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マット・デニス「プレイ・メランコリー・ベイビー」

play melancholy baby
Matt Dennis
1956年録音/BMGビクター

Matt Dennis (piano)
Ray Leatherwood (bass)
Bill Pitman (guitar)
Richmond Frost (drums)
Don Fagerquist (trumpet)
Ronny Lang (alto flute)

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マット・デニス。

知らない方も多いかもしれないけど、一度知ってしまうと好きなボーカルのリストに必ず入ってくるような弾き語りの人。

彼の魅力はその「軽妙洒脱」さ。
なんというか、その「肩の力の抜け具合」が絶妙なのです。

決して声域も広くないし、声量もない。
どちらかというと弱い声。口先だけで歌ってるような薄い声。なのに声量ブリブリのそこいらの歌い手を軽く凌ぐその魅力。
節回し、崩し方、そして選曲…。すべてが、そう、「粋」なんですね。「粋」が洋服着て歩いているような感じ。

かなりの遊び人なんだろうなぁ。
両親ともにヴォードビルのスター。芸能人一家なのですね。で、きっと若い頃はなんか勘違いした嫌味なヤツだったと思うのだけど、中年を過ぎて妙に味が出て軽ーい粋さ加減が出せるようになった・・・そんなタイプだと思うのです。
このアルバムの時、彼は42歳。
そういう意味で、とてもいい味が出始めた頃だと思うのです。

日本人で比較したらお寒いけど、敢えて言うなら、親が有名なコメディアンで、中年以降アブラが抜けて軽妙洒脱ないい味を出してきた堺正章なんかが近いかもしれない。
あとはこの頃の津村雅彦とか。
うーん、でもこういう洒脱さ加減は日本人には難しいのかもなぁ。


でもね、マット・デニスは、そういう洒脱さだけで生きているのではない。彼、作曲してもすごいんです。よ。
例えば有名なスタンダードの「エンジェル・アイズ」なんて彼の代表作。「コートにすみれを」も彼。「レッツ・ゲット・アウェイ・フロム・イト・オール」も彼。

「エンジェル・アイズ」なんて、あの声とあの顔で「キミのために作った」とか言いながら歌ったら、女性なんてすぐ落ちるかも。
いや、顔は普通なんだけど、いかにもー、な、いい男なんですよ。


なんか彼の歌を聴いていると「金持ちケンカせず」なんて言葉が浮かぶなぁ。
実際生活上、彼が金持ちかどうかは別にして、なんかヒッチャキになっていない感じがね。貧乏なアフロ・アメリカンのものだったジャズを「そんなにムキになって歌うなよ、吹くなよ、弾くなよ」って感じでサラサラとやっちゃった。
中途半端でない本当のお坊ちゃんって意外といいヤツ多いじゃないですか。なんかそんな匂いがするなぁ。


てなわけで、ボクはムキになって何かに猛進しているとき、やるせない怒りにむしゃくしゃしているとき、自分の無力さ加減に幻滅しているとき、こそっとマット・デニスをかけるのです。

まぁまぁ落ち着いて。そんなにがんばったって人生変わらないじゃん。

軽妙に、洒脱に、粋に、そして少しだけ怠惰にそう彼に語りかけられると自分がバカに思えてくる。あー、楽しいこといくらでもあるんだからもっと楽に考えようって。

その軽妙さがマット・デニスの強みでもあり弱みでもあるんだけど、そういう雰囲気で語りかけてくれるボーカルは他に思い浮かばないな。マット・デニスのみ。

彼は寡作の人だけど、聴いたことない方はまずはこのアルバムあたりからどうぞ。
この弾き語りがピンと来なかったら、彼とは合いません。
でもまぁ大丈夫。まず90%の人が彼の軽妙洒脱さの虜になるんだから。

そう、いろいろ思い悩む深い夜。軽妙に洒脱に人生を見直してみようではありませんか。マット・デニスと共に。ね。



【2000年1月記】

2000年01月01日(土) 20:41:18・リンク用URL

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