども前例のない事態への対応に精一杯で過労を重ねている。情報を出す暇も手間もない。即座に動いたNPOやNGOも現地作業で手一杯だ。

実は物資も現地の物流拠点にはもうとっくに届いている場合が多い。
でも、そこから奥に毛細血管状に広がった各地との連携が取れていない。現地の自治体や社協、ボランティアセンターが日々の作業や差配で精一杯で人手が足りないからである。じゃあその人手を県外ボランティアでさばけばいいと思うのだが、その人手を差配している時間すらないという。だから素人ボランティアが大挙してきても指導もできない。ボランティアに対する偏見も多少あるようだし、地域の絆がとても強い地域が多いのでその絆内で助け合おうとして結果的に閉鎖的になっている場所もあるという。ボランティアを送り込む都内NPO・NGO拠点も、人手不足で機能できていないと聞く。

国は国で地方自治に協力する立場なので、地方自治体や社協が望まなければ基本的に動けない。そして自治体は「県内(地域の力)で出来る」と言い切って自力でがんばってしまっている。こういうときに地域の意向を無視するのはありえないので動きが取れない。独立性の高いNPO・NGOにも国は関与なんか当然できないしするべきでもない。なんだかとても悪いスパイラルに陥っている。

「助けあいジャパン」では、被災地の正確なニーズを、官(自治体)およびNPO・NGOなども含めて入手できることを前提に、そこにソーシャルメディアからの情報も合わせて情報提供しようとずっと体制を作ってきた。突貫でコールセンター的な「ボランティア情報ステーション」を作り、学生ボランティアが常に待機している。

このステーションは、今現在は「ボランティア需要」をこちらで探してどんどん入力していってデータベースを作り、APIで吐き出している。それは「Yahoo! 復興支援」の右側、「被災地を支援されたい皆さまへ」の「現地発 ボランティア(NPO・NGO等)情報ホットライン」に提供されている。

「助けあいジャパン」が入れた情報が「Yahoo! Japan」にオフィシャルに使われているというのは光栄だ。これは藤代裕之チームのすさまじい努力のたまもの。神奈川災害ボランティアネットワークも全面協力してくれている(他の地域でも希望団体があれば説明会を行います)。そしていつでも被災地ニーズ情報を入力できる体制になっている。

また、政府・省庁などからの情報で有益なものも、福井秀明チーム(コピーライター4人のチーム)がピックアップし、リライトして提供している(「政府・省庁などからの最新情報(助けあいジャパンしらべ)」)。
各省庁が発表した役に立つ情報はいままで各省庁サイトのわかりにくい場所に発表してあるだけだったが、それらを(内閣官房と連携して)ピックアップして、「助けあいジャパン」サイト上で提供しているのである。これも(探す作業も含めて)毎日毎日の作業なので大変だ。


と、体制を作り、「いまできる範囲での情報提供」は毎日進めているが、なにより一番必要な「現地情報」が入らない。

なので、もう待つのはやめて出来る範囲で取りに行き、もっと独自の情報発信を強める方向にリニューアルをはかっている。

官との連携として、現地を動き回っているスタッフから、もっと生の情報をレポートしてもらう。
現地の方のブログなどから定期的に報告を送っていただく。
遠隔地(東北以外)にいても出来ることをもっとわかりやすく整理して提供する。
関心を風化させず、大震災を過去のものにしないようにコンテンツを工夫する。
いろんな人々の善意がもっと届くようにする。

などなど。
これらの気の遠くなるような作業を、しょこらチーム、佐藤澄子チーム、石川淳哉チーム、加藤雅章チームなどに分かれて動き、ツイッターフェイスブック担当チームやシステムチームとも連動して動いている(もちろんループスチームも健在)。他にも協力いただいている方々は100名以上(そのうち全員が出ているページができます)。なんだかプロジェクトXみたいになってきた(例が古っ)。

一方で、細かい現地ニーズなどが上がってくることを前提に体制をより整え、現地メディアなどとの連携をはかる準備も藤代裕之チームを中心に探っている。

ただ、これらの体制も「いま」のこと。
被災地の現状は刻々と変化している。それに対応して常に変化をし続けなければならないだろう。


そういう意味で、この民間プロジェクトは、もしかしたら数年体制のものになるかもしれない。
いまはまだその最初のたった数週間である。

連休を過ぎ、夏休みを過ぎ、と、時が経つにつれどんどん人々の関心が減り、この大震災は過去のものになっていくだろう。
でも、被災者にとって、まだまだ長い長い闘いの始まりに過ぎない。キレイゴトを言う気はないし、ボク自身も息切れしないように等身大でじっくりやりたいと思うが、彼らにとっては本当に長丁場。そして一度関与すると決めたボクらにとっても長丁場のプロジェクトになる。


今回、ソーシャルメディアはいろんな部分で機能したと思うが(過大評価もしないし過小評価もしない)、ポイントは、日本を含め、世界中の多くの人々と「当事者意識を共有できたこと」だとボクは思う。

テレビのこっち側で傍観しているのではなくて、あっち側の当事者意識を共有できたことが、ソーシャルメディアの一番の意義だったのではないかと思う。

今度はその当事者意識を、この長丁場で「どこまでキープできるのか」が問われている。この先、「共感」と「つながり」で社会が再編成されるとするなら、その真のチカラが試されることになるだろう。

それを信じて、トライしつづけてみたいと思う。
みなさま、長いスパンでのご協力を、どうぞよろしくお願いします。

佐藤尚之(さとなお)

佐藤尚之

佐藤尚之(さとなお)

コミュニケーション・ディレクター

(株)ツナグ代表。(株)4th代表。
復興庁復興推進参与。一般社団法人「助けあいジャパン」代表理事。
大阪芸術大学客員教授。やってみなはれ佐治敬三賞審査員。
花火師。

1961年東京生まれ。1985年(株)電通入社。コピーライター、CMプランナー、ウェブ・ディレクターを経て、コミュニケーション・デザイナーとしてキャンペーン全体を構築する仕事に従事。2011年に独立し(株)ツナグ設立。

現在は広告コミュニケーションの仕事の他に、「さとなおオープンラボ」や「さとなおリレー塾」「4th(コミュニティ)」などを主宰。講演は年100本ペース。
「スラムダンク一億冊感謝キャンペーン」でのJIAAグランプリなど受賞多数。

本名での著書に「明日の広告」(アスキー新書)、「明日のコミュニケーション」(アスキー新書)、「明日のプランニング」(講談社現代新書)。最新刊は「ファンベース」(ちくま新書)。

“さとなお”の名前で「うまひゃひゃさぬきうどん」(コスモの本、光文社文庫)、「胃袋で感じた沖縄」(コスモの本)、「沖縄やぎ地獄」(角川文庫)、「さとなおの自腹で満足」(コスモの本)、「人生ピロピロ」(角川文庫)、「沖縄上手な旅ごはん」(文藝春秋)、「極楽おいしい二泊三日」(文藝春秋)、「ジバラン」(日経BP社)などの著書がある。

東京出身。東京大森在住。横浜(保土ケ谷)、苦楽園・夙川・芦屋などにも住む。
仕事・講演・執筆などのお問い合わせは、satonao310@gmail.com まで。

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