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「転校生」

転校生

1982年製作
112 minutes

監督・・・・大林宣彦
製作・・・・佐々木史朗
撮影・・・・阪本善尚
音楽・・・・林昌平
助監督・・・内藤忠司
脚本・・・・剣持亘
原作・・・・山中恒
キャスト・・小林聡美
尾美としのり
佐藤充
樹木希林
宍戸錠
入江若葉
志穂美悦子
山中康仁

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大林映画って砂糖菓子のように甘いんです。

大林監督がその映画で一貫して語っているのは、「過ぎ去った日々は、もう取り返しがつかない。だからこそ人生はかけがえなく、痛ましくも美しいものなんだ」ということ。
そして彼が映画の中に出してくる設定もほとんどその主題にそっていると思うのです。

尾道は監督の故郷で過去そのものだし、主人公に必ず少女を持ってくるのも汚れなき過去へのオマージュだし、8mm少年やカメラ小僧を出してくるのも過去を記録する象徴だと。
そこらへんも含めて大林映画って甘ったるい。そして青臭い。堂々と照れずにそれを表現するあたりが彼の真骨頂なんですね。

小説家・福永武彦の影響も見逃せません。

「僕の青春期は福永武彦の『草の花』を丸暗記することから始まった」と監督自身言っています。
彼が常に持ち歩いて暗記しちゃうくらい影響を受けた小説。それが福永武彦の「草の花」でした。この小説も甘くそして青い。でもその瑞々しさが大林映画そっくり。そして後年、彼は福永の代表作「廃市」を16mmで撮ります。福永へのオマージュというべき美しい小品。実はボクはこの映画「廃市」が大林作品の中で一番好きなのですが。

----余談。小説「草の花」の重要場面に東京の大森が出てきます。大林監督はよく大森の土手に来て草の花を読み返したそうです。ボクはその大森出身、しかもまさにその場面に程近い所に住んでいたので、なんかボクにとっても思い入れが深い小説です。でも小説としたら「廃市」の方が好きかなぁ----


さて。大林映画の特徴が一番現れた映画といえばそれはこの「転校生」でしょう。

過去へのオマージュとして8mmから始まる冒頭部分。そして8mmで終わるエンディング。もう二度と戻ってこない日々を偶然による性転換という形に置き換えた主題提示。そして何よりも、かの美しき尾道。古き狭き日本がまんま残っている箱庭的町…。

すべてがこの「転校生」の中に詰まっています。
でもまぁそんな理屈はどうでもいいか。要は僕はこの映画が好きなんですね、ものすごく。小林聡美に至っては惚れちゃったくらいです。くそ、三谷幸喜め!(注:彼の奥さんになってしまったので)

一番好きなシーンは実はラストのラスト。
引っ越しのため尾道を去っていくカズオ(尾美としのり)がカズミを引っ越しトラックの窓から8mmで撮るところ。
だんだん小さくなるカズミ。ちぎれるように手を振るカズミ。そこにセリフ。

「さよなら、あたし」。
「さよなら、おれ」。

そしてカズミは最後の最後に手を振るのをやめ、後ろを向き、スキップして去るのです。
このスキップして楽しそうに去るところがいい。このスキップがこの映画に大きな意味を与えています。過去へのオマージュだけではない大きな意味を。


「転校生」「時をかける少女」「さびしんぼう」。尾道三部作。
いまだに尾道のロケ現場巡りに観光客が訪れるそうです。当時はすごい人気でしたからねぇ。
どれも素晴らしい出来だけど、一番見返す回数が多いのは圧倒的にこの「転校生」です。
まだもし大林作品見てない人がいたら、ぜひこれからどうぞ。

【1997年5月記】

1997年05月01日(木) 20:29:54・リンク用URL

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