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「おもいでの夏」

おもいでの夏

Summer of '42

Robert Mulligan
Jennifer O'Neill, Gary Grimes, Jerry Houser, Oliver Conant, Katherine Allentuck, Christopher Norris
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1971年製作
105 minutes

製作・・・リチャード・A・ロス
監督・・・ロバート・マリガン)
脚本原作・ハーマン・ローチャー
撮影・・・ロバート・サーティー
音楽・・・ミシェル・ルグラン
キャスト・ジェニファー・オニール
ゲーリー・グライムス
ジェリー・ハウザー
オリバー・コナント
C・アレンタック

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ジェニファー・オニール。

この人の名前を聞くだけで遠い目になっちゃいます。
この映画を初めて見たのは中学2年の頃(1975)でしたでしょうか。池袋の文芸座だったか渋谷の全線座だったか、とにかく名画座で見ました。そしてぶっ飛びました。なんて美しい女性だろう。

美しい……月並みな表現ですね。でも当時の僕は「そうか、これが美しいということなんだ」と膝を打つ思いでした。憂いがあって上品で透明感あって柔らかそうで、なんとも言い様がないこの女性の形態、これを美しいと呼ぶんだなって。

ジャクリーン・ビセット、ダニエラ・ビアンキ、マリー・ラフォレ……当時好きだった美しい「女優」たち。でもなんか美しい「ひと」ってそんなにいないような気がします。ジュリー・アンドリュースやオードリー・ヘップバーンなんかは美しい「ひと」って感じたな。でもジェニファー・オニールは別格的に好きでした。それはもちろんこの映画でのジェニファー・オニールに重ね合わせてのことですが。

この映画の原題は「SUMMER OF '42」。1942年の夏のお話。
15歳の主人公ハーミーが年上の女性ドロシー(ジェニファー・オニール)とあるきっかけで初体験をして、そして少年の夏は秋に変っていく、と、こう書いたら身もふたも無いんだけど、そういう映画です。

セックスのことで頭がいっぱいな少年達の描き方はその後の「グローイング・アップ」シリーズに影響を与えたであろういかにもアメリカ的なドライな描き方なのですが(なんで同じテーマを日本人が描くと陰湿になるのだろう)、なんといってもこの映画の白眉はラストの少年と女性との体験の描写。
乾いた映像にミッシェル・ルグランの大名曲が針のノイズ音と共に重なり、なんともいえない叙情性を醸し出しています。セリフもなく、針のノイズ音だけで10数分ずぅっと引っ張るその演出にびっくらこきながらも、同じく少年だった僕は夢幻の境地をさまよっていました。
人生ってなんて美しいんだろう……

ハーミーは、翌朝、人生のせつなさを知ります。
風でどんどん形を変える砂浜の、その上に建つドロシーのコテージは、そんな「壊れやすさ」の象徴だったのかと今では思います。


ドロシーは新婚の夫を戦争に奪われたことがわかった日にハーミーを抱きます。
この時のドロシーについて今でもよく思いを馳せます。仕事中とか旅行中にふっと思いがよぎるのです。「あの時ドロシーはなんでハーミーを抱いたのだろう」……きっと一生考え続けるのではないかな。
ドロシー役のジェニファー・オニールは、だからぼくにとって文字通り青春の「ひと」なのです。彼女のことを思う度に僕はハーミーの初体験を考え、そして青春のあの日に帰れるのです。

原作・脚本がハーマンっていう人で主人公の役名がハーミーですから、自伝的要素がかなり強い作品なんでしょうね。
1942年にハーミーは15歳。ってことは1997年でハーミーは70歳ってことになります。う〜ん。まいったな。70歳か。あんな初体験をした男がその後どんな人生を歩んだか、知りたいような知りたくないような。

監督のロバート・マリガンは他には「アラバマ物語」くらいかな。それよりこの映画はミッシェル・ルグランの功績が大きいですね。なんという名曲だ!これでアカデミー作曲賞とっているけど賞なんて関係ないです。この曲がデパートで流れた来たりするともうダメです、ボクは。地下食品街で鯖とか買いながら、遠くドロシーのことを想ってしまいます。

そして30歳も半ばを過ぎたオジサンも思うのです。
人生ってなんてせつないんだろう……


【1997年4月記】


※この映画が自伝的なことについて、Jackさんという方からメールをいただきました。
 とても興味深いので、以下に掲載させていただきます。

さとなおさん、先日「おもいでの夏」についてお便りさせていただきましたが、この物語が自伝的であるということについて、つい最近、詳しい情報がオンライン(アメリカの)で出ていましたのでお伝えします。
原作者がハーマン・ローチャーという人であるということはもちろん御存じだと思いますが、つい最近、「おもいでの夏」のミュージカル化にともない、ハーマン・ローチャーがインタビューされました。この中で、質問者がやはり、この物語がどこまで自伝的なのかについて質問したところ、登場人物は全て実存した人を実名で出したのことです。そう、ドロシーもです。
「おもいでの夏」の映画が1971年に公開され、ヒットしたあと、ハーマン ローチャーは、数多くの「私がドロシー」という手紙を受け取ったとのことですが、その中の一つ、オハイオ州カントン市から来た手紙を見た時:「筆跡で彼女だということが分かりました。名字は無く、返信の住所も記されていませんでした。文面の内容からは、私がその後どうなったのか心配していたらしく、「30年前のことはそのままそっとしておきましょう」といったことで、手紙の響きでは、彼女は再婚して、子供や孫までいるらしいのです。」

興味深いことですね。英語版はそのまま下にコピーしておきました。アドレスはこちらです。

Knute Rockne had his pep talks. Then there's Herman Raucher, on the evening when his Summer of '42 opened as an Off-Broadway musical: "I told the cast before the show, 'We've now done it every possible way--except go out and piss it in the snow!'" Which makes some sense when you consider that Hunter Foster, who wrote the book for this musicalization of Raucher's Oscar-winning movie memoir of 1971, plays a rabble-rouser in Urinetown.
Thirty years have elapsed since Raucher's loss-of-innocence confessional hit the screen, and it was another 30 years before that when he actually lost his innocence, so I had to ask him on opening night if he ever heard again from that older woman who relieved him of his virginity. (Her name really was Dorothy, by the way, but he never learned her last name.)
"Oh, I did," he says. "When the picture first came out, I got a letter from her, postmarked from Canton, Ohio. You have to understand, I got a lot of letters from ladies who said they were Dorothy. But (a) I recognized her handwriting, and (b) she didn't sign her last name. And she was the only one who was worried about whatever happened to me. She said something like, 'The ghost of that night 30 years ago is better left undisturbed.' She had obviously remarried and had children and grandchildren. There was no return address."

1997年04月01日(火) 19:24:16・リンク用URL

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