鳥取県で「人権侵害救済推進及び手続に関する条例」が可決

2005年10月16日(日) 11:12:50

多忙で見逃していたが、鳥取県で「人権侵害救済推進及び手続に関する条例」が10/12に可決されたと友達からメールで知らされた。施行は来年6月1日(よりによって誕生日)。これは超悪法「人権擁護法案」のひな形みたいなもので、言論の自由をぶっつぶす強烈な条例だ。もちろん前例はなく全国初。行政が人権侵害救済を目的に加害者への勧告や氏名公表の権限を持つ初めての例となる。これを鳥取県はたった5日間の議論で可決したという。

というかですね、鳥取県の条例なんて県民以外関係ないって思うでしょ? でも違うらしいっすよ。「県内だけでなく県民が人権侵害を受けたのであればどこにいても(東京でもネットでも)この条例の対象となる」らしい。

つまり、 たとえば東京在住のボクがなにかについての意見をサイトで書いたとする。それを「差別だ!人権侵害の被害を受けた!」と思いこむヒトが鳥取県にいたとして、そう委員会に訴えると鳥取県の人権侵害救済推進委員からいきなり立ち入り調査されるわけ。しかもですよ、訴えは本人以外でもできる(密告可)。被害者が特定でなく不特定でも人権侵害と認定できる(一般論でも訴え可)。人権侵害の事実がなくても「おそれ」だけで人権侵害認定できる(思いこみ可)。ひょえ〜。

そのうえ恐ろしいことに「反対尋問も上告もできない」。それって法治国家ですか? たとえ「嘘の訴え」をされても反対尋問できないっていったい何ですか? 故意に悪用しようとするヒトに訴えられたが最後、反対も反論もできず、強制立ち入り調査され、人権侵害の事実がなくても「おそれがあった」と認定される可能性があるわけっすよ?

んでもって、もっと恐ろしいことに「人権侵害したかどうかを判断するのは、知事が指名した5人の人権侵害救済推進委員だけ」。
裁判官でもなんでもない5人のみの判断で氏名公表や罰金が科せられるわけ。もしその5人にどこかの団体の権益を担ったヒトや他国の工作員が含まれていたら…(もしくはそれらから金を受け取ってる人がいたら)。

というか、ボクレベルならどうでもいいけど、きちんと正義の意志を持って悪事や利権に切り込もうとする政治家やジャーナリスト、作家、ブロガーなどを「人権侵害!」という名の下にいくらでもつぶせる条例なのだ。怖すぎ。
やばいぞーってんで、5人の任命権を持つ絶対権力者、片山善博鳥取県知事がどんなヒトか、調べてその言動や思想、過去などに触れたりしたら、ここぞとばかり「鳥取県人に対する人権侵害!」で訴えられちゃうだろう。しかも訴えは県知事本人じゃなくても第三者でもできる。なにかの冗談みたいだな。プロ市民たちはこぞって鳥取に移住するんじゃないか? 人口増加策の一環か?

もちろん、人権は擁護すべき。犯罪被害者と家族、虐待児童、報道被害者、被差別者などを助ける工夫は必要だ。ただしその判断を行政や数人の手にゆだねると何でもありになる。「被害」という定義・解釈をいくらでも拡張することができるからだ。どんな弾圧だって規制だって可能だ。数年経てば人民は萎縮し発言もしなくなる。人権擁護&救済という耳当たりのいい言葉に気持ちよくなっていると、憲兵の時代にすぐ逆戻りである。

一応、鳥取県弁護士会は「行政が過度に市民生活に干渉する結果になり、憲法違反の恐れもある」などとして反対声明を発表している。弁護士会会長は「当事者は裁判所の令状なしに情報提供などを求められ、断れば罰則もある。使い方によっては何でもできることになる」と語っている。ぜひがんばってほしい。

鳥取県だけではない。福岡県も条例制定を視野に入れた論点整理を始めているという(福岡〜!)。本丸「人権擁護法案」も含めて、なんつうか、最後の一線を越え始めているのかもしれない。

佐藤尚之(さとなお)

佐藤尚之

佐藤尚之(さとなお)

コミュニケーション・ディレクター

(株)ツナグ代表。(株)4th代表。
復興庁復興推進参与。一般社団法人「助けあいジャパン」代表理事。
大阪芸術大学客員教授。やってみなはれ佐治敬三賞審査員。
花火師。

1961年東京生まれ。1985年(株)電通入社。コピーライター、CMプランナー、ウェブ・ディレクターを経て、コミュニケーション・デザイナーとしてキャンペーン全体を構築する仕事に従事。2011年に独立し(株)ツナグ設立。

現在は広告コミュニケーションの仕事の他に、「さとなおオープンラボ」や「さとなおリレー塾」「4th(コミュニティ)」などを主宰。講演は年100本ペース。
「スラムダンク一億冊感謝キャンペーン」でのJIAAグランプリなど受賞多数。

本名での著書に「明日の広告」(アスキー新書)、「明日のコミュニケーション」(アスキー新書)、「明日のプランニング」(講談社現代新書)。最新刊は「ファンベース」(ちくま新書)。

“さとなお”の名前で「うまひゃひゃさぬきうどん」(コスモの本、光文社文庫)、「胃袋で感じた沖縄」(コスモの本)、「沖縄やぎ地獄」(角川文庫)、「さとなおの自腹で満足」(コスモの本)、「人生ピロピロ」(角川文庫)、「沖縄上手な旅ごはん」(文藝春秋)、「極楽おいしい二泊三日」(文藝春秋)、「ジバラン」(日経BP社)などの著書がある。

東京出身。東京大森在住。横浜(保土ケ谷)、苦楽園・夙川・芦屋などにも住む。
仕事・講演・執筆などのお問い合わせは、satonao310@gmail.com まで。

アーカイブ

同カテゴリーの他記事