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「ドクトル・ジバゴ」

ドクトル・ジバゴ

Doctor Zhivago

David Lean
Omar Sharif, Julie Christie, Geraldine Chaplin, Rod Steiger, Alec Guinness, Tom Courtenay
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1965年製作
200 minutes

監督・・・・デイヴィッド・リーン
製作・・・・カルロ・ポンティ
脚本・・・・ロバート・ボルト
原作・・・・ボリス・パステルナーク
撮影・・・・フレッド・A・ナーク
音楽・・・・モーリス・ジャール
キャスト・・オマー・シャリフ
ジュリー・クリスティ
ジェラルディン・チャップリン
ロッド・スタイガー
アレック・ギネス
トム・コートネイ

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この映画は、毎日のいろんな雑事やしがらみで、狭く短期的になった視野を大きく長く広げるための「鳥の翼」をボクに与えてくれます。

すごく高いところから人間の運命を眺められる。

歴史の大きなうねりの中での、ちっぽけだけど尊厳ある人間の生が鳥瞰できる。

観る前はゴキブリだった視野が、いきなり鳥の視野に変わるんです。
ええ、それはもうしっかり変わります。

名手デヴィッド・リーン監督は、細かいエピソードを客観的に積み重ね、3時間20分という時間の中にぎっちり歴史と人生と愛のカタチをほうり込んで、我々に壮大なる運命鳥瞰図を観せてくれるのです。




今のテンポが早い映画と比べると間延びして感じられる人もいるでしょう。
が、早いテンポにするために登場人物の感情を直接的に表現をしている今の映画(例えば怒りなら怒りの表情をそのまま描く)に比べて、こういう風に外堀から埋めていく映画(例えば怒りなら怒る状況を客観的に描いて内面を表現する)は、時間はかかるものの、今の映画からは得られない「人間の複雑さ・奥行きみたいなもの」を感じさせてくれると思うのです。

だって人間って実際にはそんなに「わかりやすく」怒ったりしないし、「わかりやすく」泣いたりもしないし、「わかりやすく」喜んだりもしなかったりする。いくらアメリカ人だって映画で描かれているみたいに「わかりやすく」感情を表現しないです。例外もあるけど。
どうも感情にストレートなのがイイという風潮がこの頃日本にはあって、「ブチ切れる」みたく感情に正直なのが格好いいみたいな錯覚もあるんだけど、そういうのって今時の映画の刹那的表現の影響も大きいと思うのです。

まぁとにかく、今の映画に比べるとずいぶんのんびりと描いていますね。
でも、決して長く感じさせない3時間20分。

ボクはこういう風にじっくり描いてある映画って好きだなぁ・・・。



この映画、パステルナークの原作がノーベル賞を取ったり、アカデミー賞を「サウンド・オブ・ミュージック」と争って堂々6部門を取ったりしているんだけど、わりと人気がないんですよね。

例えば「キネマ旬報オールタイム・ベスト100」などにはまず出てこない。「私の好きな10本の映画」とかいう雑誌なんかの特集にもまず出てこない。

やっぱり地味なのかな。
確かにジバゴやラーラの人生を描ききれてはいないと思うし、「あれ? どうしてこういう展開に? その後どうなったの?」と不思議に思うようなところも出てきます。
まぁそういう細部のほつれはあるにせよ、ちょっと評価が低すぎる気がします。

いい映画なんですけどねー。
デイヴィッド・リーン監督作品の中でも取り上げられることがなぜか少ない。

「逢びき」「大いなる遺産」「オリヴァ・ツイスト」「旅情」「戦場にかける橋」「アラビアのロレンス」「ライアンの娘」「インドへの道」・・・

彼が手がけた作品は名作だらけ。
特に「旅情」「アラビアのロレンス」「ライアンの娘」あたりは「ドクトル・ジバゴ」より良く出来ている気もするくらい。「ライアンの娘」なんてフェバリットです。


でも。
でもでも、ボクはやっぱり「ドクトル・ジバゴ」を見捨てられない。

全編を貫く大名曲「ラーラのテーマ」だけでも他の映画を凌いでしまう。

舞い散る枯れ葉を見上げる幼きジバゴと、やるせないバラライカの響き・・・
ロシア革命という大きな歴史のうねりに翻弄されていく男女の愛と、美しいバラライカの響き・・・
人が生きていく意味を問いかける、あまりに広大なる大地と、大らかなバラライカの響き・・・

同じ曲なんだけど聴くたびごとに聴いた印象がかわる。
実際にはバラライカだけでなく110人の大編成だったようなんですが(バラライカ24人に、琴、三味線、オルガン、チェレスタ、エレキ、ツィターなどなど)、映画の内容とスケールにここまで合う曲は、他には「風と共に去りぬ」くらいではないかな、というくらい相性ぴったり。
このテーマ曲の素晴らしさだけでも、ボクの中では永遠の名画として位置づけられてしまいます。

ホント、しょっちゅう心の中に流れます、このテーマ曲。
名曲中の名曲。



さて。
この映画は大河ドラマみたいなものですから、いろんな主題が織り込まれています。

その中でも特に印象的に心に迫ってくるのは 「血」 ですね。


異性への愛に燃えたぎる「血」。
自分ではコントロールできない性という名の「血」。
民族という共同体で分けあっている「血」。
革命という名の元に流される「血」。

そして。
親から子へと受け継がれる、「血」。


一般的には「愛の物語」と位置づけられているこの映画だけど、ボクはラストシーンでバラライカを肩に担ぎ歩き去っていくラーラの娘の後ろ姿に、この映画の主題を見るような気がしました。
血の継承・・・歴史や運命を超えるものは、これだけ、なのかもしれません。



主演のオマー・シャリフはもちろんよかったけど、少年時代のジバゴ役で出ていた彼の実際の息子が実によかったですね。あの枯れ葉を見上げる表情。この映画の名シーンのひとつです。
ジュリー・クリスティは最高に美しい。前年に「ダーリング」でアカデミー主演女優賞をもらっているけど、実際の代表作はこの「ドクトル・ジバゴ」だと思います。
ジバゴの妻役のジェラルディン・チャップリンはあのチャップリンの娘。ジバゴの妻役にはもう少し個性のある人の方が良かった気がするけど、まぁ熱演でしょう。




人生を鳥瞰して、さて、何を想うのか・・・

デヴィッド・リーン監督は観客を試しているような気がします。

歴史の大きなうねりにとてもかなわない自分の人生に空しくなるのか・・・
歴史の中で、それでも情熱いっぱいに生きていく自分を見つけるのか・・・




実はボクはよくわからない。
この映画を見ることでなんだか空しくなることもある。

ただ、
高いところから自分の人生を眺める視点を得ることで、自分が歩んでいる現在位置がよく見えるようにはなる。
これだけでも、「ドクトル・ジバゴ」を観る価値はあるのです。

いや、ホント。


【1998年6月記】

1998年06月01日(月) 12:08:26・リンク用URL

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