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「話の話」

話の話

Tale of Tales(Skazka skazok)
Сказка сказок(Soviet Union: Russian title)

Yuri Norstein
Lyudmila Petrushevskaya, Yuriy Norshteyn
Aleksandr Kalyagin as Little Grey Wolf

1979年製作
29 minutes

監督・・・・ユーリ・ノルシュテイン
美術・演出・ユーリ・ノルシュテイン
F・ヤルブソバ
脚本・・・・L・ペトルシェフスカヤ
ユーリ・ノルシュテイン
撮影・・・・I・スキダン・ボシン
編集・・・・N・アブラモバ
作曲・・・・M・メーロビッチ
音声・・・・B・フィリチコフ
構成・・・・N・トラシェバ
画面・・・・G・コブロフ
子狼の声・・A・カリャーギン

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この小編(29分)をボクは何度観たことだろう。

我が家に遊びに来た方でこれを強制的に観せられた人の多いことと言ったら。
まぁ興味がない人にとっては災難に近いかもしれない。
でも本当に何度観ても飽きない名作中の名作だと思っているし、そのわりにはみんなが知らなすぎると思うからまた観せたくなるんですよね。



あなたはユーリ・ノルシュテインをご存知ですか?
ロシアのアニメーション作家。いや、ソ連の、と言ったほうがしっくりくるんだけど。

アニメと言っても、いわゆる日本のテレビアニメとは全然違うんです。
切り紙アニメとでもいうのかな、切り紙をカメラの前で動かして、実写とも合成したりして丁寧に時間をかけてじっくり作る。

その深い詩情。幻想的なタッチ。センチメンタルな主題・・・
どれをとってもまさに芸術としかいいようがありません。

内容もまさに「詩」であって、散文的なストーリーは(この「話の話」に限っては)全くない。何度でも観て、感じて、消化して、また感じて・・・
良く出来た詩を生涯愛読するように、ボクもこの小編を生涯観続けると思うのです。



初めてこれを観たときの衝撃と感動は忘れられません。

その「想像を絶する」質感、リアリティ。
その詩的情感、夢の中のような幻想感。
イイタイコトの奥深さ、音楽のせつなさとその効果的なること。
登場するキャラクターの印象的なる造形・・・

物語はもちろん、たとえば子供オオカミが芋をむくアニメーションの質感とユーモアなんか忘れられない衝撃だったし、また、旅人が歩いていく田舎の描き方なんてしばらくそのイメージが脳裏を離れないくらい見事なものでした。

とにかくアニメーションが到達した表現の完成度に圧倒されたのです。

実写映画では絶対表現できないその美しさ。その情感。

圧倒されてしばらく身動きが出来なかった。

絶句。そしてフリーズ・・・
そのころボクはまだ独身で独り暮らしだったんだけど、その日は徹夜で何度も何度も繰り返しこれを再生しつづけたことを覚えています。バーボンを飲みながら。言葉もなにもいらない。とにかくこの世界に溺れていました。しまいには(青臭い話だけど)泣いちゃったりして。




原題を直訳すると「おはなしたちのおはなし」。

多分この題名はいくつもの詩的イメージを指していますね。

タンゴ「疲れた太陽」を踊りながら戦争にとられていく男たち。
詩人は木の下で詩を書き、旅人はご馳走を与えられ、子供は動物と遊ぶ平和な生活。
突風に舞うテーブルクロス。舞い上がる戦死公報。走り去る列車。
リンゴに降る雨。食べるカラスたち。父母に引きずられる幼き子供。
オオカミが芋をむくあたたかい空間。
詩人が書いた詩が変身する赤ん坊。
それをあやすオオカミが歌うロシアの古い子守唄・・・

それらのイメージをせつなげな目をした子供オオカミを狂言回しに結びつけ、平和な生活が存在した日々へのセンチメンタリズムと、戦乱によって失われた幸福の再生を、祈るような映像で静かに描いているのです。




まぁこうして説明すると安部公房の小説のように難解に思えるかもしれないけど、大丈夫、観たら心に直接入ってくるから、本当に理屈はいらないのです。戦争なんてテーマすら忘れていいくらい。観るだけで(陳腐な表現だけど)心が隅々まで洗われること請け合いです。




とにかく観ていない方はぜひ観てください。
ビデオでも出ているのかな。ボクが持っているのはレーザーディスク(上の画像からのリンクはDVDで「ノルシュテイン作品集」。もちろん「話の話」も収録してあります)。

そのレーザーディスクには。この「話の話」以外にノルシュテインのアニメが3話入っていて、その中では「霧につつまれたハリネズミ」というのがまた秀逸なんです。傑作。ボクが持っているどんな童話よりも美しく情感あふれるつくり。まるで夢の中にいるような物語とアニメーションです。



ところでこれを作ったとき、ユーリ・ノルシュテインは38才。
なんということだろう!
自分の歳(36才;1997)をかえりみてあまりの彼我の違いに嫉妬を通り越して恐れ入ってしまうボクなのでした。


p.s.
海外のサイトを見ていたら、次のような記述がありましたので、念のため。
The title of the film, and partial inspiration, came from a poem by Nazim Hikmet. The original title "The Little Grey Wolf Will Come" was rejected by censors.


【1998年4月記】

1998年04月01日(水) 12:04:57・リンク用URL

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