外は白い雪の夜

2010年2月 2日(火) 8:00:37

♪雨は夜更け過ぎに雪へと変わるだろう

…って、夜更けって何時頃なんだろうね とか隣に座った同僚と話し合った昨日、東京地方は夜更け過ぎに見事な大雪となった。

大運が変わった第一日目とはいえ、特についているということはなく、来週のレストラン予約を断られ、今週ののんびり出張の予定が激務出張に変化し、単行本掲載予定の店には掲載を断られ、そして仕事も予断を許さぬ緊張状態になった。まぁでも仕方ない。なるようになるべと20時前くらいからふたりで食事に出た。

ボクはタマネギが大好きなのだが、店のメニューに「タマネギのオーブン焼き」という魅惑的なメニューを見つけ(ちなみに麻布の有名店ではなく、目黒のカジュアルなワイン・レストラン)、「あ、これ!」と注文しようとしたら「はい、ありがとうございます。丸ごと焼きますのでお時間たっぷりいただきますがよろしいですか?」と言われ、まぁ数十分だろうと予想したら、なんと「1時間半いただきます」とのこと。まぁ考えてみればそのくらいかかってもおかしくないけど、1時間半とはなぁ…。

でも意外とそこからの1時間半がシアワセだった。
タマネギにゆっくりゆっくり火が通っていくのを想像しながらワインを飲む。確実にオイシイコトが起こるとわかっていて待つのは楽しいな。いやはや美味かった。待ってる間のお楽しみのもうひとつが、お隣に座ったお客さんが鞄に入れて連れてきていたジャックラッセルの仔犬(写真)。まだ4ヶ月だって。超・超・超かわいい。キミは生きてるだけで周りにシアワセを振りまいているね。

22時頃に店を出たときはまだみぞれっぽい雪模様。
でも東京の交通網は雪に極端に弱いので早めに帰ることにして解散したのだけど、電車に乗った頃から本格的な雪に変わり、激しく降り始めた。おお…。雪が降るとなんだかワクワクするこのワンコ体質。ひとりでもう一軒だけ寄って帰ることにした。大森のバー「テンダリー」へ。

池澤夏樹の「スティル・ライフ」だったかに、雪が降っているのではなく雪片で満たされた宇宙を僕らが上へ上へと昇っていくのだ、みたいな描写があったが、まさしくそんな感じがする雪の中。凍えながら歩いてバーに向かう。

雪を払って席に着くと、名バーテンダーの宮崎優子さんが「さとうさん、ラフロイグはお好きでしたっけ?」と聞く。シングルモルトはクセが強い方が好きだけど、ラフロイグももちろん好き。そう答えたら、なにやらサササと作って出してくれた。

ラフロイグの塩昆布お湯割り。

お湯に塩昆布を入れてちょっとだけ待った後、上からラフロイグを注いで掻き混ぜたもの。チェイサーも水ではなく塩昆布入りのお湯にしてくれ、「はい、どうぞ」と出してくれた。うわっ意外。…でもこれって雪景色にとても合いそうだ。

壁全面に大きく切り取られた窓からはこれでもかと降る雪が見える。家路を急ぐ人の丸まった背中が見える。
小洒落たカウンターバーだしBGMもジャズなのだけど、窓外を眺めながらしんみりお湯割りを飲んでいると、なんだかちょっと八代亜紀の「舟唄」的な世界観が忍び寄ってくる。だんだんと年末の日本海沿岸の雪深い小都市にいるような気分になってくる。日本人だなぁ(笑)。

ちなみにこのお湯割り、飲み始めもうまいけど、飲み終わる頃に特に威力を発揮する。ラフロイグと昆布ダシが絶妙な相性を見せるのだ。「上質な塩昆布じゃないとこの味は出ません」とは宮崎さん。いやぁうまいな。ピートの香りと汐の香り。なんとも雪に合うではないか。こういう飲み方は日本人しか思いつかないだろうね。

心まで温まったので、一杯で締めて外に出る。東京的には大雪だ。
これ、明日の朝、道が凍るかもなぁ。受験生は大変だなぁ(2月1日2日は東京では中学受験日なことが多い)。そうか、ムスメの受験から3年か。あの日は緊張したな…。

みんな雪で早く帰ったのか、帰り道は人影まばらだった。家の前の小道は誰も足跡を残していない未踏の地。真っ白な道に黒い足跡を残して歩く。なんでこんな他愛もないことが楽しいのだろう。
家に着いたらまだムスメが起きていたので「雪の中を散歩に行こう!」と誘ったが、「寒い」と軽く断られた(笑)。仕方ないから「外は白い雪の夜」(by 吉田拓郎)を聴いたりして雪気分に浸り、少しウェットな気分になりつつ就寝。

昨日はそんな第一日目だった。さりげなくも、なんだかとてもいい一日だったと思う。

佐藤尚之(さとなお)

佐藤尚之

佐藤尚之(さとなお)

コミュニケーション・ディレクター

(株)ツナグ代表。(株)4th代表。
復興庁復興推進参与。一般社団法人「助けあいジャパン」代表理事。
大阪芸術大学客員教授。やってみなはれ佐治敬三賞審査員。
花火師。

1961年東京生まれ。1985年(株)電通入社。コピーライター、CMプランナー、ウェブ・ディレクターを経て、コミュニケーション・デザイナーとしてキャンペーン全体を構築する仕事に従事。2011年に独立し(株)ツナグ設立。

現在は広告コミュニケーションの仕事の他に、「さとなおオープンラボ」や「さとなおリレー塾」「4th(コミュニティ)」などを主宰。講演は年100本ペース。
「スラムダンク一億冊感謝キャンペーン」でのJIAAグランプリなど受賞多数。

本名での著書に「明日の広告」(アスキー新書)、「明日のコミュニケーション」(アスキー新書)、「明日のプランニング」(講談社現代新書)。最新刊は「ファンベース」(ちくま新書)。

“さとなお”の名前で「うまひゃひゃさぬきうどん」(コスモの本、光文社文庫)、「胃袋で感じた沖縄」(コスモの本)、「沖縄やぎ地獄」(角川文庫)、「さとなおの自腹で満足」(コスモの本)、「人生ピロピロ」(角川文庫)、「沖縄上手な旅ごはん」(文藝春秋)、「極楽おいしい二泊三日」(文藝春秋)、「ジバラン」(日経BP社)などの著書がある。

東京出身。東京大森在住。横浜(保土ケ谷)、苦楽園・夙川・芦屋などにも住む。
仕事・講演・執筆などのお問い合わせは、satonao310@gmail.com まで。

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