カウンター、古川緑郎の前、最後のギムレット
2003年11月18日(火) 21:47:15
閉店してしまう前にもう一度だけ「クール」に行きたくて身もだえしているボクを知ってか知らずか、「佐藤、いまから古川さんの最後のカクテルを飲みに行くけど、いっしょに行くか?」と上司。ボクなんかが最後の夜に行って迷惑ではないかと躊躇しつつ、常連である上司と行くならまぁいいかと思い直し、仕事を中断していそいそと夜の銀座へ。
上司は「古川さんはボクの命を救ってくれたんだよ」と謎のような言葉を口にする。事情を深くは聞かない。きっといろんな人生がこのバーには染みついているのだろう。
店の人にニコヤカに歓迎されて、当然のようにカウンターの古川緑郎の前に陣取る上司。ボクもカラダを小さくして横に立つ(スタンドバーなのだ)。このバーには20回くらい来ているが(もっとか?)、古川さんの真ん前は初めてだ。若造が陣取ってはいけない場所だと遠慮していたのだ。60歳くらいになってから堂々と立ってやろう、古川さんの真ん前が似合うような大人になろう、と、どこかで目標にしていたんだ。
ギムレットを注文する。銀座の歴史そのもの、88歳の古川緑郎バーテンダーがシェイカーを振ってくれる。しあわせ。ボクのためだけに彼がシェイカーを振るこの一瞬。脳裏に刻みつける。そして舌にも刻みつける。うん。しっかり覚えた。忘れまい。
「並んでる人に悪いからあと一杯で帰りましょう。最後はやっぱりハイボールですかねぇ」と上司と話していたら、閉店は明日だと言う。あらら。今日が最後の夜だと思っていたよ。「ハイボールは明日にしようか」とどちらからともなく言い、他のお客にカウンターを譲るべく一杯で店を後にする。明日は15時から店を開けるそうだ。「明日、明るいうちに会社をちょっと抜け出して、一杯だけハイボールを飲んで、古川緑郎のラストにしよう」と話し合い、上司は夜の街へ、ボクは会社へ。お互いいろんな想いを胸に。
胃であたたかく燃える古川緑郎のギムレット。生きているのってなんだかいいね。そんな夜。そんな人生。
