ツッコミは災いの元

2009年4月21日(火) 7:32:29

広告業界ではしばしば「刈り取り」とか「囲い込み」とかいう言葉を使う。
顧客を刈り取る、とか、消費者を囲い込む、とか、そんな感じ。まぁ商習慣的な言葉でもある。でもこの言葉を使っている時点でホントは相当古い。だってそれは完全に送り手(作り手)目線。昭和な考え方だ。消費者(生活者)が変化した今、こんな発想でキャンペーンを作っていたら時代に置いて行かれる。消費者目線に立つ発想が徹底していたら「刈り取る」とか「囲い込む」という言葉など出てこないはず。早く死語にした方がいいし、きっと10年後には使っていない言葉だと思う(と思いたい)。

いや、そんなかたい話がしたいのではなく。
つまりは業界最前線でバリバリやっているタイプの若手営業くんとかは喜々として「顧客を刈り取りましょう!」とか発言しがちなわけです。なんか業界っぽいしね。仕事している気にもなるしね。その言葉自体ちょっと古いということなんかあまり考えず、習慣的に口にする感じ。

昨日もここ数ヶ月一緒に仕事をしている優秀な若手営業くんが、メールで「その会議にクライアントのどなたが出るか、出欠刈り取り中です」と書いてきた。
会議への出欠を刈り取り中だぁ? なんだその変な使い方…。まぁ意味はわかる。もしかしたら現場ではそういう使い方もしているかもしれない。でもさー、あのさー、そういう業界言葉っぽい使い方ってそんなにみっともよくないよ…。というか、これってツッコメということ? 笑うとこ? そうなの?
ボケにはツッコまないといけないと14年の関西暮らしで叩き込まれたボクは、脊髄反射的にこう返信した(もちろん主要用件に返信しつつ、P.S.的に)。

  >出欠刈り取り中です

  そんなもん、刈り取るなよな。

(笑)をつけた方がいいか、とか、典型的関西弁を使った方がいいか、とか一瞬思ったが、まぁ普通のツッコミだし、みんながみんなツッコむところだろう、と考えて気軽にポチッと送信ボタン。関係者全返信である。まぁ別に笑いを取りに行ったわけでもなく、メールのラストに気楽な会話も入れといて、みたいな感じで。

そしたら数分後、その若手営業くんから大慌てかつ平謝りのメール(DM)が返ってきた。超平謝り。ほとんど涙目。なんか怒られたと思ってるらしい。えぇ〜! しかもそれをCcで読んだ同じ部署の後輩が「佐藤さん、なんか厳しい指導ですねー」と話しかけてきた。ハァ〜???

いやまぁなんつうか、関西で鍛えられたボケとツッコミの会話術は東京ではまるで伝わらないことはさすがに知っている。いらぬツッコミしないように気をつけてもいる。でも、もう十分親しくなったからって油断しちゃったよ。つうか、このメールが怒りメールかどうかくらいわかるよね? 普段ボクとつきあっているならさ?

「いや、佐藤さん、彼から見たら年次が相当上だし、業界的にも大先輩だし、見た目も怖いし、そりゃーびびるんじゃないですか?」

そ、そっかー…。そうなのかー……。じゃれるようなツッコミすら無理なのかー………。

そういえば、ふと周りを見渡してもこのプロジェクトでの最年長はボクだ。「ボク」とか若ぶってカタカナで書いているけど一番年寄りかつプロジェクトリーダーだ。んー、もしかして、若手から見たら遙か彼方にいる権威系オッサンなのか。ちょっとじゃれただけで平謝りされるくらい近寄りがたいのか…。
まぁそういうことは別にしても、ボケツッコミ文化がないところに文脈も空気も読まず、笑いもとれないツッコミをしたのはボクだ。ボクが悪い。悪い。のか。つーか、この程度のツッコミでもそんなに傷つくの?

なんだか若手との会話に急に自信がなくなり、ガックリ落ち込んだので、「ほめられサロン」で軽くほめられといた。すごーい! すてきー! イケテルー!

佐藤尚之(さとなお)

佐藤尚之

佐藤尚之(さとなお)

コミュニケーション・ディレクター

(株)ツナグ代表。(株)4th代表。
復興庁復興推進参与。一般社団法人「助けあいジャパン」代表理事。
大阪芸術大学客員教授。やってみなはれ佐治敬三賞審査員。
花火師。

1961年東京生まれ。1985年(株)電通入社。コピーライター、CMプランナー、ウェブ・ディレクターを経て、コミュニケーション・デザイナーとしてキャンペーン全体を構築する仕事に従事。2011年に独立し(株)ツナグ設立。

現在は広告コミュニケーションの仕事の他に、「さとなおオープンラボ」や「さとなおリレー塾」「4th(コミュニティ)」などを主宰。講演は年100本ペース。
「スラムダンク一億冊感謝キャンペーン」でのJIAAグランプリなど受賞多数。

本名での著書に「明日の広告」(アスキー新書)、「明日のコミュニケーション」(アスキー新書)、「明日のプランニング」(講談社現代新書)。最新刊は「ファンベース」(ちくま新書)。

“さとなお”の名前で「うまひゃひゃさぬきうどん」(コスモの本、光文社文庫)、「胃袋で感じた沖縄」(コスモの本)、「沖縄やぎ地獄」(角川文庫)、「さとなおの自腹で満足」(コスモの本)、「人生ピロピロ」(角川文庫)、「沖縄上手な旅ごはん」(文藝春秋)、「極楽おいしい二泊三日」(文藝春秋)、「ジバラン」(日経BP社)などの著書がある。

東京出身。東京大森在住。横浜(保土ケ谷)、苦楽園・夙川・芦屋などにも住む。
仕事・講演・執筆などのお問い合わせは、satonao310@gmail.com まで。

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