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「追憶」

追憶

The Way We Were

Sydney Pollack
Barbra Streisand, Robert Redford, Bradford Dillman, Lois Chiles, Patrick O'Neal, Viveca Lindfors
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1973年製作
118 minutes

監督・・・・シドニー・ポラック
製作・・・・レイ・スターク
原作・脚本・アーサー・ローレンツ
撮影・・・・ハリー・ストラドリングJr.
編集・・・・マーガレット・ブース
音楽・・・・マービン・ハムリッシュ
主題歌・・・バーブラ・ストライサンド
キャスト・・バーブラ・ストライサンド
ロバート・レッドフォード
フラッドフォード・ディルマン
ビベカ・リンドフォース
マレイ・ハミルトン
パトリック・オニール
ロイス・チルズ
ハーブ・エデルマン
ジェームズ・ウッズ

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おいおい、やっぱり人間、見た目かよ!

っていうのがこの映画を観た最初の感想かな。まあ中学2年の時ですけど。


なにしろ主人公のふたりの性格は全く違う。
いや、単なる「性格」なら別に違ってもいい。
明るい、暗い、せっかち、のんびり、細かい、大ざっぱ、気が強い、気が弱い、大食、少食・・・・・
まぁ最後のは少し違うが、性格は別に正反対でも全然いい。

でも、この二人の場合、「生き方」がまるで違うのである。




       ハベル <・・・> ケイティー
   ======================
     「上流階級」<・・・>「下層階級」
   「人生を楽しむ」<・・・>「人生と闘う」
     「いい加減」<・・・>「ひたむき」
       「安易」<・・・>「努力」
       「妥協」<・・・>「主張」
      「薄笑い」<・・・>「眉間にしわ」
       「客観」<・・・>「主観」
       「会話」<・・・>「演説」
   「がんばらない」<・・・>「がんばる」
   ======================




ケイティー(バーブラ・ストライサンド)は社会を変えるため、政治活動に没頭している。「イデオロギー」に凝り固まっている。
というか、彼女にとって「イデオロギーこそすべて」なのだ。
イデオロギーこそ人間の糧なのである。
余裕もない。
常に妥協しないで「too much」にやってしまう人なのである。

一方、ハベル(ロバート・レッドフォード)はそんなことにはほとんど関心がない。
恵まれた才能を活かして、だらだらきままに流されている。
真面目ではあるのだが、スポーツと酒と、仲間とだらだら遊ぶことが好きな男なのだ。
小説の才能もあるが、それを武器に正面切って闘っていこうとは思っていない。
人生をユーモアで流そうとしている。

・・・この「生きていく根本的要素」の違い。

そしてそして。
ケイティーの方は、ハベルの生き方をある意味「憎んでいる」のだ。
問題意識のカタマリのような人だから、ハベルの享楽的な生き方が我慢できないのである。

なのに、なのに!
男女の関係を始めてしまうのは、なんとケイティーの方なのである。
ケイティーの方がコトリとあっけなくいってしまうのである!

まぁハベルほどの美男子ならわからんでもないが、それってでもなんだかさぁ・・・。

人間、やっぱり、見た目 なの!?

まぁ中学2年の時の感想だから仕方ないんだけど、この感想はわりと長く尾を引きましたね。
結局この二人はうまくいかなかった、というところには目もくれず、「えー、こんなに生き方が違っても見た目が良ければ女は落ちるのかよ!」的な憤慨にも似た感慨。

くそー、哲学書よりファッション誌だぜ!




まぁそれはさておき。

その頃は、わりとケイティーが嫌い、というか鼻につくというか、なんでハベルもこんな女とくっつくかなぁ、と思ってました。

でも、歳くってから観返すと、わりとケイティーに同情的な自分がいる。
というか、ハベルがどんどん嫌いになっていく。

ハベルは、自分とまるで違う「闘う人生」「ひたむきな生き方」をするケイティーに惹かれたんだろうけど、そのわりに彼女を自分の生き方に同調させようとする。

そのあげく浮気はするわ、仕事で信念は曲げるは、赤狩りも他人事にするわ・・・しまいには彼女も子供も捨てて、あっさり次に流れていく。
「ボクたちはあわなかったんだよ」とひと言言うだけで。

彼の人生は「彼の生まれた国に似て実に安易」(劇中で彼が書く小説の中の文章)なのだ。
小説、そして映画、映画がいまいちならテレビ、と、どんどん流れるがままに、世界を、そしてスタンスを変えていく。


ハベルって、こんな情けない男だったのか!!!


