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「バグダッド・カフェ」

バグダッド・カフェ

BAGDAD CAFE

Percy Adlon
Marianne Segebrecht, CCH Pounder, Jack Palance, Christine Kaufmann, Monica Calhoun, Darron Flagg
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1988年製作
91 minutes

監督・・・・パーシー・アドロン
製作・脚本・エレオノーレ・アドロン
パーシー・アドロン
撮影・・・・ベルント・ハインル
美術・・・・ベルント・A・カプラー
ビナデット・デ・サント
編集・・・・D・V・ヴァッツドルフ
音楽・・・・ボブ・テルソン
主題歌・・・ジェヴェッタ・スティール
キャスト・・マリアンネ・ゼーゲブレヒト
CCH・パウンダー
ジャック・パランス
クリスティーネ・カウフマン
ジョージ・アキラー
ダロン・フラッグス

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この世の中に自分の居場所なんてどこにもない、って感じることってありませんか?

毎日の、家族や会社や学校や友達関係や、その他いろいろの人間関係の中、ふと「ここは自分のいる場所ではないのではないか」と不安になり、それがだんだん大きくなってくる。この世の中のどこにも、自分の居場所が見つからなくなってくる。

自分はいまどこにいるのだろう。
いったいここで何をしているのだろう。

わからない。すごく自分が小さく感じる。自分がいる意味が分からない。どこかに行ってしまいたい。でも行くべき場所すらわからない。

どこにも、自分の居場所なんて、ない。



そうやって行き止まりばかりの迷路に入り込んで行くことってありますよね。

ない? そうか・・・ボクにはある。

そんな時には行きつけの、あまりこちらに立ち入ってこないマスターがいるBARにでも行ってバーボンでもガブ飲みすりゃぁいいんだけど、それも逃げだなぁと思ってしまう時。

そんな時、ボクは、この映画を観ます。




砂漠。
砂漠のカフェ。
オアシスであるはずの、砂漠の小さなカフェ。

そして、そこに生きる人々の心も、まさに砂漠。

そんな砂漠に、またひとつ、傷ついた心を引きずった砂漠の心が漂泊して物語が始まるんだけど、パーシー・アドロン監督は緑や黄色のフィルターを多用したりアングルを斜めにしたりスローモーションを効果的に使ったりして、上手にそこからリアリティを排除していく。

自分のいる場所なんてどこにもない、リアルな場所なんてどこにもない、
そんな想いを効果的に映像化するためにそういった手法をとった気がする。

そして、その映像に印象的に主題歌がかぶってくる。

I am calling you.
can't you hear me?
I am calling you.

砂漠の奥底からの声。コーリング・ユー。

誰が誰を呼んでいるのか。

誰かが自分を呼んでいるのだ。

誰かが、必要としている。

そこに、自分の、場所がある・・・





まぁ、僕自身、もうこの導入部だけで癒されてしまうんだけど、この映画の真骨頂は、その小さな砂漠のカフェで砂漠の心をもつ女同士が出会って、おずおずと歩み寄るまでの描き方ですね。ここは実によく撮れている。

そしてそれを象徴するのが「ヴィジョンの絵」。
砂漠の上のふたつの光源。ふたつが同等に光り合う、そのまぶしい光。
「約束の地」を指し示す大いなるヴィジョン。


そして、砂漠の心達は、癒しあっていく。


ただ、後半部はずいぶん唐突な急展開の感があって、ボクは話に乗りきれなかった。
急に仲よくなってしまう。
ブレンダという砂漠に急に水がたまりすぎる。
ここが唯一この映画の弱いところです。
(まだ観ていないけど、この映画には17分長い完全版があるとか。ジャスミンとバグダッドカフェの住人とのふれあい、ブレンダと夫の関係の結末のシーンが付け加えられているらしいんだけど、きっと後半の急展開が是正されているのだろうな、と思う)


それにしても、ジャスミンはただの不気味な太ったおばさんだったのに、だんだん魅力的に見えてきて、最後には元ハリウッドの大道具さん(ジャック・パランス)が惚れてしまうように、観客も彼女に惚れてしまうほど魅力的な女性に変化していく様が見事ですね。
パーシー・アドロン監督はジャスミン役のマリアンネ・ゼーゲブレヒトが大好きで、彼女のためにこの映画を作ったらしいけど、それもわかるな、と観終わった頃には思います。
それとブレンダ役のCCH・パウンダーもすごい。乾いた心のリアリティがこの映画を一枚も二枚も上質にしています。




さて。
この映画は象徴物がいっぱい出てきます。
乾いた現代の心を「砂漠」で象徴し、そこに水が染み込む様を「給水塔」で象徴し、出合いによって魔法のように変わっていく心模様を「マジック」で象徴し、響き合うふたつの心を「ふたつの光源が光る絵」で象徴し、漂泊する心が自分の場所におさまっていく様を「ブーメラン」で象徴するというように。
また、砂漠とは対照的な森の国ドイツの女性ジャスミンがドイツの音楽家バッハを聴きながら自分を取り戻していく様も、ある種象徴的に描かれています。

映画の文法に忠実に作った感じのこういった「わかりやすさ」もこの映画の魅力のひとつですね。

だから、この映画を観ると、どんな気分のときでも癒される。ラクになれる。

テーマはいいのに無理やり小難しくしているインディペンデント系の映画がいっぱいある中、この映画はそこらへんも頭ひとつ抜け出ていると思うのです。


【1997年3月記】

1998年03月01日(日) 12:03:42・リンク用URL

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