映画「すべては海になる」
2010年1月25日(月) 7:49:53
おっと、ずいぶん前に「感想は後日」と書いたままになっていた映画「すべては海になる」の感想を書きそびれているうちに公開日過ぎてしまった。おとといの土曜日が初日であった。
完成試写会に行ったのは11月のこの日。
原作・脚本・監督をすべてこなした山田あかねさん(映画初監督)からお知らせをいただき、観てきたのであった。まだお会いしたことはなく、メールで何度かやりとりしただけだが、前に読んだ「まじめなわたしの不まじめな愛情」は面白かったし、「もしも、この世に天使が。《青の章》 」
も良かった。この映画の原作「すべては海になる」
は映画を観た後すぐ買ったのだが、まだ読めてない。年末は仕事で大嵐だったので。
完成試写会だったので舞台挨拶があった。挨拶したのは主演の佐藤江梨子と柳楽優弥、そして山田あかね監督。
サトエリの抜群のスタイルに見とれ、柳楽くんの天然トークに笑い、山田監督の理知的コメントに頷き、なかなか楽しい舞台挨拶だった。しかし、マジで柳楽優弥ってそういう系なんだなぁ。まだ19歳かぁ。先日結婚したよね。どんどん人生が前倒しになっている人だ(14才でカンヌ国際映画祭最優秀主演男優賞だし)。でも、彼はたぶん50才くらいになった方が味のある俳優になると思う。
で、本編。
リアルをリアルに描こうとした感じの映画で、特に盛り上がりもないのだけど、ハリウッド的「早わかり映画」がそんなに好きではないボクとしてはいろいろ考えさせられて良かったと思う。注意深く見つめないと本質が見えてこないような映画なので、思索型の人にはとてもいいと思う。「別にベストセラーにならなくても、どこかにいる誰かが感動してくれた方がいい」みたいなセリフが映画中にあったが、まさにそれを狙っているような映画である。誰か少数の胸に深く届くことを狙いつつ、人気主演俳優を使って大きく網を投げてみた、という感じだろうか。
書店に勤める「愛がわからない女」佐藤江梨子と、崩壊寸前の家庭をひとりで立て直そうとしている高校生、柳楽優弥。このふたりが近づいていく過程を丹念に拾いながら物語は進んでいく。
いろんなエピソードが重なるので、ストーリーは複雑なのだが、それをスッキリまとめて2時間飽きさせなかったのはなかなかの力技。テーマに近づいたと思ったら遠ざかり、遠ざかったと思ったらまた近づいて、というような波に翻弄されている感じも上手だった。
劇中劇「小島小鳥の冒険」が面白い。そしてこの映画の重要なテーマになっている。そして、この映画自体が反「小島小鳥」になっているのがイイ。あと、個人的には、フェイバリットな「ガープの世界」への言及がわかりやすかった。考えすぎかもしれないけど、「ガープ」の中の劇中劇とかぶさって、ボクの中では納得感があった。
賛否が分かれるのはラストシーンかなぁ。原作・脚本・監督をすべてひとりがやった「思い入れ」が画に出てしまっている印象。ラストで初めて表題とリンクしてくるのだけど、その辺も多少唐突。伏線がもうちょっと欲しかったかも。このあたり何度も前を読み返せる小説の方が向いているストーリーなのかもしれない。映画は時間軸として後戻りできないから。
なんというか、人生はどうしようもないということを前提に、それでも前を向いて生きていくしかない、というような、苦いような爽やかなような不思議な後味が残って面白かった。
お、そうそう、一瞬出てきた吉高由里子が実に良かった。この子、女優として大化けする気がする。