なんで中学の時は気がつかなかったんだろう、と思うばかりで。
あの頃はなんとなく、ハベルの生き方がいいなぁ、なんて思っていたくらいで。




それにしてもこの頃の彼の美しさは完璧だ。

大学卒業以来、はじめて再会するパーティ場面。
カメラが左からパンしていって、群衆の中にふと白い軍服姿の彼を捉える。
そこにあの美しい主題歌がかぶさってタイトルロール・・・。
この時、男のボクですら、ハッと美しさに打たれてしまうところがあるから、女性だったらたまらないことでしょう。


ロバート・レッドフォードはこの年36歳。
学生役をやってもまったく不自然さのない化け物みたいな美しさ。まいるよなー。
演技的にも「追憶」は代表作ではないかな。ちょっと「地」っぽくて、ハベルという「安易」な男を余裕たっぷり演じてます。ブラピを重ねる人がいるけど、ちょっと格が違う(似ているけど)。

「裸足で散歩」「明日に向かって撃て」「大いなる勇者」「候補者ビル・マッケイ」「追憶」「スティング」「華麗なるギャツビー」「華麗なるヒコーキ野郎」「大統領の陰謀」・・・
1973年に撮ったこの「追憶」と「スティング」、そして翌年の「華麗なるギャツビー」あたりが最盛期だった気がする。
「普通の人々」 で1980年度アカデミー「監督賞」受賞を取りましたね。


バーブラ・ストライサンドは、イデオロギー的にも生き方的にも歯がゆいのに、どうしてもハベルに惹かれていってしまうケイティーを熱演してますね。
その「どうしようもなさ」を演じきっている。特に激昂して「なにが怖れているの!」などと叫んでしまうあたりなんか、まぁなんというか嫌味な人で、でもこれまた「地」っぽい演技ですよね。
でも鼻っ柱の強い彼女がたまに見せる自信のなさそうな表情はとっても印象的だった。

彼女はこの年31歳。
「ファニーガール」でデビューしていきなりアカデミー主演女優賞を受賞してから5年目のこの作品は、まぁ文句なしの代表作でしょう。
「ハロー・ドーリー!」「晴れた日に永遠が見える」「おかしなおかしな大追跡」「追憶」「スター誕生」「愛のイエントル」「ナッツ」・・・
「スター誕生」の主題曲「Evergreen」は自らの作曲でアカデミー主題歌賞を受賞するという、まぁなんというか非の打ち所のない人生を送っているわけだけど、実際ボクはこの人の歌は大好きですね。ライブのLDも持っていて、たまに観たくなる。
自意識過剰っぽい歌い方なんだけど、そうならないように自分を押さえているような、なんか「努力の人」っぽさが好き。それってケイティーみたいだけど。


面白いところでは、イデオロギー的にケイティーの忠実な仲間であり、かつ想いを寄せている男に、若き日のジェームズ・ウッズが出てますね。
「クワイヤボーイズ」「カリブの熱い夜」「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ」のジェームズ・ウッズ。
これまたわりと、熱演。


監督はシドニー・ポラック。
一応社会派なのかな。恋愛物にもどこかで社会問題を入れ込むね。
この「追憶」ではハリウッドの赤狩りだったけど、中途半端な描き方で、ボクは嫌い。
「ひとりぼっちの青春」「大いなる勇者」「出逢い」「トッツィー」「愛と哀しみの果て」・・・。
「愛と哀しみの果て」でアカデミー監督賞を取ったけど、名作「アフリカの日々」の映画化なら、もう少し上手に撮って欲しかったと個人的には思うなー。きれいだけど、アイザック・ディネーセンの詩情が映像化されていないと思う。
ロバート・レッドフォードとは親友の仲だそうで。そういえば6本も主演している。

「The Way We Were」という映画史に残る名曲は、アカデミー作曲賞と主題歌賞を受賞してます。
この曲を作曲したマービン・ハムリッシュは、同じ年「スティング」でもアカデミー編曲賞をもらってます。「007/私を愛したスパイ」「普通の人々」「ソフィーの選択」舞台の「コーラス・ガール」もこの人の作品。地味な人だけど、いい仕事をしてますね。新しい仕事は知らないけど。




ラストシーン。
なんだかいつも感慨を覚えます。
一時あれだけ一緒に時を過ごしたふたりが、すーーーと他人になっていく・・・。

「The Way We Were」の「Way」って、一本道ではないんですね。
道だからいっぱい分かれる。

かつて愛し合った二人が、まるで違う人生を歩み、もう元に戻ることはない。
もう相手がどんな人生を歩んでいるかもわからない。

そして人生の道は、戻れない・・・。


道が分かれるように、人と人が別れる。
それがなんか、とても理不尽に思えてくる映画なのです。

【1999年5月記】

1999年05月01日(土) 12:33:18・リンク用URL

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