近い目標設定をしてハードルをひとつずつクリアしていく

2010年12月 4日(土) 11:11:48

今年のノーベル化学賞に選ばれた根岸英一さんがこんな意味のことを言っていた。

「20世紀に生きて死んだ人の数と過去の受賞者数から、ノーベル賞に選ばれる確率は1000万分の1になる。低すぎて宝くじに当たるような確率に思えるが、1000万は10を7回かけ合わせた数。10人中1位になる経験を7回繰り返すと考えればいい」

まぁ10の7乗なので、10人中1位を別個に7回やるのではなくて、10人中1位になって上のグループに行ってまた10人中1位になって、という繰り返しをしないといけない。上のレベルに行くたびに競争は大変になるので生半可ではない。でもそうやって近い目標設定をしてハードルをひとつずつクリアしていく、というのは有効な手段だよね。

ノーベル賞の話と比べる気もないが、ボクも似たような「近い目標設定」をわりとする。

たとえば本を執筆するとする(小説ではなく新書みたいなやつ)。
本を書くって(経験ある人はみんな同意してくれると思うけど)本当に大変な作業。「こんなことを書きたい」という展望を漠然と持っていたとしても、いざ一行目から書き出してみると、なんというかその果てしない感じに呆然とし途方に暮れるのだ。これはね、本当に途方に暮れる。そしていきなり挫ける。自分にはムリだと諦めてしまう。まぁ仕事も忙しいしとか自分に言い訳をしだす。

そういうときは、近い目標設定をするのが有効だ。

ボクの場合、まず仕事脳から文章脳に戻すために、大量の文章を書くことを自分に課すところから始める。
ボクはこの「さなメモ」を毎日書いているので書く習慣自体はあるのだが、10万字からの文章を書くためにはそれだけでは足りない。ハードルを上げないといけない。スポーツでいったら「アップ」みたいなもの。軽いストレッチを終えてちょっと激しい準備に入っていく感じ。まぁ2週間でいいから、とにかく量を書く。常に(モニターで書く人は)モニターに向かう。書き殴る。ブログみたいに発表する文章じゃなくていい。とにかく書き殴る。

で、だんだん書き慣れてきたら、次の目標としては、書きたいテーマについて人に話してちゃんと伝わることを目指す。これは講演が一番いいが、そうでない場合は誰か身近な人に聞いてもらうことだ。

人に伝わるように話すことは考えをまとめることとイコールだ。そして論旨展開における瑕疵も見えてくる。Q&Aで論が鍛えられたり気づきを与えられたりもする。ブログやソーシャルメディア上に書いてもいい。不特定多数に対してあるテーマについての文章を公表するのはそれはそれは勇気がいること。でもいろいろフィードバックがもらえ、自己満足や自己中展開を正すことができる。逆に、自分の論が貧弱なことに気づき「心が折れる」可能性もあるけどねw

この時点で果てしないと思っていたゴールが少し近く見えてくる。
こういう展開をすれば人に伝わりやすいかも、という気づきもたくさんある。構成自体、いやテーマ自体が変わることが多いのもこの時点。あのときあの人に話さなければいったいどんな失敗作になったんだろうとゾッとしたりする。

次の目標は「とりあえずまえがきを書き終わってみる」かな。
この導入部の書き方は目次に影響する。全体の文体にも影響する。そしてなにより「伝えたい相手を規定する」ことができる。誰に向かって書くのか。この設定が具体的になる。これをクリアしないまま本文にとりかかると、伝えたい人が漠然としている分、内容も漠然としてしまう。

こんな感じで「近い目標設定」をクリアしてきてみると、実はもうかなり「出来上がっている」。「まえがき」は書き終わっているし、伝えたい相手の設定も具体的に出来ているし、章構成や論旨展開も出来上がっている。あとは「やる気」次第。まぁこれが一番難しいんだけど(笑)、でもゴールは見えているからやる気も起こしやすい。それでも起きない場合、友人に宣言するのも有効だ。何月何日までに書き終わる!ってね。

ええとですね、まぁもう想像ついたとは思いますが、執筆に入っています(笑)

上記で行ったら第三段階。今日から「とりあえずまえがきを書き終わってみる」という目標のクリアに取り組む感じ。この目標をクリアすると全体像がはっきりと見えてくるはず。

さっき和田裕美さんとツイッターのDMで話してて、偶然「脱稿予定日がほぼ一緒」&「脱稿予定日まで1ヶ月ちょいなのにまだ1ページも書いていない」という状況が一緒なことが判明した(ダイジョウブか?)。辛い。ヤバい。ムリっぽい。でもそこは陽転思考、「じゃぁ脱稿日の夜に一緒に美味しいご飯を食べよう」と決まった。お互いに「その日までに書き終わる!」って宣言したわけですね。

さて、ここまで整えたらもう逃げられないw がんばろう。

佐藤尚之(さとなお)

佐藤尚之

佐藤尚之(さとなお)

コミュニケーション・ディレクター

(株)ツナグ代表。(株)4th代表。
復興庁復興推進参与。一般社団法人「助けあいジャパン」代表理事。
大阪芸術大学客員教授。やってみなはれ佐治敬三賞審査員。
花火師。

1961年東京生まれ。1985年(株)電通入社。コピーライター、CMプランナー、ウェブ・ディレクターを経て、コミュニケーション・デザイナーとしてキャンペーン全体を構築する仕事に従事。2011年に独立し(株)ツナグ設立。

現在は広告コミュニケーションの仕事の他に、「さとなおオープンラボ」や「さとなおリレー塾」「4th(コミュニティ)」などを主宰。講演は年100本ペース。
「スラムダンク一億冊感謝キャンペーン」でのJIAAグランプリなど受賞多数。

本名での著書に「明日の広告」(アスキー新書)、「明日のコミュニケーション」(アスキー新書)、「明日のプランニング」(講談社現代新書)。最新刊は「ファンベース」(ちくま新書)。

“さとなお”の名前で「うまひゃひゃさぬきうどん」(コスモの本、光文社文庫)、「胃袋で感じた沖縄」(コスモの本)、「沖縄やぎ地獄」(角川文庫)、「さとなおの自腹で満足」(コスモの本)、「人生ピロピロ」(角川文庫)、「沖縄上手な旅ごはん」(文藝春秋)、「極楽おいしい二泊三日」(文藝春秋)、「ジバラン」(日経BP社)などの著書がある。

東京出身。東京大森在住。横浜(保土ケ谷)、苦楽園・夙川・芦屋などにも住む。
仕事・講演・執筆などのお問い合わせは、satonao310@gmail.com まで。

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