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「マイライフ・アズ・ア・ドッグ」

マイ・ライフ・アズ・ア・ドッグ

My Life as a Dog

Lasse Hallstrem
Anton Glanzelius, Tomas von Bremssen, Anki Liden, Melinda Kinnaman, Kicki Rundgren, Lennart Hjulstrem
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1985年製作
101 minutes

監督・・・・ラッセ・ハルストレム
原作・・・・レイダル・イェンソン
製作・・・・ヴァルデマール・ベリエンダール
撮影・・・・イェリエン・ペルション
美術・・・・ラッセ・ヴェストフェルト
音楽・・・・ビョルン・イスフェルト
キャスト・・アントン・グランセリウス
メリンダ・キンナマン
アンキ・リデン
トーマス・フォン・ブレムセン
マンフレド・セルネル

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この映画の主題は「人工衛星に乗せられて死んでいったライカ犬より、僕の人生のほうがまだ幸せだ」という少年の心の想い。

そう。少年は不幸なのだ。
父親は南洋に行って帰ってこず、母親は病身ゆえ少年は叔父のところに預けられてしまう。母親への愛も空回りしてしまい一向に伝わらない。可愛がっていた犬も犬の病院に入れられ離ればなれ(これは実は殺されていたということがあとでわかる)。

でも少年はことある度に思うわけです。
「あのライカ犬より、僕の人生のほうがまだ幸せだ」と。

このテーマが実に脱帽もんに秀逸ですよね。そう思いません? 僕はぶっとびました。

こんなに美しく細やかなテーマを設定するこの監督はただものではないのです。
現代の日本に住んでいる世間ずれしたオジサンの僕からみると「たいした不幸ではないではないか」と思われるようなことなんだけど、子供の身になってみると両親も犬もなくして叔父さんのところに預けられるなんてことは全世界の終わりみたいな気がしますよね。そこらへんの導入がまた上手なのです。世間ずれしたオジサンでも自然にその不幸に入っていける。
うまいなぁ。

そしてその後の展開がラッセ・ハルストレム監督の真骨頂。

彼が描く、人間の共同体としての「村」は、システムとしての‘癒し’をしっかり維持していて、よってたかって主人公の不幸を癒していくんです。それも自然に。無理に癒そうとせず自然に「癒してしまう」のです。

ストーリーの流れからすると一見いらないように見える数多いエピソード群。
ぜんぜん関係ないように見える村でのさまざまな出来事が、実はいつのまにか「かさぶたのように」少年を包み込み、ゆっくり傷を癒していく…。

そのへんの根気よい描き方がすごい。
じっくり腰を据えて「関係のないお話」(だけど非常に面白いお話)を描いていきます。
最初は観客も少年と同じくその「村」に入り込めない。でもだんだん少年と一緒にその共同体に入っていき、いつのまにか観客まで癒されているのです。

なんちゅう映画だ。

そしてまた「関係のないお話」たちがどれも忘れられない印象を残します。
人間関係って、こう‘だった’よなぁ、と過去形で思ってしまうところが少し悲しいけど、とにかく本来あるべき人間関係が、共同体のあり方が、まさにここにあるのです。

このラッセ・ハルストレム監督や「ニューシネマパラダイス」のジュゼッペ・トルナトーレ監督が描く世界が仕掛けばかり多いハリウッド映画がはびこる中で大きな支持を受けているのは、もちろんストーリーの良さもあるけど、彼らが描く「共同体としての村・街」が実に癒しにみちていて本来の人間関係を残しているからなのだと思うのです。

かつて日本にもこういう共同体が存在しました。
ほんの20年前くらいまでは、まだ、ね。

ボクたちの子供たちが、そういう共同体を知らない子供たちが、将来この映画を見てどう思うのか……とても知りたいと思うのです。
うざったいと思うのか、甘っちょろいと思うのか。

戦前の映画のテンポが、ボクたちにはとろとろ見えるように、この映画も単にとろい映画にしか見られないかもしれません。自分達には関係のない大昔のお話と思われるかもしれません。

子供たちがそう思ってしまうような世の中を作るために、ボクたちは日々働いているのだろうか……

なんだか映画とは関係のない話になってしまいましたが、「ボクたちはこんなに忙しく働いて、いったいどういう世界を作ろうとしているのか」。これを書くために久しぶりにこの映画を見て、そうつくづく思ったのでした。


あ、この映画自体はそんな教訓映画ではもちろんありません。
文句なしに楽しめるユーモアあふれる作品です。
特に主人公とガキ大将の少女がイイ。感涙ものです。
いやぁ、この監督、本当にただ者ではないですよね。
このあと「やかまし村」シリーズを撮っています。これも癒しに満ちてますよ。


【1997年12月記】

1997年12月01日(月) 22:44:19・リンク用URL

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