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ローランド・カーク「ドミノ」

CDジャケットDomino
Rahsaan Roland Kirk
1962年録音/MERCURY

Roland Kirk Quartet :
1-6)
Roland Kirk (tenor sax,stritch,manzello,flute,siren)
Andrew Hill (piano,celeste)
Vernon Martin (bass)
Henry Duncan (drums)
7-14)
Wynton Kelly (piano)
Ernon Martin (bass)
Roy Haynes(drums)

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「奇人」とか「魔人」とか、そして「道化師」とか・・・。
ひどいのだと「グロテスクジャズの旗手」とか(グロテスクジャズってあんた・・・)。

とにかく、ローランド・カークに冠されるショルダーには碌なものがありません。

まぁボクは彼自身を生で見たことないから本当に「奇人」で「魔人」で「道化師」なのかどうかわからないし、別にどんなことをやっていようが演奏さえ良ければどうでもいいのですが、でもまぁ確かにローランド・カークは変わってますよね。

ご存じない方はまず驚いてくれるんだけど、この人、アルトサックス、テナーサックスなど3本の楽器を一度に口にくわえて演奏したり、2本のフルートを1本は口で、もう1本は鼻で吹く、というような曲芸まがいの演奏をするんです。
それでも物足りなくなってサイレン・ホイッスルなんてのを鼻で吹き鳴らしたり・・・。そのうえ、ノンブレス奏法っていうのでしょうか、息継ぎをしないでブカブカ吹き続ける。


しかも盲目。


盲目の2メートル近い大男が、サックスを3本口にくわえ、フルートとホイッスルを鼻で吹く・・・。




大道芸人か、あんたは。


そんなもの見せられたら、確かに聴衆はその音楽表現よりも見た目の異様さに圧倒されてしまうよね。

だから、「奇人」「魔人」「道化師」「グロテスクジャズの旗手」、すべて気持ちは分かる。

でもね、彼の表現能力のスゴサにはほとんどの人が言及していないんです。


これがまた「豊か」なのに・・・。


ボクは敢えてその異様な演奏スタイルを弁護したいんだけど、彼はもどかしかったのだと思う。
目が見えない分、アドリブの受け渡しやアンサンブルなどのアイ・コンタクトが出来ない。アドリブからアドリブへのあうんの呼吸がなかなか取りにくい。ハモったり伴奏を美しくとったりする、そのタイミングが盲目ゆえに上手に他人と取れなくて、「あー、めんどくさい、全部自分でやった方が早いよ」とばかりに楽器を持てるだけ持ったのではないでしょうか。

だいたい、盲目の演奏者ってピアノが多いですよね。
レイ・チャールズ、スティービー・ワンダーなどをはじめとしてジョージ・シアリング、レニー・トリスターノ・・・
他の楽器では、ジャンルは違うが、津軽三味線の高橋竹山くらいかなぁ・・・。
サックス系楽器で盲目のアーチストって、ボクは他に知らない。
盲目の人や身体障害者の人がピアノを選ぶのは、ある種それ自体で自己完結している楽器だからだと思います。座ったままでいいしね。
でもピアノよりも自己完結性の薄いリード楽器を盲目で奏でているとかなり「もどかしい」のではないかと想像するんですよね。
で、3本くわえてサックス系楽器ならではの自己完結を目指す。
アンサンブルもユニゾンも全部自分でやってしまう・・・。

そして、そうやって何本か同時に自分でやっているうちに「なんでもあり」という気になってきちゃったんじゃないかなぁ。ある種の突抜け。
自分の中の「熱い思い」を伝えられるのならどんな楽器をどう使おうともほっといてくれ!サックス吹きながらフルート鼻で吹いて何か悪いか?そのうえ空いてる鼻でホイッスル吹いたって、それでパワーが伝えられればいいじゃねぇか!・・・みたいな突抜け。


そう、彼の演奏を聴いていると、そうまでしてでも表現したいものがあるんだという「おののきに似たようなモノ」を感じるのです。せっぱ詰まったような、差し迫った危機のようなそんな鋭角な欲望を感じます。

そしてそれが混沌としたパワーをボクに与えてくれる。

彼の演奏を聞くとなんというか「欲」が出る。明日を生きる「活力」が出る。



ちなみに彼の代表作は一般に「The Inflated Tear(溢れ出る涙)」と言われています。
でも、ボクはその爆発ぶり、奔放ぶりが「ドミノ」の方が良く出ていて、コッチの方がより本当の彼に近い気がします。
なんというか「The Inflated Tear(溢れ出る涙)」の方は感動的すぎるんですね、ボクにとって。
ローランド・カークはもっとお下劣でパワフルで、聴いている方が「いや参った!許してくれ!」と投げてしまうようなチカラに満ちている方がいいんです。
そういう意味で「ドミノ」は突き抜けている。




