30歳と31歳

2009年6月23日(火) 6:26:19

ちょっとだけ前の話になるが、ベルリン・フィルのコンサートマスターに30歳の樫本大進氏の就任が内定した。
日本が誇るコンマス安永徹氏の後任として選ばれたらしい。今後約1年間の試用期間を経て、団員の2/3以上の賛成を得てから完全な契約を結ぶらしいが、それにしてもすごくない? あのベルリン・フィルのコンマスって…。団員になるだけでもすごいのに、コンマスって…。一般的に考えてかなりの経験値と解釈の深さ、リーダーシップの強さなどが求められるコンマスに弱冠30歳で選ばれるっていったいどんな人なのだろう。しかも年上&猛者揃いのベルリン・フィル。ちょっと考えられない。

ちょうど同じ頃、千葉市長に熊谷俊人氏が現役最年少の31歳で選ばれた。
彼は高2で阪神大震災を経験し、大学卒業後にNTTコミュニケーションズに就職したという。
すばらしいなと思うのはその行動力。政治不信を募らせていた3年前に「居酒屋で腐っていてもしょうがない」と一念発起し、脱サラして民主党の千葉市議会議員候補公募に応募して合格。1週間後に東京都内から転居し、翌年、稲毛区選挙区でトップ当選したという。そして今回も千葉市長選史上最高の17万票獲得。うーむ。まぁこれから年長&老練な議員たちに揉まれるのだろうけど、その行動力と志や良し。

30歳と31歳。
たまたまこのふたりがすごいのだとも言えるけど、やっぱり「普通に要職を任せられる20代30代」が世の中にはたくさん埋もれているのだろうなという実感を持つ。
企業の世界でも20代30代でトップを任せられる人材は意外とたくさんいるのだろう。なのに名ばかり実力主義の年功序列の中で実力を発揮しきれず埋もれきっている。まぁIT系では20代30代のトップがゴロゴロいるけどね。普通の企業ではまだまだ20代30代は下っ端の部類だ。

ボクの周りにも「こいつに企業トップに近い要職を与えたら、きっと大きく働くし、会社を変えるだろうな」という20代30代が何人もいる。「変な経験値」がつく前に彼らに要職を与えて行動させてみたいとよく思う(そんな権限が自分にないのがもどかしい)。経験値が必要な場合もたしかに多いが、意外と無経験な人でも行動力と志があったらできるもの。結局、地位が人を作るのだ。慎重さと臆病さばかりが身についた経験豊富な人より、多少危なっかしくても若い行動力と志がある人の方が企業や世の中を変える。

ボクはもう48歳。
勤めている会社においてはようやく中の上クラス。役員から見たらまだまだ下っ端である。
でも、本音を言うが、下っ端のくせに、すでに少しずつ守りに入ってきている自分を知り衝撃を受けることがある。経験値がつきすぎたのだろう。心の奥の方に妙な慎重さと諦めと守りがある。20代30代のころの蛮勇をずいぶんなくしてしまった。50代60代になったらもっと「守る」んだろうな。いろいろと築き上げてきたものを。

自分がそうだからって世の中の人みんながそうだとは言えないけど、でも、世の組織のトップである50代60代の大半は、このように「守っている」と言ってもいいと思う。日本は、「守っている人」が上の方にいっぱい巣くって慎重さと臆病さをはびこらせている、身動きとれない社会なのだ。

守っている人は若い芽を摘むのがうまい(ホントにうまい)。
20代30代の蛮勇なんてすぐ摘み取られる。自分がもし知らず知らずにそうなっていたらすぐ辞めよう。そして守る必要のない、まだ何も築き上げていない世界に旅立とう。

佐藤尚之(さとなお)

佐藤尚之

佐藤尚之(さとなお)

コミュニケーション・ディレクター

(株)ツナグ代表。(株)4th代表。
復興庁復興推進参与。一般社団法人「助けあいジャパン」代表理事。
大阪芸術大学客員教授。やってみなはれ佐治敬三賞審査員。
花火師。

1961年東京生まれ。1985年(株)電通入社。コピーライター、CMプランナー、ウェブ・ディレクターを経て、コミュニケーション・デザイナーとしてキャンペーン全体を構築する仕事に従事。2011年に独立し(株)ツナグ設立。

現在は広告コミュニケーションの仕事の他に、「さとなおオープンラボ」や「さとなおリレー塾」「4th(コミュニティ)」などを主宰。講演は年100本ペース。
「スラムダンク一億冊感謝キャンペーン」でのJIAAグランプリなど受賞多数。

本名での著書に「明日の広告」(アスキー新書)、「明日のコミュニケーション」(アスキー新書)、「明日のプランニング」(講談社現代新書)。最新刊は「ファンベース」(ちくま新書)。

“さとなお”の名前で「うまひゃひゃさぬきうどん」(コスモの本、光文社文庫)、「胃袋で感じた沖縄」(コスモの本)、「沖縄やぎ地獄」(角川文庫)、「さとなおの自腹で満足」(コスモの本)、「人生ピロピロ」(角川文庫)、「沖縄上手な旅ごはん」(文藝春秋)、「極楽おいしい二泊三日」(文藝春秋)、「ジバラン」(日経BP社)などの著書がある。

東京出身。東京大森在住。横浜(保土ケ谷)、苦楽園・夙川・芦屋などにも住む。
仕事・講演・執筆などのお問い合わせは、satonao310@gmail.com まで。

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