神保町「嘉門」

2007年6月21日(木) 7:14:56

店に入ったら蚊取り線香の香りがぷ〜んとした。あえてクーラーをつけず、引き戸と窓を全開にしてある。カウンターとテーブルひとつの小さな居酒屋。全体に古びていて蚊取り線香の香りがよく似合う。メニューはおまかせ酒肴3500円のみ。日本酒は珍しいのを取り揃えているがすべて一杯500円。紹介してくださった方とカウンターの奥に座ってほぅと溜息。

ご主人ひとりでやっていて、その純朴そうな佇まいがすばらしい。ヘヘヘと笑いながら日本酒を升にこぼれるほどなみなみと注いでくれる。酒肴がまたうまい。タコ、カツオから始まって、珍しい山菜やかき揚げなど、どれも程がよく酒がよく進む。肴は主役じゃないことをよくわかっている程の良さ。でも「これ、おいしいねぇ」と会話をよく引き立てる。

こういう、いい意味で素っ気ない古い居酒屋は最近貴重になってきた。アルバイト店員もおかず、音楽もない。店は清潔だが年月なりに古びていて、それを隠そうともしていない。特別なお愛想もなく、こだわり親父的なうざさもない。実にさりげない。客はただただ居心地よく飲んでサッと席を立つ。

そこに座っているだけで、ご主人や年配の客たちが生きてきた年月が自分の中にふわりと美しく降り積もっていくような気分になれる店。こういう店が似合うようになるためにはもう少し地道な年月が必要かもしれない、とか思いながら店を出た。ご馳走様でした。

佐藤尚之(さとなお)

佐藤尚之

佐藤尚之(さとなお)

コミュニケーション・ディレクター

(株)ツナグ代表。(株)4th代表。
復興庁復興推進参与。一般社団法人「助けあいジャパン」代表理事。
大阪芸術大学客員教授。やってみなはれ佐治敬三賞審査員。
花火師。

1961年東京生まれ。1985年(株)電通入社。コピーライター、CMプランナー、ウェブ・ディレクターを経て、コミュニケーション・デザイナーとしてキャンペーン全体を構築する仕事に従事。2011年に独立し(株)ツナグ設立。

現在は広告コミュニケーションの仕事の他に、「さとなおオープンラボ」や「さとなおリレー塾」「4th(コミュニティ)」などを主宰。講演は年100本ペース。
「スラムダンク一億冊感謝キャンペーン」でのJIAAグランプリなど受賞多数。

本名での著書に「明日の広告」(アスキー新書)、「明日のコミュニケーション」(アスキー新書)、「明日のプランニング」(講談社現代新書)。最新刊は「ファンベース」(ちくま新書)。

“さとなお”の名前で「うまひゃひゃさぬきうどん」(コスモの本、光文社文庫)、「胃袋で感じた沖縄」(コスモの本)、「沖縄やぎ地獄」(角川文庫)、「さとなおの自腹で満足」(コスモの本)、「人生ピロピロ」(角川文庫)、「沖縄上手な旅ごはん」(文藝春秋)、「極楽おいしい二泊三日」(文藝春秋)、「ジバラン」(日経BP社)などの著書がある。

東京出身。東京大森在住。横浜(保土ケ谷)、苦楽園・夙川・芦屋などにも住む。
仕事・講演・執筆などのお問い合わせは、satonao310@gmail.com まで。

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