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「ブロードキャスト・ニュース」

ブロードキャスト・ニュース

Broadcast News

James L. Brooks
William Hurt, Albert Brooks, Holly Hunter, Robert Prosky, Lois Chiles, Joan Cusack, Jack Nicholson
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1987年製作
131 minutes

監督・・・・ジェームズ・L・ブルックス
製作総指揮・ポリー・プラット
撮影・・・・ミハエル・バルハウス
編集・・・・リチャード・マークス
音楽・・・・ビル・コンティ
キャスト・・ホリー・ハンター
ウィリアム・ハート
アルバート・ブルックス
ジャック・ニコルスン
ロバート・プロスキー
ロイス・チルズ

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海外に旅行もしくは出張すると、ボクはわりとテレビをよく見ます。
日本ではほとんどテレビをつけない生活をしているのに何故か海外ではテレビを見るのです。語学はめちゃくちゃ不得意なのにわりと長時間飽きずに見ています。

中でも特にアメリカとイギリスのニュース番組は好きですね。
センスある色合い。大人っぽい雰囲気。そしてキャスターの格好良さ。
アンカーマンはもちろん、現場からのリポーターすらとてもカッコイイ(わりとCNNよりも3大ネット局の方がカッコイイ)。みな「自分をプレゼンテーションするということはどういうことか」ということをよくわかっています。画面を見ながら嘆息することもしょっちゅう。まったくカッコイイよなぁ…。

でも、ニュース番組が好きな理由の最大は「その裏側で流れている時間」への共感、なんです。
その裏側で流れている時間…、つまり制作現場のいろんな駆け引き、勝ち負け、修羅場、緊張、心拍数、虚栄心、ねたみ、冷や汗、達成感、そして虚脱感…。
そう、そういう時間と空気への共感。
いつからそういう共感を持ち得たか。それは実にこの映画「ブロードキャスト・ニュース」を観てからなんです。この映画を観て「ニュース番組」がより人間的に見えてきた、ということです。


当時からテレビ業界をこれ以上表現した作品はない、と言われていたけど、その印象はいま見直しても決して古びていません。これこそ(アメリカの)テレビ局の現場なんだ、と納得してしまうリアリティをこの映画は誇っています。よく取材して作っているなぁ、と感心してしまう。

表面的には男2人と女1人の三角関係を軸に物語が回転していくのですが、実は「ニュース番組」という4人目がいるんですね。四角関係なんです。そこがこの物語映画のキーポイントだったりします。それをわかっていないとホリー・ハンターがなぜウィリアム・ハートを許さなかったかが理解できませんし。


この映画は、また主演の3人がとてもいいです。
脳みそが足りないのに押し出しと心臓の毛だけはある複雑な役を本当に地ではないかというくらい自然に演じているウィリアム・ハートも好演ですが、それよりなによりホリー・ハンターとアルバート・ブルックスが秀逸でした。特にアルバート・ブルックス! やる気と野心はあるのにそのスター性のなさ・運のなさからどんどんどんどん惨めになっていく「アマデウス」のサリエリのようなその役を、彼は見事に熱演。凡人の悲哀を上手ににじみ出させました。この映画は彼の物と言ってもいいくらいだとボクは思っています。


「あいつは悪魔だ。
 あいつは人好きがよくて魅力的。悪事には無縁で虫一匹殺さない。
 だが、少しずつ物事の要(かなめ)となる基準を下げてゆく。
 うつろな文句でじわじわと地獄に誘い込み
 人間は売り込みが大事、と唱える」


これは彼のセリフでとても気に入っているもの。
内容がないのにそのスター性から出世していこうとしているウィリアム・ハートのことを非難して言う言葉。「少しずつ物事の要(かなめ)となる基準を下げてゆく」人って、いますよねぇ〜。なんだか凄く共感してしまった。

まぁこの映画を見ないとこのセリフのニュアンスはわかりにくいでしょう。
敢えて説明はしません。ただ、実は監督はこのセリフをすごく重要視していたのではないかとボクは思っているのです。主題とまでは言いません。でも「裏主題」くらいではある気がする。


ホリー・ハンターも大熱演。
僕はこの映画で彼女を好きになり「オールウェイズ」で愛してしまい「ピアノ・レッスン」で冷めてしまった…。彼女は僕にとって「ひと回りしてしまった女優」なわけですね。だからこの映画を見ると初恋の人を卒業写真で見るみたいな気分になります。


監督はジェームズ・L・ブルックス。
この映画が2作目。デビュー作の「愛と追憶の日々」でオスカーを取ってしまい、この映画で今度は「ニューヨーク映画批評家協会賞」最優秀作品賞をとってしまったラッキーボーイ。粘り腰の取材・演出が光っていますね。

ただ、最終的に「主人公4人(3人とニュース番組)のどの生き方にも賛成してしまった」ところがこの映画を甘ったるくしていることも否めません。四角関係が全く崩れないまま無事に7年後のエピローグを迎えるところがこの映画の弱点だとボクは思います。

見逃してはいけないのはアンカーマン役でちょこっと出てくるジャック・ニコルスンの圧倒的存在感。この映画の中盤をきっちり締めてくれています。これはキャスティングの勝利でしょう。


この映画は名画とか名作とかいう評価はまるで受けていません。
きっとスタンダードとして後世に残っていく種類の映画ではないでしょう。
でもなんか好きなんですよね。細部にわたって好き。なんなのだろう。とても印象が強い映画なんです。

たぶんあれかな。アルバート・ブルックスが演じた役の、あの哀しさがなんだか好きなんだな、といま思った。


ボクはこれからも、海外でニュース番組を見る度にこの映画のことを思い出すことだろうと思います。
あぁこのニュース番組でにこやかに笑っているキャスターのインカムにはホリー・ハンターの指示が飛んでいるんだろうなぁ。アルバート・ブルックスが原稿を必死にまとめたんだろうなぁ。ウィリアム・ハートが格好よく見える背広の着方を指南したんだろうなぁ……などと、ホテルの部屋のテレビの前でなんだか共感していると思うのです。

ボクとはまるで別世界(テレビ局の世界は、実はあまり好きではない)なのだけど、なんだかそれを身近に感じる……これも映画の効用ですよね。


【1997年11月記】

1997年11月19日(水) 11:43:33・リンク用URL

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