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「ガープの世界」

ガープの世界

The World According To Garp

George Roy Hill
Robin Williams, Mary Beth Hurt, Glenn Close, John Lithgow, Hume Cronyn, Jessica Tandy
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1982年製作
137 minutes

製作総指揮・パトリック・ケリー
製作・・・・ジョージ・ロイ・ヒル
ロバート・L・クロフォード
監督・・・・ジョージ・ロイ・ヒル
脚本・・・・スティーブ・テシック
撮影・・・・ミロスラフ・オンドリセク
原作・・・・ジョン・アービング
キャスト・・ロビン・ウィリアムズ
メアリー・ベス・ハート
グレン・クロース
ジョン・リスゴー
ヒューム・クローニン
ジェシカ・タンディ
ジェニー・ライト
ブレンダ・カーリン

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何を隠そう、ボクのベスト1はこの「ガープの世界」なのです。

ジョン・アービングの原作自体ものすごく好きで、いまでも時々読み返したりしますが、いったん手にとったら最後エンディングまで巻を置くあたわず的状況になります。
安っぽい笑いとセックスと暴力。それが際限なくこれでもか、と出てきてストーリー自体救いようがないように思えますが、ジョン・アービングは「これこそ人生」と納得させる筆力でこの混沌を書き切っていきます。彼はこの長編の中にあらゆる人生を象徴的に詰め込もうとしたかのようです。

そう、映画の方の「ガープの世界」もあらゆる人生を象徴的に詰め込んでいます。

一大ベストセラー(社会現象とまで言われた)になったものの、その筋とディーテイルの複雑さから「映画化は不可能」と言われていたこの原作を、ジョージ・ロイ・ヒルは個々の断面を積み重ねる方法で見事に傑作に仕上げました。
しかも伏線を多数置き、同じアングルを多用し、ローアングルも効果的に使い、計算ずくでガープによる世界を詰め込んでいるのです。それはまるで良く出来たペルシャ絨毯のような織り込まれ方。

近い例で言ったらタランティーノが「パルプ・フィクション」で上手に場面場面を織り込んでいましたね。しかもタランティーノは時間軸も縦横に動かして編み込んでいました。それに比べると「ガープの世界」は時間軸はまっすぐだしリズム感も古臭いのだけど…まぁ1982年の映画ですから。


映画の良し悪しって出だしのセンスでだいたい読めません?
この映画、出だしですでに快作の匂いプンプン。青い空に赤ん坊が舞うという美しいシーンにビートルズの(この映画のために作ったんじゃないかと思われるほどはまった)「When I'm 64」が流れる。で、この美しいモチーフはラストでも「I'm flying!」という言葉と共に繰り返され‘人生は複雑怪奇なのにとてもシンプルである’という主題を突きつけるのです。
この始まり方と終わり方を思いついた時点でこの映画は成功したも同然。これは監督と脚本の力量ですね。素晴らしい。

もうすべてに良く出来ています。無駄がひとつもない構成なのに全然息が詰まる感じがしない。だって一つ一つのエピソードを見ている分には‘無駄などうでもいい出来事’と思えるんですから。それが最後になって振り返ると全く無駄がなかったことが見えてくる……まるでボクたちの人生そのものではないですか。

キャストに至ってはもうため息をつくようなはまり方でした。
原作を読んでから映画を見たのですが、まったくイメージ通り。こういうのって珍しいですよね。

ガープにはいまや大大スターのロビン・ウィリアムス。
この頃はまだ「ポパイ」イメージが強い単なるコメディアンでしたが、この映画で完全に脱皮しました。彼の目が好きで出演作は追いかけていますが、いまだにこのガープを抜けません。彼の代表作はこれでしょう。1951年生まれですからこの映画のとき31歳でした。

ガープ以上と言ってもいいくらいの重要人物(お母さん)であるジェニー・フィールズにはグレン・クロース。
もう最高のはまり役。この後「ナチュラル」でレッドフォードの恋人役、「危険な情事」でサイコな年増女性、今年(1997)は「101匹わんちゃん」でクルエラ役……と芸域の広さを見せている怪(女)優ですが、どんな作品を見ようがこの人は「ジェニー・フィールズ」。もう他に出ないで、という程のはまり方なのでイメージが変わらないのです。

性転換して女になった元フットボールプレーヤー役のジョン・リスゴーは助演男優賞にノミネートされましたが、この映画で芽がでた巨漢舞台役者。いい役もらったよねぇ。やりがいあったろうな。その後「トワイライト・ゾーン」「ハリーとヘンダーソン一家」など。
ガープの奥さんであるヘレン役にメアリー・ベス・ハート。イメージピッタリ。クッシィのジェニー・ライトといい、プーのブレンダ・カーリンといい、こういうわき役までイメージピッタリなのってすごいなぁ。

あと渋いところではヒューム・クローニンとジェシカ・タンディがジェニーの両親役で出ています。
このふたり双方共に一流のキャリアを持つ凄腕の役者なんですが、実生活面でも夫婦だって知ってました? 「コクーン」や「ニューヨーク東8番街の奇跡」でも夫婦役として出ています。日本で言ったら二谷英明と白川由美って感じか…。ちなみに娘のタンディ・クローニン(安易な名前)も女優らしい。見てみたい。でもそこらへんも二谷家に似ているのぅ。

監督のジョージ・ロイ・ヒルについては多くを語らなくてもいいでしょう。
壮年期の名作「明日に向かって撃て!」が中学高校時代のぼくのモスト・フェバリットだったことを考えるとよくよく趣味があうのかな。でも一時期スランプというか、たいしたの出していないんですよ。「スティング」ぐらい。でも「ガープの世界」を残したんだから、もういいんじゃないか?

……

人生が詰まっている映画が、ボクは好きです。
そういう意味で「これぞ映画」だと思います。
まだ見たことないアナタ、すぐレンタル店に走りましょう(上の画像をクリックするとアマゾンでも買えます)。
ボクはと言えば、見る度に泣いちゃうくらい感動するので、馴れちゃわないためにめったに見ません。3年に一遍くらいこわごわ見る、そういう感じ。

でも今日は久しぶりに見ようかな。書いているうちにまた見たくなっちゃいました。
では。

P.S.
ラストの赤ん坊フライング・シーンで流れる曲(「When I'm 64」が流れる直前にワンフレーズだけ聞こえる、ナット・キング・コールのようなボーカル)の題名、だれか知りませんか?知っている方、教えてください。


メールで武田洋さんが教えてくださいました。
シンガーはやっぱり Nat King Cole で
曲名は There will never be another you. だそうです。
武田さんありがとうございました。


【1997年3月記】


※2002年12月27日、ジョージ・ロイ・ヒル監督は80歳で亡くなりました。

1997年03月01日(土) 18:17:10・リンク用URL

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