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ジェリー・マリガン「ナイト・ライツ」
Night Lights
Gerry Mulligan
1963年録音/MERCURY
Gerry Mulligan Sextet (Track 1-6) :
Gerry Mulligan (baritone Saxophone, piano in 1)
Art Farmer (trumpet, Flugelhorn)
Bob Brookmeyer (trombone)
Jim Hall (guitar)
Bill Crow (bass)
Dave Baily (drums)
Gerry Mulligan Quintet (Track 7) :
Gerry Mulligan (clarinet)
Pete Jolly (Piano)
Jond Gray (guitar)
Jimmy Bond (bass)
Hal Blaine (drums)
夜。
仕事から帰ってこのCDをかけると、きまって妻が気の毒そうに言います。
「あら、今日も疲れ切っているのね……」
うはは。まぁそんなキザな話でもないのだけれど。
なんか消耗しきっちゃってビールもワインも飲む気にならない時、とりあえず音楽でもきこうかとアンプに灯を入れるのですが、そういう時、かなりの確率でこのCDを選んでいますね。
まぁそういうときって思考停止状態ですから曲の選択について深く考えているわけではないのです。ただすがりつくように「ナイト・ライツ」をかけている。そのパターンを妻に読まれ切っちゃっているのが情けないけれど。
別にこのCD聴いたからって、疲れが癒されるわけではありません。
元気にもさせてくれないし前向きにもさせてくれない。ただ、「疲れた自分と一緒にいてくれる」感じがあって、それが好きなのです。
疲れ切っている時って、元気にさせようとか癒そうとかって単なる余計なお世話なんですよね。
そんなことせず、ただただ寄り添っていて欲しい。あまり気を使わずにそこにいて欲しい。
そんな想いに応えてくれるCDがこれなのです。
そういう意味ではこのCD、悪く言えば「イージーリスニング」なのかも。
でもパーソネルはなかなかすごい。
ジェリー・マリガン :バリトン・サックス、ピアノ
アート・ファーマー :トランペット、フリューゲル・ホーン
ボブ・ブルックマイヤー:トロンボーン
ジム・ホール :ギター
ビル・クロウ :ベース
デイブ・ベイリー :ドラムス
いつもマリガンと組んでいるチェット・ベイカーの代わりにアート・ファーマーが入ったのがこのアルバムのミソですね。
普段のファーマーはわりと主張の激しいペットを吹くけど、このCDではやけに謙虚で温かい。こういうのって相性もあるのでしょう。マリガン自体もいきなり温厚な人になって大きく懐の深いサックスを吹いています。ベイカーと一緒のときはなんか張り合ってる印象があるのだけど。
こういうすごいパーソネルで、俗なイージーリスニングとぎりぎりの一線を画しながら、相当の完成度で仕上げたこのアルバム、ジャケットの影響もあると思うけど、すごく都会の夜を感じさせます。
特にマリガン作曲の表題曲。ここではマリガンはピアノを弾いているのですが(わりと繊細な味がある)、なんかセスナ機で夜のマンハッタンの上空を漂っているような、そんな無重力間を上手に演出しています。
思わず城達也のナレーションを思い浮かべるような…「ジェット・ストリーム」的イージーリスニング。バリバリ吹きまくっているサックス奏者マリガンの大ファンとしては、たまにはこういうのもうれしくなっちゃうんだけど。
あぁ。書いてるうちになんだか疲れてきちゃいました。
「疲れたとき=ナイト・ライツ」という生活が長いせいか、ナイト・ライツについて書いているとあの疲れたきった感じが思い出されちゃって……逆パブロフの犬、かも(笑)。
ちなみに、マリガンやその周辺のエピソードなどについてはビル・クロウ(このアルバムのベースマン)が書いた「さよならバードランド」(村上春樹訳/新潮社)に詳しいです。ジャズ好きなら必読です。
【1997年7月記】
1997年07月01日(火) 20:13:07・リンク用URL
@satonao310