井上雄彦「プロフェッショナル」
2009年9月16日(水) 8:54:29
まだ自分の中でうまく消化(昇華)できていないけど、昨晩のNHK「プロフェッショナル」はとても刺激的だった。出演は井上雄彦。
彼と自分を比べるなんて傲慢だということはわかってはいるものの、彼のことを思うたび、自分がいかに「楽な道」を歩んでいるかを思い知らされる。あまりに差がありすぎて自分が惨めになるので、最近ではなるべく彼のことを考えないようにしているくらいである。数年前にわりと濃くおつきあいさせていただいたが、その間ずっと「およびもつかない」と思い知らされ続けた。いやホント、およびもつかない。
昨晩の放映で印象に残った言葉は「手に負えないことをやる」という彼が大切にしている流儀。
そして「自分がコントロールして書いたら途端にこざかしいものになるのは目に見えているじゃないですか」という言葉がそれに続く。この「自分がコントロールして書いたら途端にこざかしいものになる」というのは、彼の "創作の秘密" そのものではないかな。自分の頭の中から出てくるものなどたかが知れていて、単に「こざかしい」ものでしかないということ。キャラクターや紙や筆から勝手に紡ぎ出てくるものをこぼさず受け取って身を任せていくということ。自分の予想や実力を超えた何かがそこから生み出されていくということ。
そういえばよくお会いしている頃も彼は「こざかしくしたくない」みたいなことを何度も言っていた。「してやったり」という感じも嫌っていた。そういう "計算されたもの" の限界やみっともなさを知り尽くしているのだと思う。えてして「こざかしく」「してやったり」になりがちな広告の仕事なんて恥ずかしくて恥ずかしくて(だからその対極にある「スラムダンク一億冊感謝広告」は、自分が関わった仕事ながら、今でも自分の中のお手本だったりする)。
「手に負えないことをやる」という言葉は、番組ラストの「プロフェッショナルとは?」という問いの答えにつながっている。彼はこう言った。「向上し続ける人ですかね。これがなくなったらプロをやめないとって思ってることが、それなんで。だから、プロフェッショナルというのは、向上し続ける人、と思います」。
自己模倣は言うに及ばず、自分が獲得してきたもので回していくことすら自分に許さず、自分の手に負えない難しいテーマを自分に課すことで、常に向上し続ける。
この考え方が一貫して彼の底流に流れている。一貫して、そして徹底的に。
だからやっぱり「およびもつかない」。ボクなんか自己模倣を避けるのが精一杯なレベルで右往左往している。でもね、一歩でも二歩でも追いつこうとは思っている。あと数十年、死ぬ前には背中が見えるあたりまでなんとか追いつきたいな。追いつけるかな。
独りで先を行くつらさ・孤独さは、少しは想像できるつもり。
先を走り続けていてくれて本当にありがとう。