でもボクの持っているCDはオリジナル・レコード版の曲順を無視して、録音された順に入れ直しているんですよねー。
そこに何か意味があるのかなぁ。
児山紀芳という方が未発表テープから表題曲「ドミノ」の別テイクを含むセッションを発掘して、それを入れてくれたらしいんだけど、それ自体はありがたいのですが、オリジナルの曲順の後にそれらを放り込んでくれたらもっとうれしかったと思います。
ボクにとってジャズのアルバムの曲順は非常に大事。それで印象ががらりと違ってしまうのですから。

・・・と、思って昨日CD屋にたまたま行ったら、ちゃんとオリジナル通りの曲順のCDが売られていました。というかそれしか売ってませんでした。うーん、僕が持っているのは一体何なんだろう?(結局そっちも買った)


参考までにオリジナルLPの曲を書いておきます。

1. Domino
2. Meeting On Termini's Corner
3. Time
4. Lament
5. A Stritch In Time
6. 3-In-1 Without The Oil
7. Get Out Of Town
8. Rolando
9. I Believe In You
10. E.D.




さて。

ここまで書きながら、いまさらながらに素朴な疑問。
生で見たことないからなんだけど、いったいどうやって3本くわえて吹くの?
手は二本しかないのに。

どうやって口でフルート吹きながら鼻でもフルート同時に吹けるの?
フルートは口でくわえて吹くものでないから、どうやって支えるのかがわからない。

それと、ローランド・カークを語るときによく出てくる「マンゼロ」っていう楽器はなに?

どなたか教えてくれー!




・・・98年年末に宮川さんという方から情報をいただきました。

>マンゼロは、古代楽器の一つでアルトとテナーの中間の音域を持つ楽器で、カークは
>これを好んで用いていました。
>それとあわせて、ストリッチという古代楽器を用いていました。これは、ソプラノと
>アルトの中間音域を受け持つサックスの仲間です。
>形は、リード部分からホーンの口元までを真っ直ぐにさせたもので、ソプラノサック
>スを大きくさせたものと考えて下さい。
>彼は、この楽器を特注で作らせていました。現在、世界中どこを探しても市販は、さ
>れていません。

とのことです。
宮川さん、ありがとう!





・・・99年の夏には熊谷さんという方からこんな情報も。

>ローランド・カークの楽器について宮川さんとおっしゃる方の情報が載せられていま
>したが、ちょっと追加・訂正したい点があります。

>まずマンゼロはもともとサクセロと言われる楽器で、音域はソプラノサックスと同じ
>です。ソプラノサックスのネックとベルの部分を軽く曲げてあります。
>その分ソプラノよりやわらかめの音がでます。
>この楽器は1927年から1929年の2年間、KINGというメーカーで造られました。
>実は私はこのサクセロをニューヨークの楽器屋で10年ほど前に1500ドルで手に
>入れています。
>カークはデビュー後しばらくしてこのサクセロのベルの部分を改造したり、片手で操
>作するためにキーを追加したりして、自らマンゼロと名付けていました。
>しかし基本的にはマンゼロとサクセロは同じものです。
>サクセロとして日本でも売っているのを見たことがあります(70万円ぐらいの値が
>ついてました)。

>またストリッッチですが、アルトサックスをまっすぐのばした形をしています。
>音色的にはアルトとソプラノの間のような音がしますが、音域はアルトサックスと同
>じです。
>この楽器の製造年やメーカーはちょっとわかりませんが、サクセロと同じかそれより
>少し古いかもしれません。
>サクセロよりもめずらしい楽器で、これは私も手に入れていません。
>(カーク以外で使っているアーティストもいるにはいますが)

>カークは晩年右半身不随になり、左手一本でテナーとマンゼロを同時に吹きながら、
>もちろんノンプレス奏法も行っていました。

>カークは何本か売り物のビデオで、その雄志を見ることが出来ます。
>一番手に入れやすいのが、1969年イギリスで撮られた「スーパーショー」という
>作品です(東芝EMIからTOVW−3057の型番で出ています)。
>このショーは、基本的にはロックのスタジオライブショーなんですが、出演メンバー
>がすごいんです。
>「レッド・ツェッペリン」「バディ・ガイ」「バディマイルス」「エリック・クラプ
>トン」「ザ・コロシアム」そしてジャズ界から「MJQ」「ローランド・カーク」等。
>セッションとかもあり、かなり楽しめますし、とにかくカークには驚かされますよ。
>例のうまく行かないアイ・コンタクトの場面もあります。
>今ちょっと人に貸してるんで、ビデオのメーカーや型番がわからないのですが、もし
>見つけたらご覧になられることをオススメします。

熊谷 卓さん、どうもありがとう!




【1998年10月記】

1998年10月01日(木) 20:26:12・リンク用URL

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